第2話 双子:姉


 王都郊外。


 夜も深くなり、王都の光が少しずつ消えて行く時間。


 今、私はキーストン家の屋敷前に来ていた。

 


「セシル、そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。

 これからはここがあなたの家になるのだし、それは皆承知している事実です。


 とりあえず、二人が待っている筈なので、入りませんか?」


「あ、はい」


 ルイスに手を引かれて屋敷の中に入る。

 


「お父さ〜ん、おかえりなさ〜い!」


 扉を開けた直後、一人の子供がルイスに飛び込んできた。


「アメリア、ただいま〜!」


「えっ」

 


 恐らく、ルイスが養子として引き取った子であろうアメリアに貴族令嬢らしさというものが一つも存在しなかった事、ルイスがアメリアの突進を受け止め、破顔している事に動揺が隠せない。


 あれっ、この人ってこんな笑う人だっけ。


 私が動揺していると、これから私の娘となるアメリアが挨拶をしてきた。

 

 

「はじめまして!お母様!私、アメリア・キーストンと申します!ピッチピチの7歳です!よろしくね!」


 

 あっ、この子かわいい。確かに、顔が崩れそうになる。


 

「挨拶ありがとう。今日よりあなた達の母になります、セシル・ナイ..じゃなかった、セシル・キーストンと申します。

 えっと....よろしくお願いしますね?」


「お母さん、かわいぃ!

 あ、お母さんって呼んでもいいですか?

 

  「あ、いいです..」

 

 て言うか、モノホンの貴族令嬢じゃん!あれ?騎士サマだっけ?


  「はい。私は騎士団に所ぞ..」


 って事は、姫騎士⁉︎すご〜い!かわいい〜!推せる〜!」

 


 こ..この子、凄い喋るな。

 


「姫騎士?かどうかは知りませんが、私は侯爵家出身の騎士ですよ。

 ……まあ、実家には騎士団に入る際に縁を切られたも同然ですが。」

 


 私は騎士になりたいと言った8歳の誕生日を思い出す。


 ……あの時の母の顔はそれまで見たこともない程に苛烈に激怒していたっけな。

 

 あの様な顔をされるのだ。自分の言ったことが原因だし、悔いはない。今更、縁切りに文句を言うのは筋違いだろう。


 

「……まあいいや。


 お母さん着いて来て!お屋敷の中案内してあげる!」


「待ちなさい、アメリア。

 セシルは今帰ったばかりなのですから、少し休ませてから明日にでも案内してあげなさい。」


「はーい!


 ……じゃあ……お母さん、今日は一緒の部屋で寝ない?」


 

 この子、あざとい……!

 

 しかし、上目遣いでそんな甘え方をさたら……


 

「い、良いですよ?」


「やったー!


 じゃあ、お母さん、お風呂も一緒に入ろ!

 こっちだよー!」


 

 早い....あっという間に奥の方へ駆けていってしまった。


 

「凄く元気な子でしたね。」


「そうですね。今日は家族が増えるという事で一段と元気でしたね。」


 

 あ、良かったかも。


 子供が元気なのは嬉しい事なのだろうが、普段からあれだけ元気だと絶対に疲れてしまう。


「セシル、アメリアもああ言っていますし、今晩は二人で寝てあげてください。

 まあ、流石に風呂は別々に入って貰いますが……」


「あ、自分が先に一緒に入りたいってやつですか?」


「っ⁉︎


 ……いえ、この家の風呂は個別で入る大きさにしか作られていないので。


 ……あなたってこんな茶目っ気もあったんですね。」


 

 ルイスが顔を逸らして言った。


 ……言った私も顔が沸騰しそうだったが。



 ――入浴後、アメリアの部屋にて。


「お母さん、私ね、実は異世界人なんだ。」



 衝撃的な事を告げられた。


 ――――――――――――――――


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 ルイス、結構ヘタレさんなんですね。

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