第十七章 幸せのかたち
第17話
ジョンは、めきめき成長を遂げ、次、会った時は虹を描いていた。でも、色が、じゃんじゃんばらばらな虹。僕が指摘すると、桃子が
「虹は、なんでもいいんだよ。幸せのかたちは、人それぞれだよ、お兄ちゃん。」と誇らしげに言った。ふーん。そうなんだ。なんでもいいんだ。幸せのかたち。桃子らしいなぁ。たぬきさんも、そうだといいなあ。そうとは知らず、ジョンは誇らしげに絵を振った。
僕は、ムッとして、
「ジョン!いいかげんにしなよ!」と言った。
「いや、君が、そんな怒るとは思わなくてね。ごめんね。」と言った。僕は、それで許した。それを幸人くんに話すと、
「それは、さつきが悪いよ。ジョンは悪くないよー」と言った。うん、まあ、そうかもな。僕もカッとなってしまったかもな。次、会った時、謝ろう。
その次の夜回りの日。蝶々橋に行くと、テントが撤去されていた。僕はビックリして驚いてパニックになってしまった。譲くんが落ち着かせてくれた。「ありがとう。」と言った。
「でも、この状態…」「来るべき日が来てしまったんだよ。」そんな…。ジョンたちとメールアドレスとか交換しとけば良かった。ジョンには、まだ謝っていないのに…。僕は後悔して、その場に崩れ落ちた。
その時、若者が、あの日の若者が
「俺ら、知ってるぜー」と言ってきた。
「何を…知っているんだ…」と僕は呆然と言った。
「あなたたちね!はーちゃんたちを困らせたのは!」と桃子が言った。僕とは大違いで、たくましい。
「おいおい、ちょっと、待ってくれよ。俺ら、あれから後悔してさ、あんな、お前らが夜、まわるなんて、思いもしなかったから、あの時はごめんな。」「それは本人に言ってほしい。」「言ったよ。そしたら、役所の偉いさんが来てさ、出ていけって。」「それからっ」僕は、つい怒ってしまった。
「ジョンレノンみたいのだったら、生活保護に回ったよ。一つ西の駅の近くに住んでるんだって。他は知らない。」僕は、ありがとう、と伝えた。
僕らは、その若者たちとも”友達”になった。
「だって、すごいじゃん、そんな夜回りする人のことを保護するなんて…」って、言ってくれてたな。ありがたい。そして、その若者たち、順平と浩二はジョンのところに案内してくれた。会って話をした。久しぶりに感じる。僕は、ジョンのことが好きなんかなぁ?あまりの幸せに涙が出てきたよ。ジョンは「まあまあ」と言っていた。僕の気持ちに気づいていたんじゃないかな。そういえば、ジョンは、僕を傷つけたことはない。僕が誤解しただけだ。あの時の、虹の絵の話をして、謝った。そんな僕の姿を見た順平は
「なんだ、お前、もう幸せ築いてるじゃん。」と言った。そうだと思う。僕はジョンが好きだ。ジョンも、僕のことを好きでいてくれたらいい。そう思った。
幸せのかたち @mamoru_n
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