第7話

 Kの腕を掴んで僕は出口へと走った。


 Kを掴む僕の手のひらに、ぬる……と気持ちの悪い感触が広がったが構っている余裕は無かった。


 一刻も早く外に……!


 Kを狭い穴に押し込み、僕は後ろからKを蹴るようにして歩かせた。


 それでもKは「えへぇ……えへえへ」と不気味に笑うばかりでそれ以外の反応は無い。


「早く行けよ……!!」


 思わず怒鳴るとKの首がぐるりと異様なほど回転して僕を見つめた。


 思わず息が止まる。


 ここでKが動かなくなれば、僕は逃げられない。


 半狂乱でKを押した。


 あちこち擦りむいて痛かった。


 それでも構わずKを押した。


「なあ? ちゃぁんと……感染ったか? お前も、ちゃぁんと感染ったか? 逃さんぞ? ここから出ても、絶対に逃さんぞ? なあ? なあ? なあ? なあ? なあ? なあ? なあ?」


「わぁああああああああああああああ……!」


 僕は叫びながら後ろ足で思い切りKを蹴った。Kが呻き声を出してよろけても、構わずに蹴りまくった。


 後ろ向きののような格好で進む僕の目に、無数の子どもの姿が飛び込んできた。


 恨めしそうに笑う、諦めと得体のしれない執着を宿した顔は、どれも斑点と膿でズブズブに崩れていた。


「ぎゃああああああああああああああ……!」


 思わず悲鳴をあげて、さらに強くKを蹴ったその時、Kの体重がフッ……と軽くなった。


 見ると、Kは外に転がり出て気を失っている。


 僕は全速力で外に出るなり、祠の岩戸をぴったりと閉じて、Kを担いで車に走った。

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