第4話

「行くか……?」


 沈黙を破ったのは僕だった。


 Kは蒼い顔のまま静かに頷いた。


 恐ろしい。でも僕の鼓動を早めているのは恐怖だけでは無かった。


 ……ここには何かがある……


 その手応えが僕を祠へと駆り立てる。


 不気味な人形達を丁寧に脇に追いやり、僕らは祠の奥に懐中電灯の明かりを向けた。


「マジじゃんか……」


「マジだったね……」


 そこには確かに岩戸があった。


 正方形の切れ目から、ひゅう……と冷たい風が吹き付けてくる。


「開けっぞ……?」


「うん……」


 僕は岩戸に手を伸ばすKにカメラを向けた。


 「うわぁぁあっ!?」


 叫んだのはKではなく、僕だった。


 Kの背後に何かがいた。


 きめ細かい白い肌。


 まるで子どものようなナニカ。


 Kはビクリと身体を震わせ僕に言う。


「な、何だよ!? ビビるだろ!?」


「今、何か映った……Kの後ろに……」


 Kの顔に緊張が走る。


 Kはゆっくりと振り返ったが、そこには人形が並ぶだけだった。


「人形だろ……? ビビらせんなよ……」


 Kはまるで自分に言い聞かせるようにそう呟くと、何の合図もなく一息に岩戸を押し開けた。


 ヒュぉぉぉ……


 息のような音が、岩戸の奥の闇から響く。


 人一人が這って通れるほどの小さな入り口。


 Kは何かに取り憑かれたように、何も言わずに穴へと入っていく。


 躊躇う様子はない。


「おい……! K……!」


 異変を感じて思わずKを呼び止めた。


 それでもKは止まらない。


 ……見失ってはいけない……


 本能の声に従い、僕もKの後に続いて闇の中へと這っていった。

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