第2話
アルコールの勢いそのままに、僕らは夜の山道を車で突き進んでいた。
「これは人助けなわけ! 善は急げって言うだろ?」
僕はそんなKの言葉に便乗した。
飲酒運転ではあったが取り締まるお巡りも人もいない真っ暗な夜の山道。
古い軽ワゴンのカーステレオからはつまらないラジオが垂れ流されている。
「なあ」
Kがおもむろに呟いた。
「羅漢の祠ってなんで人形が供えられてんの?」
「さあ……ネットには情報無いよ」
そう言って見やったスマホには辛うじて電波が一本だけ立っていた。
フロントガラスに飛び込んでくる蛾や羽虫をワイパーがミンチに変えていく。
潰れた虫の体液でどんどん視界が悪くなって行く中、突然山道が終わり、僕らは開けた場所に出た。
誰かが管理しているのだろうか?
こんもりと盛り上がった丘へ続く一本道の両脇は背丈の低い草で覆われ、所々に大きな岩が転がっている。
僕はカメラを取り出し、窓の外に向けてその様子を録画し始めた。
草原と岩。
異様な空間。
突然岩の影から、白い服を着た何者かが飛び出してくるような気がしてゾクゾクする。
やがて丘の麓に着くと、そこには掠れて所々読めなくなった立て看板が佇んでいた。
『羅漢の祠』
その昔、こ…地………ひ………え……う
鎮……めに……祠……れ……供……す…
内……は……殺す! 〇〇参上!
夜露死苦! 俺等〇〇高愚連隊!
090-☓☓☓☓-☓☓☓☓ この番号にTELくれたら
☓☓☓してあげる♡
後半はなんとも罰当たりな落書きで埋め尽くされているが、その中に奇妙なモノが紛れていて、僕はカメラ越しに固まった。
『んぁ…ま…に…移つる移る逃がさん』
指で書いたような筆跡と、黒く乾いた液体が、僕に血文字を連想させた。
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