第十六章 永遠の友達

第16話

ある日、ジョンという青年がやってきた。聞くと、たぬきさんの財布を盗んだ人らしい。でも、聞くところによると、ジョンは、たぬきさんにお金は返したらしい。僕は全然悪い人には見えなかった。”格好いいな”とも思った。なんだか、格好が、ジョンレノンみたいだった。でも、ジョンを許せなかった、たぬきさんは僕のそんな姿に失望して、どこかに行ってしまった。それ以来、たぬきさんの姿は見ていない。僕のせいだろうか。

はーちゃんは雑誌を売る仕事を取ってきた。そして、家も借りれるようになったらしい。今から考えると、たぬきさんの「愛」は、とてつもなく大きかったんだろう。そう感じる。市役所の人の話、幸人くんのこと…。幸人くんは、たぬきさんが居なくなって、家に帰った。「むー」という顔をして。なんだか、帰りたくなさそう。僕も、帰ることになって寂しくなったよ。


帰りの道すがら、僕は幸人くんと話した。

「僕、愛されてないんだ!」「えっ、そんなことはないよ?たぬきさんにも愛されたし、はーちゃんたちにも愛されたよ?それに僕も愛してる。」「お母さんに愛されていないんだ!お母さんは、弟にばかり愛をそそいで、僕のことは放ったらかしなんだ!」「んー、そうでもないかな。」と、幸人くんが家出した時の話をした。

「えっ、じゃあ、僕のことも心配してたの?」「うん。」「やったぁ!」と幸人くんは喜んだ。よかった。幸人くん喜んでくれて。僕と幸人くんは永遠の友達になった。それ以来、僕たちは”ビーイング"に通っている。幸人くんは、時々、学校をさぼったりするけど、初めは何も言わなかった。だって、”友達”だからさ!僕は初めての”友達”を得ることになった。

ただ、幸人くんがたくましくなって、幸人くんのいじめはなくなった。でも、癖で、学校をサボったりしているから、さすがにそれは注意している。


家に帰って、桃子が、

「おかえりー」と言ってくれた。僕の聞かせる、はーちゃんの話を聞いて、桃子、カンカン。そんなことするなんて!誰よ、そのヤンキーたち!って怒ってた。

「で?はーちゃんは?大丈夫なん?」とも聞かれた。桃子なりに心配してたんだろう。僕は、はーちゃんの今の現状を伝えた。そしたら、桃子が嬉しそうになった。

「でも、その、たぬきさんは?」と桃子が言った。

「うーん、たぬきさん。僕が悪かったのかなあ?」と僕が言うと、桃子が

「お兄ちゃん、そんなことないよ!」と言ってくれた。桃子は優しい。


はーちゃんとは時々会ってる。雑誌を買って。その時に話してる。桃子も一緒な時もある。そんな時は桃子はニコニコ顔だ。そして、冬場はカイロも持っていっている。僕は桃子、譲くんと一緒に”子ども夜回り”に入り、ジョンたちの話を聞くことになった。

ジョンは、難しい人でね。こだわりがあるんだって。赤いのものを見ると反射的に手に取るらしい。他の人から聞いた。桃子は驚いているようだった。警察沙汰にもなったんだって。その時、保証人になってくれたのが、はーちゃんがお世話になっているところの所長さんだったんだって。はーちゃんも嘆いていた。”もう、やらない”という言葉、何度聞いたことかっ、って言っていた。僕は本人から話を聞いて、渾身込めて、ジョンの話を聞いて、ようやく、やり直させることに成功した。

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