022:不測の事態

 パトワー港に軍の兵士たちが到着して一夜が明ける。

 まだ少し霧が出ている早朝に兵士たちは装備を整え、僕たちの前に整列するのである。

 僕は全員が揃ったところで口を開く。



「おはよう! 我らが同志諸君。遂に私の悲願の日がやってきた………我らがロデベリス帝国解放の狼煙をあげるのだ! 必ずや悪帝ロデベリス3世を打ち倒すぞ!」



 僕は心の内にある想いを言葉にした。

 すると兵士たちは雄叫びを上げて答えてくれた。

 これこそが我らがアラン軍の精鋭たちである。

 その士気のまま僕は「進軍っ!」と宣言し、ストングレッグ城砦に向けて出発する。

 僕は進軍の前方から少し後ろのところに陣取る。

 後ろで指示を出すタイプじゃなく、一緒に先頭に立って戦うタイプなので定位置が、いつもここだ。



「アラン様、もう少しで城とまでは言えませんが軍事基地があります………どうしますか?」


「スタートから兵を失いたく無いしなぁ。そこの兵糧や武器の物資はどうなっていると思う?」


「アレくらいの大きさだったら、そこまで期待はできないと思います」


「そうだよなぁ………よし、そこは素通りで行こう。その次のところは大きかったよな?」


「はい。そこなら補給する価値があると思います」



 レジーヌは先導して周囲を探索している人間からの報告で、周囲に城とまではいかないが軍事拠点があると、僕に報告してくれたのである。

 しかしそこには大した物資は無いとして、そこで時間を潰すよりかは先にある城を落とした方が良いと判断して素通りする事になった。


 まぁ無駄な兵士を使って城砦に着く頃には、だいぶ減ってるなんて冗談にもならないしね。

 ここは次のところに期待しよう。


 そのまま進む事、30分くらい経つ。

 すると先頭集団が目的の城に到着した。

 そこからは手早い戦いになる。



「大将軍っ! 南門の方が開きます!」


「良くやった! 俺について来い。南門の方から、この戦いを畳み掛けて終わらせるぞ!」



 やはり12万の兵力に普通の城は太刀打ちする事ができずに、2時間ほどで陥落したのである。

 そのまま僕たちは城の中に入城する。

 その城に住んでいる市民たちからは、とてつも無い警戒した目を向けられる。

 しかしそんな事を気にしていられない。

 エルゲの指示で武器と食料を調達して、直ぐに城を後にしストングレッグ城砦に向けて再出発する。



「大将軍、食料も十分にありますし寄り道せずにストングレッグ城砦に向かってもよろしいのでは?」


「確かにそれもそうだな。無駄に時間をかけるわけにはいかないし………よし。エルゲのいう通り、ここからは真っ直ぐ城砦に向かおう」



 エルゲは僕に提案をしてくる。

 それは物資が十分にある為、もうこれ以上の城攻略はしなくて良いのでは無いかという。

 確かに必要以上の物資は逆に錘になってしまう。

 それならば、もう必要ないとして真っ直ぐ城砦に向かう事にしたのである。

 進路変更について兵士全体に伝えられる。

 この変更で想定していたよりも早くストングレッグ城砦に到着するだろうと思われる。



「下調べはしてるけど、どれだけの実力があるのかはやってみないと分からない………油断しないように、全軍に伝えておけよ? 俺たちのところで、他の2つに迷惑をかけるわけにはいかないからな」


「それは承知しております。大将軍の部下として、ここにいる人間たちは志高く奮起すると思います!」



 うんうん。

 それなら心配しなくて良いかな。

 だてにキツい修行をしているわけじゃ無いしな。


 目的地をストングレッグ城砦に定めて、一気に僕たちは進軍していくのである。

 12万も居るとは思えない程の速さだ。

 これは日々の修行や鍛錬の賜物と言えるだろう。

 しかしそんな僕たちのところに嫌な報告が入る。



「失礼します! 目的地であるストングレッグ城砦にいた兵士たちが動きました!」


「なに? どう動いたって言うんだ?」


「はい! ファビオ団長たちが居るイントゥ城砦の方に向かったと思われます!」



 面倒な事になったな。

 ストングレッグ城砦の方からイントゥ城砦の方に応援に行ったとしたら、確かにストングレッグ城砦は手薄になるのは確実だ………。

 しかし!

 僕たちがストングレッグ城砦を攻略して、帝都に侵攻している頃にはファビオと貴族たちは全滅してるだろ。

 これは早めに手を打たなければいけないか。



「それでストングレッグ城砦には、どれだけの人数が残っているんだ?」


「9万の数が出て行ったので………残るは4万と少しくらいじゃないかと思います」



 4万なら簡単にストングレッグ城砦は簡単に落とせると思う………。

 だけどそんな時間をかけている間、ファビオたちのところには合計で27万の帝国兵がいる事になる。

 それじゃあさすがに20万ちょっとじゃあ対抗するには少なすぎるか………。



「エルゲっ! バルトロっ!」


『はいっ!!!!』


「ここから直ぐに援軍を送ってやれ」



 ストングレッグ城砦には、そんな人数はかけなくても攻略する事はできるはずだ。

 それならファビオたちの方に援軍を送る必要がある。

 僕はエルゲとバルトロに、ここから援軍を送るように指示を出して直ぐに援軍に向かわせる手配する。

 エルゲたちに8万の兵士を指揮するようにいう。

 大きい返事をしてから援軍に向かう人員を分ける。



「ここの事は心配しなくて良いぞ。ストングレッグ城砦は僕とレジーヌに任せろ」


「了解しました! 我々はイントゥ城砦の方で、暴れ回ってきますよ!」



 不測の事態で想定していたよりも時間がかかった。

 明日から攻城戦を始めようと思っていたが、人員を振り分けるのに時間がかかってしまった。

 その為、予定を遅らせて明後日からの予定になった。

 しかし今からでも進軍できるところまでは進む。

 そうでなければ、これ以上の予定変更は作戦失敗の方に向かってしまう。


 やっぱり予定通りとはいかないわけか。

 でも、ここからは一手でも間違えれば即チェックメイトの事態になりかねないから気をつけないとダメだ。


 判断を間違えないように僕は覚悟をし直す。

 そして再度ストングレッグ城砦に向かって、4万の兵士を連れて進軍をする。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 時間は少し遡る。

 ファビオが貴族たちと合流した時だった。

 帝都の城では革命派の貴族たちが、次の日には挙兵すると言う情報が持ち込まれた。



「それは本当なのか! まさか今になって挙兵するなんて考えていなかった………」


「いやしかし! あんな腰抜け貴族たちが、今更になって挙兵するなんておかしいんじゃ無いのか!」



 作戦会議をする大臣たちは、貴族たちが挙兵した事に驚きを隠せずにいる。

 しかし今まで挙兵しなかった貴族たちが、今になって挙兵した理由は何なのかと怪しむ。



「失礼します。大臣たちに報告したい事があります」


「二クラス大将軍か。報告したい事とは何だ?」


「革命派の貴族たちを先導した人間が分かりました」



 大臣たちの会議にやってきたのは、二クラス大将軍だったのである。

 そして大臣たちに貴族たちを手引きした人間について説明する。

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転生したのに異世界が世知辛い 灰崎 An @akagami_no_choko

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