第13話 Twisted Justice


私は...そのお兄ちゃんの姿を見ながら考える。

悩んでいるのにこれ以上悩ませてはならないだろうな。

思い私は家事をした。

すると横にお兄ちゃんがやって来る。

そして家事を手伝ってくれた。


「なあ。星空」

「...うん。何?お兄ちゃん」

「...お前は...どう思う」

「何が?」

「今の状況...とか」

「...私はさっきも言った通り決して許さないしね」

「...そうか」


そして私は怒る。

それから眉を顰める。

そうして沈黙するとお兄ちゃんのスマホに電話がかかってきた。

お兄ちゃんは眉を顰めながら出る。


「...もしもし。楓か」

「うん。楓だよ。分かったんだね。遂に」

「お前は天使か悪魔か。どっちなんだ」

「...どっちでも無い存在だね。...私はね。天使でもあるし悪魔でもある」

「...ふざけている場合じゃないぞ。...お前の存在価値の問題だ」

「そうだね。でもね。晴人くん。私、本当にどっちでも無いんだ。だって私がふざけすぎているのは事実だし」

「...」


私も聞き耳を立てて聞く。

すると楓さんはこう話した。


「私はどっちでもない。そして私は悪魔になれる」

「...悪魔になれるってのは」

「私は...花奏を守る為なら何でもするつもりだから。悪魔でもなれるよ」

「...」

「朧さんを洗脳したのは事実だけど。...まあそれ以上に朧さんが最悪だったってのは事実かな」

「...それ以上にって事か」

「そうだね」


それから楓さんは苦笑する様に黙る。

その間にお兄ちゃんが無口になっている口を開いた。

そして問いかける。


「...お前は護身の為にやったのか。...それをすると身をほろ...」

「知ってる。だけど私はあくまでこれをやらなければならなかった。何故なら私には花奏が居るから」

「...しかし...」

「晴人くん。君は知っていると思うけど。この世界の全てはクソッタレだと思う。だからこそ犠牲にならない正義はない」

「...」


私はその言葉を受けながら写真を見る。

その写真はお兄ちゃんに話してない...虐待の話もある。

忌まわしい記憶だが。

これを思い出してイラつく為に敢えて貼っている写真。


「...分かった。...お前の言い分は。...だけど花奏ちゃんの事を大切にするのは素晴らしいとは思う。だけどこうしてお前と...仲が切れてしまう可能性だってあった。お前は良かったのかこれで」

「言ったでしょ。私は。犠牲にならない正義は無いって」

「...」

「私は知っていた。君との仲がいざこざにいつかなるって。だけど今とは思わなかっただけで」

「...お前な...」

「晴人くん。...私は貴方が好きだよ。だけどね。...その前にやらないといけない課題が幾つかあるんだ。...まだ迷惑をかけると思うけど」

「...」


無言になる。

それから時計の針だけがこの室内に響く。

数秒してからお兄ちゃんは顔を上げた。

そしてお兄ちゃんは息を吸い込んで吐く。


「もうこんな真似は止めてくれ。お前の護身の為にお前が犠牲になるのは」

「...何故?結局私しか被害が」

「お前は気が付いてない。お前は...お前の被害は俺にも及んでいる。気が付いてない」

「...そうかな。そうは思わないけど」

「いや。俺が思う。...お前は...最低な真似をしている部分もある。...朧もクソだがお前も...若干はクソだぞ」

「...そう言われるのも仕方がないね。贖っていくよ」

「だからもう止めろ。そういうの。俺も背負うよ」

「アハハ。...そう言ってくれるのは...有難いけど。実はね。花奏はまたイジメられているみたいなんだ。転校した学校でね」

「...は?...は?!」


そしてお兄ちゃんはゾッとする感じを見せる。

私はその事を敢えて言わなかったんだが。

その事にお兄ちゃんは強い怒りを浮かべた。

それからワナワナと震える。


「...どういう事だ」

「この前分かった事なの。と同時にもう一つ分かったんだけどそっちの方に問題があってね。...実は私の花奏をずっと庇っている人が居たんだ。その子は...」

「...お前...まさか」

「実は花奏を庇っている人は星空ちゃんでね。...彼女は見えない暴力を受けている様なの」

「...一体...どういう事だ。星空」


青ざめながらゆっくり私に向いてくる。

バレちゃった...。

こんな形でバレるなんて思ってなかった。

だけど丁度良いタイミングなのかもね。


「...お兄ちゃん」

「いや。どうなって。...大丈夫なのか?お前」

「...まあ水を被ったりしているだけだから」

「...最近、学校から帰るのが早いって話はマジなのか」

「...」


すると楓さんがこう話した。

お兄ちゃんに対してお願いをする。


「変わってくれる?晴人くん」

「...ああ」

「...もしもし。星空ちゃん」

「もー。話したらダメですよ。アハハ」

「...貴方は隠しているつもりだろうけど。...貴方は...クラスメイトだけじゃなくて教員からもイジメられているよね」

「...」

「女性という存在を否定されたりとか」

「...そうですね」


お兄ちゃんは唖然としながら私を見る。

私はその姿をチラ見してから電話に戻った。

そして楓さんに話す。


「何でそれを知ったんですか?」

「...知ったのはこの前。1週間前から始まっていたそうだね」

「...はい」

「警察に訴えたよ。私。...多分そのうち、第三者委員会、教育委員会が出ると思う」

「...」

「何でそんな隠す様な事をしたの?」

「...今は忙しいだろうって思って」

「...それは良くないよ。...彼女。つまり花奏も知らなかったって相当傷ついてたよ。何でそんなになる様に仕向けたの?」

「だって迷惑がかかり...」


するとお兄ちゃんが詰め寄って来た。

それから私を見てくる。

私はオドオドしながらその姿を見る。

お兄ちゃんは私に手を振り上げる。


「...!」


そしてビンタをお兄ちゃんがお兄ちゃん自身にした。

思いっきりのビンタで出血し始める。

私は驚きながらその姿を見た。


「...え?お、お兄ちゃん?」

「何も知らなかったよ。...俺は」

「...お兄ちゃ...ん」

「...楓。有難う」

「...私は知った情報を伝えただけだから」


私を見てくるお兄ちゃん。

それから抱き締める。

強く。


「何でそんな真似をした」


そう呟きながら、だ。

私はその言葉に何も言えなくなり口を閉ざした。

それから嗚咽を漏らす様な感じの声を発した。

悲しいというよりかは...何か。

何というか何とも言えない様な感情に包まれた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

彼女が寝取られました。だがそれは1つの絶望の始まりに過ぎなかった。 アキノリ@pokkey11.1 @tanakasaburou

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ