第9話

 結論から言うと、僕は隔離病棟に入院させられた。


 潜伏期間が過ぎるまで、罹患の可能性があるらしい。


 頑丈な扉は外から施錠され、逃げ出すこともできない。


 逃げ出したい。今すぐに。


 Kが今どうなっているのかはわからない。


 ナースも先生も、Kのことは頑なに教えてくれないからだ。


 僕は今、独り病室でこの文章を書いている。


 両親も面会謝絶で会えないらしい。


 時間がない。


 もうすぐ夜になる。


 夜になると、子どもの声がする。


 赤ん坊もいれば、声変わりしたての子どももいる。


 みんな、嗤っている。


 あれから考えた。


 Kは次男だ。


 だから、罹患した……


 僕は、長男だから免れた。


 免れたんだ!


 そうに決まってる!


 潜伏期間なんて意味ない。


 一刻も早くお祓いに行かなければ。


 誰か僕の計画を手伝ってほしい。


 病院名は■■県立病院。


 ここの西棟にある隔離病棟を襲撃して欲しい。


 そして僕を■■■寺に連れて行って欲しい。


 無事にお祓いが済んだら三百万払う。


 時間が無いんです。お願いします。


 もう、足の感覚がありません。


 昨夜はずっと、赤ん坊が僕の足に齧りついていました。


 小学生くらいの子どもが、去り際に意地悪な顔で僕の腕を指差して笑ったんです。


 今夜きっと腕をやられる……


 そうなったら、もう文字が書けない……


 医者は信用出来ません。


 正直に話しました。


 それなのに、僕の脳にもウイルスが侵入していると思っているんです。


 今……後ろで咳の音がした……


 まだ夜じゃない。まだ夜じゃない。


 時間がないんです……!!!!!


 誰でもいいから早く来て下さい……!!!!




 また鳴った


 

※ここで掲示板サイトに投稿された文章は途切れてしまった。

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