第4話 宝くじ売り場の女

 当たる確率はとっても低い。

 そんなことは誰でも知っている。

 そんなことは承知で買っている。


 毎日誰かがくる。

 笑顔か、無表情か。

 淡い希望か、一縷の望みか。


 でもまあ、目の前で死んだ奴は初めてだった。

 さっきまで普通に話していて、買う直前で死んだ若い男。


 男は不思議なことを言った。

 悪魔に寿命を売った代わりに、自分は自由になった。

 自由になったからくりを自分は何となく察していて、でももうどうしようもない。

 しょうがないから人生で初めての宝くじを買いに来た、と。


 そんなことを言いながら自身の財布に手を掛けたところで男は立ち尽くし、声をかけた瞬間に倒れた。


 大変だった。

 救急車を呼び、警察を呼んだ。


 丸一日の事情聴取、周りからの不審な眼。


 散々な目にあった。自分にとってはあの男こそが悪魔だった。


 だいたい、悪魔は魂を望むものだ。寿命じゃない。

 そしてそんなことはどうでもいい。

 自分は職を失った。

 スーパーの店員になろう。

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悪魔との契約 ヨートロー @naoki0119

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