だってすきだった
惣山沙樹
だってすきだった
ゆうちゃんは私のお姉ちゃん。
小さい頃からそっくりだった私たち。パパとママのお姫さま。サイズ違いのお揃いの服を着て、家族四人で出かけるのが楽しかった。
私はゆうちゃんと同じおもちゃで遊んでいた。このレゴは七歳からだよ、まだ早いんじゃないかな、ってパパに言われたけど、ゆうちゃんが、一緒にするから大丈夫! って言ってくれて、二階建てのおうちを作った。本当に優しいゆうちゃん。
けど、ゲームセンターでゆうちゃんが取ったメタモンのぬいぐるみだけは、同じのが欲しいって泣いて騒いで訴えたけど、ダメだった。店員さんに聞いたけど最後の一つだったんだって。
これだけは渡したくないの、ってゆうちゃんまで泣いちゃった。けど私は、たまにお世話するんだったらいいでしょ、って食い下がって、二人でリボンをつけたりシールを貼ったりした。
あのメタモン、どこにいったのかな?
ゆうちゃんが大学生になって、ぐっとぐっと大人になっちゃって。まだ高校生の私は、髪だって染めれないし色のついたメイクもできない。だから、茶髪になってリップをつけるようになったゆうちゃんが眩しかった。
あーあ、私もゆうちゃんと同じことしたい。そればかり考えてた。二つ。たった二つの年の差。それが埋まることは永遠にない。それがハッキリわかって、背伸びしたって仕方ないなって髪とメイクは諦めた。
でも、
セックスってけっこう退屈だね。
わたしは、和樹くんはゆうちゃんで慣れてると思ってたから、任せてたんだけど、後で聞いたらゆうちゃんとはまだだったんだね。
安いラブホのぺりぺりのシーツは寝心地が悪くて、和樹くんの吸うタバコはとても臭くて。そして、私が先に大人になったんだ、って気付いて、こういう年の差の飛び越え方もあったんだって結果的に知ることになった。
何回かセックスしてたら、和樹くん、ゆうちゃんとは別れて私と付き合いたいって言ってきたからびっくりしちゃった。嫌だよ、って和樹くんの手を払いのけたら、じゃあなんでセックスしたのって聞かれたから、「だってすきだった」ってちゃんと言ったのに、和樹くんは全然わかってくれなかった。
家とか高校とか知られてなくてよかった。ラブホを飛び出して、ラインをブロックして、何とか逃げれた。その次の日に、ゆうちゃんが真っ赤な目をして帰ってきて、和樹くんにフラれたってしょげてたから慰めた。こういう時は知ってる。あったかいココア。二人で長い話をするのなんて久しぶりだったから、私、嬉しくて仕方なかったんだよ。
それからしばらくして、ゆうちゃんは新しく男の人と仲良くなったって、和樹くんを吹っ切れそうだって報告してきた。まだ付き合うかどうかはわからないけど、大事に遊べるといいよね。
だってすきだった 惣山沙樹 @saki-souyama
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