第27話 廃墟(1)

 道は平坦になって、ゆるやかに左に曲がっている。

 昔のゆめ牧場の外側に沿っているからだろう。ゆめ牧場は白姫しらひめやまの山のてっぺんにあったということだから、たぶんまるい形だったんだろうと思う。

 まるいから、鉄道馬車もまわりを回っていたのだろうし。

 でも、道はゆめ牧場のフェンスからは道は少し離れた。

 道と牧場のあいだに土地があって、そこに一列に家が並んでいるのだ。

 美和みながここに自転車の練習に来ていたときには、どの家も、青い瓦屋根で白い壁の家だった。それに、どの家にも、直接に外と出入りができるような大きな窓が道のほうについていた。

 友梨咲ゆりさの家の近所よりももっとピカピカできれいな感じだった。

 平屋の家ばっかりで二階建てはなかった。

 屋根の形が違ったり、屋根が瓦ではなくて灰色の板のようなものだったり、壁の色やデザインが違ったりという家もあった。でも、大きさは同じだったし、そういう家も二階建てではなかった。

 家そのものはそんなに大きくないようだったけれど、どの家も敷地は広かった。

 大きい窓の外は、道とのあいだに空いている土地があって、そこが庭になっていた。

 庭に花を植えている家もあった。畑にして作物をつくっている家もあった。

 畑にトマトがなっている家があった。ヘチマか何かを植えて、その蔓が青い瓦屋根へと伸びている家もあった。

 それぞれの家と家のあいだも広く開いていて、そこに自動車を置いている家が多かった。

 だいたいの家は屋根も何もないところに自動車を停めていたが、農業用のビニールハウスみたいなものを建てて、そこに自動車を置いている家もあった。

 その家と家のあいだに物置を置いたり、ロッカーを並べたりしている家もあった。

 山を登って到達する牧場の手前ということもあって、その家の並びも含めて、おとぎの国、いや、ほんとうに「ゆめ」の国という感じがしていた。

 それが、変わってしまっている。

 いまも家はある。

 屋根はだいたい青い瓦で、壁はだいたい白い。

 それはそのころと変わりがない。

 あのころよりも黒ずんで、薄汚れているけれども。

 しかし、庭はやっぱり雑草で覆われていた。

 あのころのようにきれいに整えられた庭や畑は、どの家にもなかった。

 家のあいだに物置きやロッカーがあるところはあったけど、それは、傾いていたり、汚れていたりする。どれも鉄の部分はびついていた。

 なかにものが入っているかどうかは知らないけど、捨てられ、放置されているのはまちがいがなかった。

 こういう家が、十軒以上並んでいる。

 そのなかで、人が住んでいるらしい家は一軒も見あたらなかった。

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