第3話

 僕が昔、古書館で見た『再生紀アンリミッドメモリーズ』で種族についての説明がされていた。


 今現在、この世界の約4割の人族は種族が生粋の『人間』である。


『人間』とは、全ての人族に受け継がれる種族であり、基本的にステータスの2箇所が強くなるように設定されている。

それは個人によって変わるもので僕は『魔力量』と『持久力』のステータスが人より高い。


 そして、『人間』はごく稀に変化して別の種族と混合することがある。

天使人エンジェル』、『悪魔人デビルマン』、『精霊人エレメンタリア』、『獣人ビースター』、『妖魔人ヨウマジン』の5つが基本的なものであり、これらの種族は人族のうちの4割を占めている。


 さらにそれらより上位の種族が存在する。

『聖人』、『霊人』、『豪人』、『妖人』、『鬼人』。そして僕の種族である『堕落人』の6つである。

これらの種族が生まれるのは極めて珍しいらしく、人族の2割ほどしかいない。


 古書の中には僕の『堕落人』の能力やスキルについての説明が書いてあった。


 『堕落人』は『悪魔人』の上位種で、普通の『悪魔人』よりも魔法の強さや、魔力量、そして基本ステータスにも大幅に違いがあるらしい。

『悪魔人』の上位種とあってか、魔法は『闇属性魔法』や、『血魔法』を得意としていて、ステータスは『力』と『俊敏力』の値が突飛して高いらしい。


 と言うことは、僕は『闇属性魔法』と『血魔法』も使えるわけだ。

でも今まで僕には使えなかった。

その理由が分かったような気がする。


 完全に堕ちていなかったな…。


『グギャァァァァァァァァァァァン‼︎‼︎』


紅魔龍がスキル『煉獄』の中の技である『煉雨バーンレイン』を使ってくる。

その名の通り隕石がたくさん降ってくる技である。


僕はその隕石を『堕落人』持ち前の俊敏力で避けていく。

何回か掠ったが気にしない。

紅魔龍の腹下に潜り込んで拳を打ち込む。


『グギャァァァァァァァォオ!!!!』


あまり効果は期待できないが魔法を打ち込むことには成功した。

『彩深』は魔力を原動力にして媒体を侵食する『闇属性魔法』だ。

紅魔龍もその効果に気づいているようでさっきから魔法を打ってきていない。

肉弾戦において俊敏力は僕の方が上だ。


お互い傷つきながらも攻撃し合う。


「勝った!」


紅魔龍が怯んだ隙に腹下に潜り込んで一閃!


「『血ノブラディアダグ』!!」


自分の体内の血液で拳を覆い、その血液を固める。

威力は普通の拳の3倍は出るし、温度も2000度に近い。


 だが、紅魔龍はその攻撃を受けても立っていた。


砂埃が立つ中に1人の少女の影が映る。


「は?」


『そろそろ準備運動は終わりにしようかの。』


なるほど。第二形態といったところか…。

その少女は見た目こそは可愛らしいが、そこから放たれる殺気は只者じゃないことを表している。

そして彼女の容姿には紅魔龍の特徴が少し残っている。


 真紅の瞳に漆黒の翼、トカゲのように鋭い尻尾。


「さっきまでは本気じゃなかったとでも言いたそうだね。」


口では余裕そうに言っているが、内心はとても焦っている。

おそらく相手もきずいている。


『そうじゃな。先ほどの形態お主の力を見極めるもんじゃ。お主、見たところ『人間』じゃないじゃろ。』


まじか…。そこまでバレているとは思ってもいなかった。

だが、そっちの方が都合が良い。本気で殺り合える。


「手短に済ませたいんだけど?」


早めに決着をつけないと僕が不利になってしまう。


『わかっておる。一撃で終わらせようぞ。』


そう言うと彼女は手元に魔力を溜める。

僕も同じように魔力を溜めた。

その途中で僕はとある人の言葉を思い出す。


 『よいか、魔力は闘力になる。魔力は変幻自在じゃ。闘力への変換ができた時、魔力は初めて実態を持つものじゃ。』


 僕は最初あなたが何を言っているのかさっぱりでした。

でも、今は違う。今ならわかります。


どうやら紅魔龍は闘力を習得していないらしい。


なら、僕の勝ち筋は簡単だ。


 闘力で紅魔龍よりも強い拳を打ち込む!!


お互いの拳がぶつかり合う。


 ダンジョン内は静寂に包まれたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る