潰されない責任感
星咲 紗和(ほしざき さわ)
本編
責任感という言葉を聞くと、多くの人が「大切なもの」として認識すると思います。私たちは幼い頃から「責任感を持ちなさい」と言われて育ち、社会人になるとさらにその重要性が強調されるようになります。仕事で成果を出すこと、人間関係を円滑にすること、家族や友人との約束を守ること。すべてにおいて、責任感は重要な要素です。
私も責任感を強く意識して生きてきました。任されたことは最後までやり遂げるべきだと考え、自分の言動が周りにどのような影響を与えるかを常に気にかけてきました。それが私の生き方であり、良いことだと信じていました。しかし、そんな私にも次第に気づき始めたことがあります。それは、責任感が強すぎると逆に自分を苦しめ、潰してしまうことがあるという事実です。
例えば、仕事での責任感。任されたプロジェクトやタスクを最後までやり遂げることはもちろん大切です。しかし、責任感が強すぎると、「自分がやらなければならない」「誰にも迷惑をかけてはいけない」というプレッシャーが強くなり、心身ともに疲れ果ててしまうことがあります。私も何度もこのプレッシャーに押しつぶされそうになりました。
ある日、作業所での仕事中に、自分が限界に達していることに気づきました。仕事の量が増え、人手も足りない中で、「自分がやらなければ」という強い責任感から、誰にも頼らず一人で仕事を抱え込んでしまったのです。少しずつ体が重くなり、頭も働かなくなり、いつしかミスが増えるようになっていました。それでも「自分がやらなければ」という思いが頭から離れず、ますます追い込まれていきました。
その時、ふと職員さんが私に声をかけてくれました。「大丈夫?無理してない?」と。その言葉に私はハッとしました。確かに、私は無理をしていました。誰にも頼らず、一人で全てを背負おうとしていたのです。職員さんは「困ったら言ってね、みんなで助け合ってやるから」と言ってくれました。その言葉に、心がふっと軽くなったのを感じました。
責任感が強いことは、決して悪いことではありません。むしろ、それが仕事や日常生活での成果を出すために必要なものです。しかし、その責任感が強すぎると、自分を追い詰めてしまい、結果的に何もできなくなることがあるのです。そこで私は、「責任感を持ちながらも、自分を潰さない方法」を考えるようになりました。
まず第一に、「全てを自分で抱え込まないこと」が大切です。どんなに責任感が強くても、人間は一人でできることには限界があります。仕事や生活の中で、他の人に頼ることを恐れてはいけません。頼ることは、決して甘えではなく、チームとして協力するための重要なスキルです。特に私が通っている作業所では、職員さんや仲間と協力し合って仕事を進めることが基本です。手が回らなくなった時や、負担が大きくなりすぎた時には、職員さんに相談して人員を調整してもらうことができます。こうしたサポートを受け入れることで、仕事の効率も上がり、心の負担も軽減されます。
もう一つ大切なのは、「自分の限界を知ること」です。どれだけ責任感を持っていても、私たちは完璧ではありません。時には疲れたり、集中力が切れたりすることもあります。そうした時に、「自分はまだ頑張れる」と無理をしてしまうと、最終的にはパフォーマンスが低下し、ミスを犯す原因になります。私自身、過去に何度もそのような経験をしました。限界を感じた時には、しっかりと休息を取ることが重要です。責任感を持っているからこそ、自分の体と心を大切にし、長く続けられるペースを見つけることが必要です。
また、「責任を他人と共有すること」も一つの解決策です。私たちが責任を感じるのは、何か大きな仕事や課題に直面している時が多いです。しかし、それを全て自分一人で背負う必要はありません。チームで取り組むプロジェクトであれば、それぞれのメンバーが自分の役割を果たし、結果として全体の責任が達成されます。責任感の強い人は、自分が全てを背負い込んでしまいがちですが、時には他の人とその責任を共有し、協力することが大切です。私自身、作業所での仕事でそれを実感しました。自分が全てを抱え込まず、周りの人と協力し合うことで、より良い結果を出せることに気づいたのです。
最後に、私が感じるもう一つのポイントは、「失敗を恐れないこと」です。責任感が強すぎると、失敗することが許されないと感じてしまうことがあります。しかし、失敗は誰にでもあることであり、それを恐れるあまり、挑戦すること自体を避けてしまうのは、自己成長を妨げる原因となります。失敗してもそれを学びに変え、次に活かすことが大切です。責任感を持ちながらも、失敗を受け入れる余裕を持つことが、自分を守るためには必要です。
責任感は私たちにとって重要な資質であり、それがあるからこそ人から信頼され、成長していけるのだと思います。しかし、責任感が強すぎると、その重さに押し潰されてしまうこともあります。だからこそ、適度なバランスを保ちながら、時には他人に頼り、協力し合うことで、責任を果たしつつも自分を守ることが大切です。
私はこれからも、責任感を持ちながら、他人と協力し合い、時には休息を取りながら、潰されない責任感を実践していきたいと思っています。責任感は、私たちを前に進める力であり、同時に重荷にもなり得ます。そのバランスをうまく取りながら、自分自身を大切にし、長く続けられるペースで進んでいくことが、私の目指す生き方です。
潰されない責任感 星咲 紗和(ほしざき さわ) @bosanezaki92
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