第2話

 その怪物が現れたかと思えばそこからさらに脱皮をしていたのだ。これはどう突っ込んでいいのか………………追いかけていけない。自らの皮を溶かして剥がしていくことをしてその姿を露わにした。

 指先を軽く上げて落ちてきた忿怒は全身に震えが止まらなくなってしまっていた。

「ガガガガガガガガガガガガガガガガガァ⁉」

 それで急に苦しみだしたものだからどう対応していいのか困ってしまう弥刀。だがすぐさま駆け寄っていくことを決めた。

 どうにか頭を抱えてしまい異常なまでに苦しみだした彼を二人で抑え込むことをする。だが暴れてしまっているこの状態を止めるなんて方法が思いつかない。石の地面に強引にでも押し付けてしまうくらいにか。

「ガガガガガガガガガガガガガガガガガァガガガガガガガガガガガガガガガガガガァガァァガァ‼‼」

 大きく獣の如く吠えてしまって周囲にへとそれを響かせていた忿怒。それをどうにかして叩きつけているのだからまだ凄いことだといえる。

「ねぇ。これって大丈夫なの。忿怒が目の前に帰ってきたと思ったらこんな風に苦しみだすなんておかしなことだよ」

「当然だ。だから終わらせてくれよ」

 そういってナイフを取り出してくる忿怒である。それを弥刀の胸にへと押し付けられてしまう。

「………………ふざけんなよ。勝手に出ていった思えば期待を、そんな凶器と共に送ってくるんじゃない」

 弥刀の後ろには既に金属光沢があってそれを反射してしまっているのが見えてしまっていた。ちらりと視線を向けてしまえばそんな状況がしっかりと眼に入ってしまうもの。

「あぁあぁどうしてどうしてだよなぁ」

 重たい鈍器を持ち出して寄ってきていた二人を強引に引きはが。そして握りしめた獲物にてそれを叩きつけるつもりで気合を入れて振るっていった。だがそれすらもうまく進んでいってはくれない。

 立ち上がった忿怒であったがすぐさま膝を地面に着くことになってしまった。手を虚空に伸ばそうとするが遠くまで届くことがない。これで希望が落ちてしまったことになる。

「これで最後か。済まない、迷惑をかける。ネコみたいに誰にも見られないのならよかったのか。諦めてしまおう」

 それを聞いてしまえば何かを察してかは分からないが周囲の者達は思わず動きを止めてしまう。

 これでいい。すぐさまもう一本の鈍器を取り出してきてその弐本の物で目の前にいる弐体に向けて突貫をしていった。

 その弐体の怪人からは困惑ともとれる声を出してきた。そしてその呆気にとられた状態にてこの場から引き剥がされてしまった。

 こうして行われたのは強大な爆発であったか。その爆発によって綺麗に大きく駅のホームから弾かれてしまったのが邇霧と弥刀である。

 

 爆発の起こった中でもどうにか生き残れたのは忿怒の人徳であろうか。それでも尚も立ち上がるのならこの弐体の怪人はかなりの脅威となるわけだ。

 そんなことを全身を爛れさせながらも思いついていたことが悲しくなってくる。

「しゃべらない相手というのは味気ないと思えるがそれと同時にやりやすくて助かるから。罪悪感が僅かながらに減ってくれる」

 爆発も含めて車両倉庫にまでやってきてしまった現状だ。そこでは先ほどまで一緒に飛ばされてきた弐体の他にも有象無象が多くいてそれに囲まれてしまっている。

 様子を伺えばそこでは先の弐体が指揮を執っているように感じる。これには安心してしまう。あれが特別強いわけではないと理解できてな。

「楽しくやっていこう。どうせなら」

 まずはあの桃うさぎの脱皮した成れの果てから。まさか有機物らしい容姿だったのが全身金属装甲に成り果てるとはどうなっているのか。肩パットが目立って仕方のない。

 砂利ばかりの地面を蹴り込んでいって一気に距離を詰めていった。間に割り込んでくる者がいたがそれは拳で一蹴してしまう。


 爆発によってお空を大きく越えていった弥刀と邇霧であった。そしてたどり着いたのは洞穴であるのだ。

 それも海の見えるような海岸線のすぐそばで。

「………………懐かしい」

 これには思わず息を洩らしてしまう弥刀。自分たちにとっては特別な空間だ。まさかたどり着くとすら思っていなかったのに。

 ここには帰ってきたと表現するのが相応しいとも思ってしまう。彼は持っているナイフを握りしめてそれを懐にへとしまう。

 傍に邇霧がいないというこの状況には不安に思いつつもどうにか洞穴へと近づいていった。そこでは数多くの面子が集まっていた。これには安心よりも驚きや心配という方が勝ってしまう。

 その中の一人が弥刀に気づいたようで駆け寄ってきていた。

「おう!弥刀も来たのか。無事でよかった。皆有事の際にはここに集まってくれると信じていた。けれどご生憎さまこんなもんだよ」

 そう言って洞穴の中を自慢してくる錦寿である。だが弥刀にとっては知っているどころか勝手知ったる空間であったから困るものだ。

 見せてこられるこの空間においてはまぁ皆陰気なものだ。

「当然ちゃあ当然で仕方ないんだが。たかがチンピラの集まりに期待されてもな。これだけの面子がきただけ凄いくらいの物好きだよ」

 あまり好き好んできたというわけでなく成り行きであるからと自分を理解してしまっている錦寿である。だから彼にとって好きじゃないものだって多くいる。そんなことをいいだしたら弥刀にも、誰にも同じことが言えてしまう。

 石ころ転がる地面にへとうつむいている弥刀はそのままに壁にへと向かって歩いてしまっていた。

「あッブな⁉」

 これには錦寿が咄嗟に顔の前に手を刺し込む。これで弥刀が気づいて事なきを得たことになる。

「どうした。何かあったのか?それって絶対に持っている情報が明らかに違うだろって。教えて貰っていいか」

「………………別に。邇霧とはぐれてその前に忿怒と出会ってまた姿を消してしまったというだけ」

 そう呟いて秘密基地ともいえるこの空間にて自分の配置にへと引きこもっていく。

 どうせここはアリの巣みたいに地下に張り巡らせているのだから。いくらでも空の部屋などある。


 忿怒の後にチームから姿を消した人物だっている。それがフォーマイクである。

 着地をミスってしまって悲しいくらい明後日の方向にへとたどり着いてしまったのである。

 弥刀と邇霧にへと恥ずかしながらも姿を現してまでやってやろうかと気合をいれたのにこの様である。

「クソッタレが。人生巧くいかないとは言うが成してもこれか」

 全身どこも怪我などなく着地したがさてここがどこかも自分では理解するのが難しい。ただわかることというのは線路のど真ん中ということだ。

 ちょうどで真ん中であったためにどちらに進んでいけばいい。

 渡り切ったらその直後に踏切が仕舞っていくことになる。そこで反対側に映る影というのが気になる。それが人型であるのはこの状況においてはまた恐怖を煽ってくるものである。

「どこですかここ。僕の知っている日本とは明らかに違うだろ。世界改変かそれとも融合かが。どちらにせ女の子にとっては厳しいものだってな」

 そこにいたのはただの人間である。それも迷いこんだようなまでの場違いさを恰好で示している。それよりも纏っている気配が異形の物になっているのが一番の奇怪である。

 それも当然か。そこに突っ立っているのはどこにでもいるわけではないガイアールだ。

「なんですかあなたは」

 ぞくぞくと震えが止まらない。軽く質問を送っておく。

「ただのガイアール勝利ですよ。覚えてもらわなくて結構です」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

次の更新予定

2024年12月28日 18:00
2024年12月29日 13:00
2024年12月30日 18:00

破滅の王と再誕の王 別章 紫勇すらも @sinsinjo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

参加中のコンテスト・自主企画