破滅の王と再誕の王 別章 紫勇すらも
@sinsinjo
第1話
ガイアールと呼ばれている少年は北欧にて氷の女王の遺体を確認した後には所属の支部へと帰ってきたのであった。
そして所長室にへと座りこんでいる。そこでソファーを尻の下に敷いている状態となっていた。
「………………お疲れ様でしたとしか言えませんね。なんの成果も得られませんでしたなんて言われても納得のいく状況だったようですし。単騎で遣わせた私にも責任はありますから」
「そういってくれるのは嬉しいのですが。こんなガキ一人に期待を乗せてくるのは中々に重たくはありますよ」
ふざけているとしか思えないが所長の前に座っている彼はこれでも近代戦闘においては一流を超えているほどの実力の持ち主だ。
「これからすぐに頼む仕事はありませんから。今しばらくのお暇を与えておきます。あなたを拘束することは叶わないと理解はしてますが書類上のことなので」
この小太りのおっさんが所長ではあるがそれだけに相変わらず腹の内を見せてくれない怖いお方だ。そんなおっさんが立ち上がっていき自分のデスクにへと歩を進めていく。そしてそこに置いてあるパソコンにてその記録を入れていく。
これに納得を示したのかただ黙って頷いて所長室を出ていってしまった。
「おっと」
「………………失礼します」
それと入れ替わるように一般の事務員が所長室に入ってくる。彼はガイアールに対して不満気な様子を隠さずにあいる。
「どうした。嫌かあいつが」
「別に。社会人として色々なっていないなと思うばかりなだけですよ。他人のことなど言えたりやしませんが」
どこか彼に惹かれるようにして後ろ髪を引かれるようなことになった事務員さんである。
「まぁ当然だ。お前は若いから、まだ新人だからだが………………。あいつは更に若くて、それでいて圧倒的な実力を備えている狂人だよ。あいつを抱えているとこちらが迷惑を被るのが当然とばかりにね」
彼の歩いている道路を窓から見下ろすことをした所長であった。
そしてそんなたわいもない話の話題にされているとも露知らないガイアールは高層ビルの屋上にて地上を見下ろし眺めているをしていた。
真っ先にここまで目指しての行動なので相当に熱心なものだ。馬鹿は高いところが好きとはよくいう物だ。実際にガイアールは自分を馬鹿だと仮定している。
自分の趣味と小銭稼ぎの仕事を同時にこなすくらいやってみせる。そしてどうにか今まで頑張ってやってきたのだから。
(あと少しだ。何か足りないがその何かが手に入ればすぐさま実行に移してやる。僕はこれでも喧嘩っ早いですから)
それこそたわいもないことを考えていたら地上の方で騒ぎになっているのが確認された。それを見降ろしている異様な人物さえもガイアールの足元にあるのだから追いついていくのは難しい。誰か教えてくれ。
皆いなくなってしまった。いや、これは自分が勝手に出ていったものだから違うだろうに。
オイラはひっそりと人知れず皆を隠れて守ってきた。そうはいっても襲い掛かってくる脅威などたかが知れており彼らの元にまでたどり着いたものなどなかったのだがな。
ただそんな中で街中で出現する怪人の数々には見逃すことなど出来やしない。
(まるで悪夢か)
ただこれだけなら正直言ってオイラにとってはそこまで問題ではない。自分一人いれば皆の住んでいる周辺くらいなら排除できる。それも執拗に追いかけてくるものがいないことが前提となるが。
じりじりと二人の少年にへと近づいてくる影が存在していた。それは正真正銘の異形の怪人と評することが出来る者であった。
「なぁどうしてこんな目に遭わなければいけないんだよ」
「それはこっちが聴きたい」
どうにか必死に逃げ惑っていたがそれでも子供の脚では限界がある。遂に逃げ場などない場所にまで追い込まれてしまった。
このような駅のホームにまでやってきたかのは覚えていない。だが現在いるのだからそれが現実だ。
明らかにこちらを狙ってきている様子であるのだがこちらとしては恨まれる理由など覚えがない。
「弥刀、お前だけでも………………」
大きな方の少年が背負っていた方を線路の上にまで大きく振りかぶって投げ入れることをする。
だがその行動は途中で遮られることになったのであった。何者かが空から勢いをつけて降り立ってきたのであった。
どこからかその動きを追いかければそれは高い建物からいくつもの足場となった電線などをクッションにしてか。なんて危ないんだと子供ながらに思った弥刀であったがもう子供というほど小さくもないか。
少し遠くに豆粒みたいに小さいのが落っこちてきたように感じたがそれくらいであれば気にしていられない。頭の片隅に置いておくくらいがちょうどいい。
ふざけた動きをしてお空から降ってきた人物が着地したのは怪人の後ろ側だ。正体も分からない状態で助けを求めることすら躊躇われる状況である。
そんな彼はこちらにへと振り向いてすぐ目の前にいる怪人にへと友人に挨拶するかの如く近づいていく。
一体何をするのかと弥刀は二人で怯えていた。そんな中で彼は袖から鈍器を取り出してきてそれを怪人の頭にへと振っていったである。
小さく悲鳴を上げるもそれは傷をつけられての痛みというよりも降ってきた衝撃に対する驚きというのが大きいだろうか。
ミシミシと肌のあちこちが音を立ててヒビを入れられているのが奇妙なところか。
生命に対する危機感というが鋭敏に研ぎ澄まされたこの状況であればよく理解できる。
「それっ!飛んでくるッ」
もうなりふり構わずだ。投げる構えをしていた邇霧を手元へと引き戻す。そして来た道を戻るようにして引き返そうと振り返る。だがそこではギシギシというわかりやすくも軋んでくる音がはっきりと耳に入ってくる。
そこで更に聞こえてきたのはピリピリと何かしらが剥がれ落ちてくるような耳をすんざくほどの甲高い音、声とも表現できるものであった。
何が起こったかなんて観なくてもすぐに分かった。一段階進化したのだろう。怪人なんて個性を出すのは自らの種を押し上げるくらいの方法しかない。
………………自分はこのような何で知っているのかなど予想がつかない。それに気づいていない弥刀はよっぽど危険な人物だ。
ここからの行動は一発で勝負が決まる危険ば場面ばかり、今までだって同じはずだった。だというのにすぐにまた次の気配が圧し掛かってくる。これもまた異常な存在であるがどちらかといえば気味が悪いと表現するのが正確か。
なんだこいつは?旧友のピンチに我慢できずに飛び込んできてみればそれに割り込んでくる追加の獲物とは。いきなり現れたかと思えばその場に立ち尽くして動こうともしない。
この桃色の配色なファーがあちこちについているくらいして目立った印象を持たせられていない怪人にどうしてこうまで気がかりになる。
その答えはすぐさまみられることになった。
どうなっているんだ、これは。
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