第19話「模擬戦の評価 2」

別に普通に交代したのに、というため息を吐きながら、千躰が後ろに下がり、笑顔の優愛が続けて話し出す。




「さて!まずは岩本輝愛ちゃん!」



「は〜い!」




元気よく返事をして、輝愛が優愛の隣に出てくる。




「岩本輝愛です!獣人族、虎人族です!好きな物はチョコレートです!天能は雷属性の『雷導者』で、電流をこの槍に流せたり、まだ遠くまでは飛ばせませんけど、こう指からビリビリって、電気を飛ばせます。よろしくお願いします!」




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「うんうん。輝愛ちゃんの電気はかなり痺れたよ笑」



「すみません笑」



「それで、1つ聞きたかったんだけど、なんで双槍をメイン武器にしたの?」



「……その…輝愛、小さい頃は槍を使ってたんですけど、こう電気を纏わせて槍を投げたらカッコいいかな〜って思って練習してたら……パパが、槍を投げた後に武器が手元に無くなったら危ないから、投げないようにするか、予備の武器を持つようにしなさいって言われて…」



「2本の槍を持つようにしたと。」



「はい!知り合いの鍛冶屋さんにお願いしたら、2本を両手で持っても扱いやすいようにって、ちょっと短めの槍にしてもらいました!」




後ろを向いて、背中に指している2本の槍を見せながらそう言う。




「なるほどね。なら、輝愛ちゃんがやりたがってる、槍に電気を纏わせての投擲を、必殺技にできるぐらいに発現とか身体強化のレベルを上げつつ、双槍もより上手に使えるようになろう。」



「分かりました!頑張ります!」



「うん笑。じゃあ、次はお兄ちゃんの岩本天弥君。」




優愛に名前を呼ばれた天弥は、ウキウキとした様子で前に出てくる。




「俺は、虎人族の岩本天弥!戦うことが好きだ!天能は『風刃カゼノヤイバ』。風属性で、その名の通り、風の刃を飛ばせるぜ!これからよろしく!!」




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拍手に包まれた天弥は、満足そうな笑みを浮かべる。




「天弥君は、虎人族の身体能力の高さを存分に活かして、高速移動しつつ爪で攻撃を与えていく、っていう戦闘スタイルだよね?」



「おう!速度と火力で、どんな敵でも無傷で倒してやるぜ!」



「笑、良いね。でも、このままだとすぐに敵に捕捉されるし、攻撃もまぁ、まだ簡単に防がれるだろうから、しっかりと鍛えていこう。」



「いつか、優愛さんの防御もワンパンで突破してやるからな!」



「それは楽しみだな〜〜って、天弥君は武器は使わず、自分の爪で戦うの?」



「……やっぱ、キツそうか?」



「正直ね。虎人族の爪は強靭だけど、やっぱり攻撃力を上げたいなら、爪装備をした方が良いかな。それに模擬戦で使ってた必殺技。あれも、爪装備をつければ、もうちょっと速く撃てるようになるんじゃないかな。」



「マジか!ならつける!」



「笑、明日、工房で見てみようか。」



「分かった!」




そう明るい笑顔で言った天弥は、明日が楽しみになったのか、ルンルンといった足取りで戻る。




「次は、騎道美波ちゃん!」



「はい。」




名前を呼ばれ、短く歯切れの良い返事をした騎道は、堂々とした様子で優愛の隣に立つ。




「人族、騎道美波です。趣味は…特にありません。天能は水属性の『静圧シズマルアツ』で、自分を中心に波を発生させることができます。これから、どうぞ、よろしくお願いします!」




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「まず美波ちゃんは……やっぱ、剣術が凄いね。さすが、あの名門の…」



「いえ……でもやはり、優愛さんの盾術は凄かったです!全く歯がたちませんでした笑」




すぐに笑顔になったが、一瞬だけ暗い表情になったのを見逃さなかった優愛は、それを心に留めつつ、話を続ける。




「そう?褒めてくれてありがと。あとは輝愛ちゃんと天弥君をしっかりと手網につけた指揮能力も中々。リーダの資質があるよ、美波ちゃんには。是非、パーティーのリーダーを務めて欲しいな。」



「そう言っていただけるのなら、精一杯、頑張らせていただきます。」



「うん笑。それと、美波ちゃんの天能は、水の波以外の波も発生させられそうだね?」



「はい。今のところは、水の波以外にも、振動波を発生させられます。」



「振動波……あ、アレか?!」




騎道の言葉を聞き、それを受けた覚えがあった天弥が声を上げる。




「笑、あぁ。興奮していた天弥と輝愛を止めるために使った。」



「すげぇ不思議な感覚だったぜ。」



「輝愛も。」



「ふ〜ん……それに合わせて、思念波とかを広げられるようになったら、できることが増えそうだね。」



「思念波……周囲の人間にすぐに指示を飛ばせるってことですか?」



「それもそうだけど、思念波だったら言語がいらないじゃん。」



「っ…動物や魔物にも言葉を伝えられると?」



「もしかしたらね。だから、発現のレベルアップもちゃんとやっていこう。」



「はい!」




自分の可能性に期待を抱いた騎道は、明るい返事をして、元の場所へ。




「さ、次は……って、未良と刀花がやる?」




優愛は残り4人の名前を呼ぶのを止めて、実際に相手をした2人に評価を言わないか、と尋ねる。

が、すぐに2人が首を振ったため、優愛は気を取り直して、次の人の名前を呼ぶ。




「門倉希望ちゃん、前に出てきて。」



「は〜い。」




前にいる騎道と真綾の間を掻き分けて、小さい門倉がぴょんっと前に出てくる。




「門倉希望!小人族で、趣味は寝て食べて動くこと。天能は『喜空武天我威きそうてんがい』で、光属性で、こう、ぐわぁぁ〜って力が湧いてくるの!よろしく!」




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「…うん。前に私達に天能のことを話してくれた時と同じように、そんな説明になるんじゃないかなって思ってたよ笑。外から見た感じ、希望ちゃんの天能は、更なる身体強化と飛翔、あとその巨鎚も金色の光を纏ってたから、武器強化もできるのかもね。」



「なるほど〜」



「笑、自分の天能なのに。まぁでも、それだけ天啓が抽象的で、自分のできることがよく分かんないってことか。」



「できること……なんか、なんでもできそうな気がするんだよね、やろうと思えば。」



「へぇ〜笑、さすがに属性の違うものは無理だろうけど、光属性の範囲内でやりたいことは全部できるのかもね。これから魔現師として活動する中で、色々と試してみよう!」



「はい!」



「ちなみに、今のところ希望ちゃんは、どんなことができそう?」



「う〜ん………あ、楓の水の刃とか、天弥の風の刃みたいに、武器から光の刃を飛ばせるかも!」




と、目をキラキラさせた希望が言うと、優愛は…




「……巨槌から刃は無理じゃない?」




再び、やっぱりか、という表情でそう言った。




「あ、確かに……なら、こう遠くからズドーンってのは?」



「まぁとにかく、遠距離攻撃をやりたいんだね笑」



「やってみたい!」



「なら、まずはそこから挑戦していこうか。」



「分かった!」




元気よく返事をした門倉は、早速、右手に持つ巨槌に金色の光を纏わせ始め…




「ちょっ、希望ちゃん?!今じゃない、今じゃない!」



「え〜〜すぐにやりたかったのに〜」




焦った優愛にすぐに止められた。




「明日ね、明日。また明日、一緒に頑張ろう。」



「…は〜い。」



「よし笑。じゃあ次は、桃園芽瑠ちゃん!」




やりたいことをお預けにされ、項垂れる希望と入れ替わり、まだ緊張が抜けていない桃園が前へ。




「お、桃園芽瑠です。人族です。趣味はす、素振りです……天能は『重奏者』で闇属性です。指定した範囲内の重力を操れます。よ、よろしくお願いします。」




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「ほっ……」




一礼をした後、向けられた拍手を聞いて、安心したような表情を見せる桃園。




「笑、芽瑠ちゃんはとにかく、大剣術が光ってたね。あのガロスと同等だなんて、ほんとに凄いよ。」



「いえ、そんな……」



「はい、1つ良い?」




優愛の言葉に、桃園が謙遜していると、刀花が手を上げる。




「ん?どうしたの?刀花。」



「いや、気になることがあってさ。」




そう言って、刀花は、何を聞かれるのかと更に緊張した桃園を優しい笑顔で見る。




「別にとって食べちゃうわけじゃないんだから、そんなに緊張しないで笑。リラックス、リラックス。」



「は、はい…」



「ゆっくりと深呼吸。」



「すぅ……はぁ………すぅ………はぁ………」



「少しは落ち着いたかな?」



「…ふぅ……はい。ありがとうございます。」



「人前に出るのは緊張するよね〜笑」



「はい、すごく緊張します…」



「うん笑」



「……って、刀花は芽瑠ちゃんに何を聞きたいの?」




話が逸れかけたため、優愛が刀花の聞きたいことに、話を引き戻す。




「あぁ、それはね。芽瑠ちゃんって、初めから大剣を使ってたんじゃなくて、最初は刀を使ってて、途中から大剣に切り替えた口じゃないのかな〜って思って。」



「えっ…」



「そうなの?芽瑠ちゃん。」



「は、はい……1年前に愛刀が壊れてしまって、その……どうしても他の刀を使う気になれず、私の天能と相性の良い、大剣を使い始めようと思って…」



「なるほどねぇ……愛刀が壊れるのは、結構ショックだよね。」



「…はい。でもどうして…」



「笑、勘だよ。足運びや左手をあまり使い慣れてない感じから、なんとなくそうなんじゃないかな、って思ったの。」



「すごい…」



「そりゃあ、剣神だからね笑」



「ちょっと優愛。それで、芽瑠ちゃんに提案なんだけどさ。また、刀を使わない?」



「っ……でも…」



「まだ実際に、芽瑠ちゃんの刀術は見たことないけど、あの大剣術を見て、芽瑠ちゃんは刀術の才能がある上で、日々鍛錬を欠かさなかったんだろうな、って思ったから、是非、芽瑠ちゃんにはまた、刀を使って欲しいんだ。」




俯きかける桃園の目を真っ直ぐに見つめ、気持ちを伝える刀花。



それを受けた桃園は…




「……剣神様…いや、刀花さんにそこまで言っていただけるのなら……また刀を握ります。」




再び目に炎を灯して、そう言った。




「笑、よし。ちなみに、壊れた愛刀の一部とか持ってない?」



「え、持ってますけど…」



「やっぱり。そこまで刀への愛が強いなら、絶対に持ってると思ったんだよ。芽瑠ちゃんさ、その愛刀の心を継ぐ新しい刀を使おう。」



「?」



「つまり、その愛刀の一部を使って、新しい刀を作って、それを芽瑠ちゃんが使うって意味でしょ?」



「そう!ナイスフォロー優愛。」



「この子の……心を継ぐ…」



「うん。明日にでも、工房に行って、芽瑠ちゃんの刀を作ってもらおう。」



「……はい。お願いします。」




自分に新しい道を示してくれた刀花に、最大限の感謝を込めて、桃園は頭を下げ、刀花は満足したように頷き、次の人の自己紹介へと移るのだった。





to be continued



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2024年12月25日 20:00
2024年12月29日 20:00
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『解錠』の魔現師は何が為に戦う? ドラると @DORAruto

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