第9話 スーパームーンの夜

 2階に上がると、6畳間いっぱいの大きな窓があり、レースのカーテンが開かれています。

二人は、窓際のベッドに腰掛けました。

開かれた大きな窓からは、大きな月が見えます。

スーパームーンです。

よしくんは、横に座ったいっこの横顔を見ました。

月の光に照らし出されたいっこは、妖艶にさえ見えます。

よしくんは、いっこの肩を抱きます。


いっこが言います。

 「きれいな月ね」


よしくんが言います。

 「いっこの方が、ずうっときれいだよ」


二人は、黙り、ゆっくりと顔を見合わせます。

二人は、しばらくの間、見つめ合います。

そして、二人の唇が重なります。

そのとき、いっこのスマホが、けたたたましく鳴りました。


 チャンチャカ、チャンチャカチャチャ、チャカチャカチャン!


いっこは、むっとしてスマホを持ち、

 「はい。 わかりました…」

と、答えます。

そして、スマホを置くと、残念そうに、よしくんに言います。

 「奈美さんが、下に来ているの。 店に入れて欲しいって…」

よしくんは、くすくすと笑いました。

いっこと良いところだったのに、と思いました。

いっこも、くすっと笑いました。

よしくんと良いところだったのに、と。


二人は、学生時代に知り合い、その後は、別々の道を歩んで来ました。

そして、47年経った今、再び歩み始めます。

手遅れではありません。

それに、お互いの47年間に何があっても良いのです。

二人の前には、まだ道は続きます。

今度は、二人で一緒に歩む道が。



おわり

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いっことよしくん物語 ~カラオケスナック編~ がんぶり @ganburi

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