第4話

 『あはははははは。面白いのぉ。』



 お互いの拳がぶつかり合った結果、俺が勝った。

まぁちょっとズルしたわけなんだけど…。

やっぱり長期戦になれば負けていた。

その証拠に紅魔龍は汗ひとつかいていないし、魔力も完全回復している。



「はぁはぁ。気づいてるんでしょ?」


実は拳がぶつかり合う時に紅魔龍に『鈍足魔法』をかけたのだ。

そのおかげで勝つことができた。


まぁ、気づかない方がおかしいとおもうけど…。


『まぁ、確かにずるい気もしたが、お主の力は確かじゃな。『鈍足魔法』をかけれるほどの余裕があったと言うことじゃろ?』


「まぁ、ギリギリだったけどね。」


『まぁ良い。何がともあれお主の勝ちじゃ。』


どうやら僕は紅魔龍よりも強くなったらしいです。


 それより…。


「紅魔龍はなんでそんな姿になってるんだ?」


今回は異例の事態だとも言える。

人型の魔物といえば不死人アンデット陰魔族サキュバスなどが挙げられるが、龍族ドラゴンズが人型に変身する例は聞いたことがない。


『あーそう言うことか…。そうか、お主ら人間は我らのことの全容を知っているわけではないのか。』


魔物の全容?生態のことか?


『まぁ我に勝った褒美の一環じゃ。教えてやろう。』


紅魔龍によると魔物には通常の量の魔力しか所持していない『通常種ノーマル』と通常よりも多い魔力量を所持する『亜種エンゲージ』に分かれていて、所持する魔力が多いほど知能も発達していき、スキルや魔法、種族としての地位も上がるらしい。


「そんな感じだったのか。てことは紅魔龍も『亜種』なのか?」


俺には謎だった。

たとえ紅魔龍が『亜種』だったとしてあんなにも強くなるものなのか?

龍種は紅魔龍のような『亜種』を除いたら1番上でもせいぜいBランク程度だ。

流石にあそこまで強くなるとは思わない。


『あ、言ってなかったか?我は魔王様が直々に生み出した龍じゃよ。』


なるほど。どうりでイレギュラーばっかなわけだ。


「ありがとな。そろそろ俺は帰るわ。」


さっきの戦闘で体力のほとんどを削ってしまった。話しているだけでも結構きつい…。

それに、今はシアンたちが無事か一刻も早く確認したい。


そう考えていると何やら紅魔龍が頬を赤らめて俺に言ってきた。


『そ、その。我もついて行っても良いか?』


ん?今なんて言った?俺の耳には『ついて行ってもいいか』って聞こえてような気がするんだけど。

気のせいだよね?


「すまん。もう一回言ってくれないか?」


『だ、だから!我もついていきたいんじゃ。』


どうやら魔物の中のしきたりで『負けた相手には忠誠を誓う』と言うものがあるらしい。

普段は撃破しているのでそんなことはなかったが、知能を持っていることによって人間との対話が可能となってしまったが故の面倒事である。


紅魔龍がついてきてくれるのであれば戦力は大幅にアップするだろう。

だけど一度、俺のパーティメンバーに確認を取る必要がある。


「今ここで返答をすることはできないかな。今日は一回俺だけ戻ってパーティメンバーに確認してみるよ。また明日、ここに来るからその時に返事をさせてくれ。」


『分かった。すまんな、急なことを言ってしまって。』


 そんな会話をしてから俺は紅魔の塔を出る。


そしてシアンたちを探しにギルドへと向かった。

ギルドに入ると掲示板の近くにいたシアンが俺に気付き…。


「うわーん!エレグ〜!よかったよぉ〜!」


泣きながら抱きついてきた。

ちょっと意外だっけれどシアンはまだ14歳だ。

怖がらせてしまったことに内心懺悔しながら頭を撫でる。

しばらくすると向こう側からアリスとライクが出てくる。

2人は俺に気づくと驚愕の表情を浮かべ目に涙を溜めるが、俺に抱きつくシアンを見て苦笑いしながら近づいてきた。


「エレグ、よかったわ。あなたが無事で。」


「そうだな!俺たちは戻ってから冷静になったんだが、シアンなんか帰ってから急に血相変えてずっとソワソワしてたんだぞ!」


「ちょ、ちょっと!ライクそれは言っちゃダメなやつ!」


そう言ってシアンとライクは鬼ごっこを始める。

アリスが暗い表情で俺の方に来た。


「ごめんなさいね。わたし、リーダーなのに何もできなかった。リーダー失格…。」


そう言って抱きついてくる。アリスは泣いている。

俺のパーティメンバーの女子たちは基本的に気が強かったり無表情だったりだが実はめっちゃ泣き虫だ。


「心配してくれてありがとう。アリスも頑張ったよ。リーダー失格なんかじゃない。」


アリスが泣き止んで俺を見上げる。


めっちゃ可愛い…。


「お!シアンに飽き足らずアリスにまで手を出したか!モテ男はちがうな!」


「ちょっとライク?表に出ようか?」


「エ、エレグ!まて!すまなかった!俺が悪かった!だから雷はやめてくれ!」


俺はこんな雰囲気が好きだ。



「ただいま。」


『おかえり!』

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