第3話 ダンジョンへの第1歩③

俺たちがミーティングルームに入るとそこにはチャラくて複数人で大声で騒いでいる明らかに頭の悪そうな連中だったり、学ランを着て何やら机に向かっている真面目そうな見た目の学生もいたりとカオスな空間になっていた。


俺たちは後ろの方の席に座ると講習会が始まるのを待つ。


「意外と人がいるんだな」


「そりゃ、ダンジョンは今のトレンドだからね。一発当てようと思った人たちが皆来てるってことだと思うよ」


「ゴールドラッシュみたいだな、、、」


そんな一時のブームに必死になっている人間を見て、溜息を吐いてあきれているとミーティングルームの扉が勢いよく開けられ、背中に大剣を背負ったいかつい見た目の人とさっきの受付嬢が入ってきた。


2人は一番前についている大きなホワイトボードの前に立つと話を始める。


「皆様、本日お話をさせていただく高橋です。よろしくお願いします」


「橘だ」


受付嬢は先ほどと同じように人懐っこい笑顔を浮かべながら、橘と名乗った男は不愛想にそう言った。


「それでは、まず簡単にダンジョンについて説明します。そもそもダンジョンというのは2週間前にいきなり世界に出現したゲートのことを指します。このゲートの中では現実で見ることのない化け物、セルが跋扈しています。このセルの素材は物にもよりますが高値で取引される場合があります。それがダンジョンに入るシーカーの主な収入源となります。まずここまでで質問がある方はいらっしゃいますか?」


受付嬢が問いかけるが特に手をあげる者はいない。


「それでは続けさせていただきます。先ほど説明したセルですが強さごとに区分が存在しています。詳しい区分についてはギルドのホームページにある区分表を見ていただきたいのですが、一つ星級から十つ星級まであり、一つ星級が一番弱く十つ星級が一番強くなっております。また出てくるセルの強さによって同じようにダンジョンも区分されており、そのダンジョンの区分の上下一つまでの等級のセルが確認されます。三つ星級のダンジョンなら二つ星級から四つ星級のセルまでが出てくるということです。またシーカーのランクも同じようについており同じ等級のセルを単独で倒すことのできる実力があるかどうかという点が昇格の基準になります。四つ星級のシーカーなら四つ星級のセルを単独で倒すことができるということです。ちなみに橘さんは蒲田ギルドで最高の七つ星のシーカーなんですよ!」


「、、、」


受付嬢が自分のことのように誇らしく橘のことについて紹介するが、彼は苦い顔をするだけで何も言わない。


「あとは、、、ダンジョン内で使う武器をダンジョンの外で使うことは禁止されています。まぁ、これについては言わずもがなといった感じですよね。あと何か言ってないことってありますか?」


「、、、、スキルのことについては言わないのか?」


「あぁ!忘れてました。皆さんスキルというのはダンジョンの中でシーカーが得ることのできる特殊な能力のことです。魔法を使うことができたり普通じゃ考えられない身体能力を得たりと、皆さんを強化してくれるものです。ダンジョンに初めて入ったときにランダムで一つのスキルが付与されますが、それ以降のスキルの獲得に関してはどうなっているのかわかっていません。ただ、ダンジョンの中で戦っているとスキルを得ることがあるみたいですね。、、、それでは講習会はこれにて終わります。シーカーになろうと思った方は受付でカードを発行しますので受付にいらしてください」


講習会が終わったことを察してミーティングルームにいた人たちがぞろぞろと外に向かって歩いていく。


「全員良く聞け」


その時例の橘という男がおもむろに口を開いた。彼は苦い表情をしながら語り始める。


「ダンジョンはゲームじゃない。敵の攻撃を受ければ実際に体を傷つくし、普通に死ぬ。もし、覚悟がないならやめておけ。お前たちのことをギルドは必要としていない」


彼はそういうと固まった俺たちをかき分けてミーティングルームを出ていく。


「ちょっと、橘さん!、、、もう、皆さんすいません。橘さんは悪い人じゃないんです。ちょっと不器用なだけで、、、ともかく皆様がシーカーになるというのなら私たちギルドは精いっぱいの支援を行います!」

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