第5話

 それから僕はみんなにあの後のことと紅魔龍のことについて話した。

みんなは驚いていたがすぐに了承をしてくれた。

だが,それよりももっと深刻な問題があった。


『MGDワールドでバグの発生。プレイヤーがログアウト出来ない状態に。』


そんなニュース記事を見た僕は納得する。

実は紅魔龍と戦っている時に思ったのだが,普段感じるはずのない痛みをあの時は感じたのだ。


「これもしかするとログアウト出来ないんじゃなくてこのゲームの世界に転移させられている可能性が高いかもね。」


言うなればゲームの世界に異世界転移したといったところか。


「そうね。私もその説が濃厚だと思うわ。」


「これからどうする?俺たちが今最優先で考えるべきことはこの世界でどう生活していくかだろ?」


ライクの言うとうりだ。

この世界は今となっては現実なのだ。

生活できなきゃ意味がない。

この世界での死は本当の死と同じ。


「なら,紅魔龍に聞いてみるのが良いと思う。」


シアンが言う。

あの感じだと,紅魔龍は元々こっちの世界の人?っぽいからね。


「そうだね。なるべく日が落ちる前に行こっか。」



僕たちは紅魔龍のいる『紅魔の塔』へと再びやってきた。

3人は紅魔龍の姿を見て驚いていたが,すぐに本題に入る。


「なるほど。少し混乱はするが,大まかな内容については理解した。」


「やっぱりおかしなところが結構あるよね。」


そう。

いろいろと噛み合ってないのだ。

そもそも,ゲーム内で種族を作っている時点で明らかに怪しい。

そして記憶にも明らかに存在するはずのないものがある。

もしかすると…。

そう考えたところでシアンが言った。


「もしかしてなんだけど,もともとMGDの運営は私たちユーザーを異世界に送ろうとしてたとかってことはないかな?」


「そうだよね。そう考えるのが一番納得できるわ。」


やはりこの説が濃厚らしい。

僕としても運営を疑うようなことはしたくなかったが,これに関しては『狙っていた』としか思えない。

だが,決定的な証拠がない。

そこで紅魔龍が口を開く。


「そういえば,お主が帰った後に知ったのだが,今の人間の街では数百人の集団失踪が起きておるらしいぞ。」


「それって。」


「あぁ。」


全てが繋がった。

これで確実に運営が黒だということがわかる。


「どういうことだ?」


ライクはいまだに分かっていないようだ。

シアンが分かりやすく説明してくれた。


「私たちは嵌められてたんだよ。正確にいうとダンジョンに入ってから。」


「ッ!そういうことか。」


分からない人のためにも整理して話していこう。

まずは理由1の紅魔龍についてだ。

元々,紅魔龍の世界では10階層に紅魔龍がいるのが普通らしい。

だが,MGDでは紅魔龍は最下層である97階層に存在しているはずだ。

この時点ならまだゲームのバグだと思えるだろう。


だが問題は理由2の集団失踪についてだ。

正確な人数はわからないらしいが大体300人が失踪したらしい。

そして僕は紅魔の塔に入る前にセーブするために設定画面を開いている。

その時のオンラインの人数は320人だった。

そして時刻も一致している。


そして決め手となるのは僕たち自身に存在しないはずのもう一つの記憶が存在していることだ。

僕には剣士を目指す男の子の記憶がある。

他の3人にもそれぞれ記憶があるらしい。


そこから導き出される結論はただ一つ。

紅魔龍の言う…


「禁忌の術か…。」

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勘違いくんの無双日記 ぞーすい @zo_sui

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