第4話 怪奇! ギルド職員の謎! 全テはマスターのためニ!!
「魔法はやめられナイ、止まらナイ!!」
フィナーナの乱入で魔法の発生は防げたもののノイジーの掌にはまだ魔法となりえる魔力が渦巻いていた。
「戦うしかないんじゃないか?」
「あなたは、戦える?」
右手は針貫通済み、部屋に獲物となりえそうなモノはない。
さっき出した衝撃波も咄嗟に出ただけでノウハウもクソもない。
あるのは……
「これだけだな」
「ペンだけでどうやって戦うつもりですか!」
「何とかする!」
「何とかするって……戦えないのはわかりましたから下がっていてください」
「いや、振ってみないとわかんないだろっ!!!」
ペンは普段から仕事で使っているごくありふれたものでしかない。
ただ、その手になじむ得物を握った瞬間、不思議な確信があった。
「しつこいんだよッ!!」
力任せに血の滴る右手でペンを袈裟切りするようにふるう。
──ピシッ。
空間が、割れた。
光景の変化に一拍遅れて、腹の底からえぐり取られるような衝撃波が襲う。
先ほどのノイジーの一撃とは違う、敵も味方も関係ないひどく原始的な暴力の塊が弾けた。
地下室を支えていた柱も梁も全て砕け散った。
「バカですか!? 人のこと言えませんけど!?」
「知らんて! 俺もビックリしてんだよ!」
砂埃やがれきを払い、立ち上がる。
幸い二人とも大きなケガは負っていないようだ。
「今のうちに逃げるぞ!!」
「ちょっ、ああもう! わかりましたっ!!」
こうして地下からの脱出を果たした俺たちだった。
が、
「これだけ爆発してりゃ、来るわな」
這いあがった俺たちの前には、ノイジーと同じ針を携えこちらを睨む男たちが包囲していた。
もれなく全員、ギルドの制服を着ている。
「団結せねばナラヌ……我ラ、誇り高きグーテンベルク・ギルドの職員ユエ」
「立ち上がらねばナラヌ……我ラ、敬虔なハザン・グーテンベルクの信者ユエ」
「殺さねばナラヌ……我ラ、忠実なグーテンベルクの僕ユエ」
「故ニ」
切っ先が全て、俺の右胸に向けられる。
「我らが導コウ。では、”スーパー・アルティメット・ウルトラ・ハイパー・モスト・ヴァリアブル・パワーバリアー”」
「色々混ざりすぎだ馬鹿!!」
再び魔力を暴発させようとしたがペン先がつぶれたような不快感が俺を襲う。
「出ない……!?」
「我ラがバリアー、魔力を封じる結界ナリ」
「でしたら力づくで突破するまで!!」
フィナーナが大剣を叩きつけるが、針で軽々と受け止められてしまった。
「我ラには効かヌ。諦めて、死ネ」
「いやーまいったな」
「『まいったな』じゃないですから!! 何をのんきに!?」
実際、客観的にみれば絶体絶命ではある。
魔法は使えず、逃げ出そうにも全方位を囲まれているため、走って逃げようにも逃げられない──
なんてことはない。
「フィナーナ、ガードだけしといて」
「なっ、何をする気なんですか?」
「いいから、頼んだ!」
一歩の助走から職員の間めがけてスライディングし、背後に回る。
「風穴開けてやらぁ!」
再びペン先に魔力を流し込み、暴発させる。
虚を突かれた職員たちが散り散りに吹き飛ばされる。
「逃げるぞ!」
陣形が崩れた職員たちに蹴りを加え、フィナーナの手を取りその場から逃げ出したのだった。
☆
背後のドア越しにギルド職員たちがどたばたと駆け回っている足音が聞こえる。
「……撒けた、みたいだな」
俺はほっと胸をなでおろすとドアにもたれ込んだ。
「だ、大丈夫でした……? ケガは……」
「何とかなる範囲かな。ありがとう」
バーのバックヤードに流れ込んできた俺たちをクローラは快く匿ってくれた。
「ありがとう、じゃありませんよ!? あんな地下で爆発なんて起こさないでくれます!?」
「しょうがないだろ!? あれのおかげでここまで逃げれたんだけど?」
実際、ギルド職員たちに放った魔力爆発の余波で俺もフィナーナも全身砂まみれでところどころ服が破れいかにも戦場帰りな様相を呈している。
「だからと言ってここまで派手に爆発させる必要はないでしょう……!! もう、魔力操作が下手なんですから」
「俺は冒険者じゃないから魔力だなんだってのもわからないんだよ」
そう、本来は俺はただのギルド職員。非戦闘職の裏方なのだ。
「──ギルド職員って冒険者資格の取得、義務じゃなかった?」
「……」
「目をそらさないでくださる?」
「持ってるだけ、と実戦経験があるは違うから!! それよりもこれでやっと、めどがたったな」
砂埃を食材にかけないように慎重に廊下に移動する。
「めど? 何をするつもりなんです?」
俺は、首をかしげるフィナーナに向かってペン先を向ける。
「作るんだよ。マスメディアを。この世界に」
─────────────────────────────────────
【あとがき】
この作品は順次更新していく予定です!
少しでも「面白そう!」「続きが気になる!」「期待できる!」と思っていただけましたら広告下から作品のフォローと星を入れていただけますとうれしいです。
是非作者のフォローもお願いします!!
読者の皆様からの応援が執筆の何よりのモチベーションになります。
なにとぞ、よろしくお願いします。
転生した異世界で新聞社を作ったらペンがチート武器になってしまった 紙村 滝 @Taki_kamimura7
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。転生した異世界で新聞社を作ったらペンがチート武器になってしまったの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます