12.Lapis lazuli





「さむぅ」



「そんな薄着だからじゃない」



「いやー。ケーキ屋と店の往復だけやし、いけるかなって」



「こんな簡単にお店を空けて、怒られるわよ」



「ヘーキっすよ。クリスマスのこんな時間に、ウチの店来る人なんていーひんので。

どーせみんな、ピカッピカの夜景を、ギラッギラの目で見ながら、キラッキラのシャンパン開けてる頃でしょ」



「……もっと微笑ましいクリスマスの例があったはずだわ」



「それより、このケーキ楽しみっすねぇ。

やっぱサンタ乗ってるのはマストですよねっ」



「随分と楽しそうね」



「昔からイベント事好きなんすよ。

12月からは3ヶ月連続やから、特にテンションあがってマス」



「3ヶ月?」



「クリスマスでしょー、お正月でしょー、ほんで誕生日!」



「2月なのね」



「そう。俺、2月14日爆誕。まさかのバレンタイン。

まぁでも……今思えば、誕生日はワクワク半分・ガッカリ半分やったなぁ……」



「どうして?」



「家でケーキ食べられるのは良かったんですけど……

友達からのプレゼントが、大体チョコやったんです」



「あら。苦手なの?」



「いや、チョコは好きやし、嬉しいんですよ?

でもなんか……ついでって感じがするやないですか。

特別感がないというか。

女子からも『他の人よりチョコ1個多めね』とか言われるんすよ」



「あげる側は楽でいいわね」



「嗚呼、哀しきお手軽バースデー……」



「じゃあ、特別感があるプレゼントって?」



「いやまぁ、そう言われたら特に思いつかんけど……。

………………あ」



「何?」



「…………次の誕生日に欲しいのなら、思いついた。

けど、嫌がられるかも」



「じゃあ言わないで。

私があげられるとも限らないんだから」



「麗子さんにしか無理っすよ。

"物"やないんですけどね、」



「結局言う気なんじゃない」



「麗子さんと一緒に、温泉いきたいです」



「………………希望として留意するわね」



「やっぱ、ダメですか?」



「チョコレートにしようと思ってるんだけど」



「そしてチョコもほしい」



「……考えておくわ」



「やった。めっちゃ楽しみ」



「聞いてる?肯定じゃないのよ」



「まってさっむ!!!手ェかじかんで鍵開けられへん」



「……はぁ。貸してちょうだい」



「こりゃ2月の温泉街なんて、もっと寒いっすよ。

麗子さん、あったかい格好してくださいね」



「…………はい、開いたわ」



「すんません、ありがとうございます。

はーーーあったかぁ。生き返るわ。

あ、麗子さん。今日はテーブルの方座ってください」



「今回は何をするつもり?」



「とりあえず、ケーキは食後として。

その前に、コレ。

オードブルとー、サラダとー、スープもいれますね」



「これ……全て自家製……?凄いわね」



「そんで、肝心のドリンクがコチラっす」



「…………綺麗」



「でしょ!瑠璃色に調整した"シャンパンブルース"に、食用金粉入れてみました。

中々のクオリティになって満足ですっ」



「まるで"ラピス・ラズリ"ね」



「えっっっ……嬉しー。さすが麗子さん。

そうそう。ラピスの再現なんすよ。

今回は完全に見た目重視…………やから、ちょっと柑橘強なってもたかも」



「むしろ嬉しいわ」



「ほんでメインはこれ。

クリスマスといえばのチキン!」



「……ちょっと待って。豪華すぎない?」



「だって。麗子さんが、プレゼント用意したらアカンって言うから。これくらいはね」



「ここまでしてもらっちゃ、禁止にした意味がないじゃない」



「麗子さん、言ったやないですか。

俺に『期待してる』って」



「そういう意味ではなかったんだけど」



「まあまあ。ごにょごにょ言わんと食べましょ」



「……やっぱり、欲しい物なんて事前に聞くべきじゃなかったわ」



「あ。俺の希望、叶えなアカン気になってきました?

そりゃラッキー、と言いたいとこやけど。

こっちが勝手にやったことなんで、気にせんでくださいね」



「それ、余計に気になるのよ。

…………意外と策士なのかしら」



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