第3話 双子:姉、異世界人
「お母さん、私ね、家族にしか話さないって決めてる秘密があるんだ。
だからね、今から言うんだけど、絶対に家族以外の人に言っちゃダメだよ?」
「……その家族とは、貴族として一般的に言う、使用人の人たちも含めた家族団まで含めるのですか?」
この世界の貴族は基本的に世襲制である。
王族ですら裁判などで一家丸ごと代わる可能性もある中で、世襲というのは古い文化なのかもしれない。
しかし、貴族は物を作り経済を回す平民や行政専門の王族とは違い、民や国を外的脅威から守るという方法と過去で成り立つ身分である。
いつ死ぬかもわからない役割で他を守る貴族は、貴族だからこそ戦う力と財産全てを家族に継ぐ事が許され、義務とされている。
なので、昔の
実際に使用人に貴族位を引き継がせた事例もあるので、基本は使用人達も含めて家族、家族団と呼ぶのだが……
「――使用人の人たちは含めないよ」
「あの人達はあくまでも他人。
確かに普段から同じ様に衣住を共にするけど、家族って程じゃないの。
私にとっての家族は
この子はそうなのか。
平民や王族の家族は確かに二親等までが基本的考えである。
しかし、養子で引き取られたとしても、数年は同じ家で過ごして来た筈なのに家族以外は家族ではない..か……
「ところで、秘密とは何ですか?」
「お母さん、私ね......実は..”異世界人“なんだ」
「私もですよ」
「えっ……」
「え?」
珍しい存在ではあるが、見た事無いという事もない。
事実、私だって朧げだがこの世界ではない世界で暮らしていた者の記憶がある。
「そんな……私のアイデンティティだったのに……」
「ご..ごめんなさい……」
「じゃあ、お母さんも何かしらのスキルとかチート持ってたりするの?
私、自分以外の異世界人に会ったことないからそこら辺のデフォがわからないんだよね」
「異世界人の方がその様な技や術を持っていると聞いた事はありますよ。
私は無いようですが。」
「そっかあ
いやあ、私のアイデンティティは守れそうだな〜」
そう言うと彼女は何の予備動作も無しに、掌から青い炎を出して見せた。
「これね、今のところは私しか使えない“魔法”なの
魔法を創る能力。それが私の能力でありアイデンティティなの。」
「魔法」を作る……
母方の遺伝魔法を含め、それらを碌に扱えない私にはそれがどれほどの代物か。この時は理解し難かった。
ただ、
「ただね、こういう特殊な能力にあるあるなんだけど、代償が大きいのよ..これ..
創るのもね..使うのもつかれ..ちゃう....の……」
アメリアの声が段々と幼い声になってきた。
と同時に炎が消え、その場にへたり込んだ。
「大丈夫ですか⁉︎」
慌てて駆け寄ると、アメリアはとろんとした目で
「おかあさぁ〜ん」
甘えて来た。
――――――――――――――――
・魔法
この世界を形作る自然や法則そのものに干渉し現象を起こす能力。扱えるのは、遺伝などで元から使える性質の者や魔物のみである。
アメリアが使った魔法を創る能力と創った魔法は区分では違うものであり、例外はあるものの創る方が負担は大きい。
別名、スキル、異能などと言う。
・魔術
魔法やスキルなどを再現しようとした結果に作られた、持たざる者の技術の一つ。これらは法則などに干渉するでは無く、プログラミングのように術の式を組み合わせて一から現象を構築している。誰でも使えるという一方で、習得難易度、応用難易度共にこの世界で最も高いと言える術。
ただし、過去には「術の賢者」と呼ばれた者達が魔法をも越えんとする程に極めていた。
別名、魔道、魔導と言う。
新婚相手の連れ子がヤバかった。 三月男爵 @sangatu_danshaku
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