第19話 疾風怒濤、波瀾万丈(1)
「もともと、そのおじいちゃんっていうのが、関東の東のほうの出身で、村の
庄屋とか過激派とか、なんか、いきなり話が大きくなった。
でも、新聞社の偉い人が家を訪ねて来るような大物写真家の親なのだから、そういうこともあるかも知れない。
「わんっ」
あるかも知れない。
ところで、なぜシュー君が吠えたのかは、よくわからない。
無理に引っぱり戻してもいないし、早く先に行きたい様子でもない。
「それで、川路に来てから、大学にも行って、また過激派になりそうになったんだけど、その育て役の叔父さんから、どうせ世のなかをひっくり返すのなら、暴力じゃなくて、もっと大きいことをやってひっくり返してみろ、って言われて、なんか、納得したらしくて」
「わんっ。わんっ」
シュー君、もしかして初子の話に反応してる?
シュー君も、世のなかひっくり返すのかな?
対猫安保闘争……。
……もし対猫闘争とかだったら、猫っぽい初子に丸めこまれてたらダメじゃん。
いや、何を考えてるかわからなくなった。
初子の話は続く。
「で、大きいことなのか何か知らないけど、ほとんど独学で弁護士になって、ちょっと前までの自分みたいな、暴れすぎて捕まった若者の弁護とかやって。あと、その少しあと、パソコンっていうのが出回り始めて、いまから見るとぜんぜん別物っていうぐらいに何もできない機械だったらしいけど、それに夢中になっちゃってさ。で、弁護士だから、その、コンピューターで作ったものの著作権とか? そういうのをわりと早くから考えてたひとだった」
シュー君が反応しないのは、著作権とか、そういう話が難しすぎたから?
「だから、もうおじいちゃんが死ぬ何年か前だったけど、日本でまだスマホって売ってなかった時期にさ、ところがそのおじいちゃんが外国に行ってスマホを買ってきてくれて、「初子、これ面白いから使ってみろ」って渡してくれた。わたし、そのころ、まだ幼稚園だったかな」
幼稚園児にスマホをプレゼント、って、すごいな。
「ただ、電話番号が外国なのね。で、外国で電話料金払ってたんだけど、それが尽きてつながらなくなった。いまほどいろんなアプリもなかったし。けっきょく、あんまり使った記憶ないんだけどさ。でも、わたしの最初のスマホは、おじいちゃんからのプレゼント。それはよく覚えてるよ」
「わんっ。わんわんっ」
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