遭遇

 これからどうしようか。

 お腹減ったなぁ…睡眠不足だし、衣食住を整えるところから、かな?


 多分だけどさ、ここって日本じゃないよね。

 いやさ、湖から上がった後かなり歩いて街に近づいたんだよ。

 そしたらさ、大きな時計台あるし、顔立ちが日本人じゃないし。

 まじかよ…

 科学者が日本人だから日本だと思ってた。

 とりあえず、日本に行くか。


 こーゆー時はくーこーにいくのさ。

 ついに前世の知識を活かす時が来た。

 覚えてることなんてほぼほぼない欠陥記憶ですけども。


 空港の場所分かんないし、金ないし、まずは情報集めかな?

 図書館行くか。


 図書館に着いた。

 な、なんと…!

〈朗報〉

 白里選手、字が読めない。


 いや、これは、詰んでるか…?

 …ん?

 翻訳コーナー?

 へー…最近の図書館は便利やな。


 えーと、今は2200年…

 僕が誘拐されたのが、2194年…

 その頃はギリギリ小学生だったから…

 18歳、だと、?

 でも僕の身体小学生の時から成長してないぞ。

 …え?

〈悲報〉

 白里選手、成人できない。


 えと、僕が誘拐されている間が6年で、その6年の間にいろんなことが起きたみたいだね。


【時間の魔人を退治】

 時間を操る魔人を10人の英雄が退治した。

 結果、報酬として1日が48時間になった。

 日時、2195年4月24日8時開始、4月26日11時終了。



 いや、まじかよ…

 どうやって時を操るやつを倒したんだよ…

 僕がいない間に、世界に何があったんだ?

 …ん?

 これ退治したのが、結構昔だなぁ…


 これさ、読んでいるとおりだとさ、老化も遅くなってるらしい、ね。

 んじゃあ、中学生活ほぼ2倍!?

 まだ、僕の友人達はギリギリ中学生ってこと?かな。


 簡単に読み進めるか。


【メモ】

 世界に魔力というエネルギーが突如発見される。


 魔力は自然と溜まり続け、魔力が膨大に溜まったところに、異常が起きる。

 例。魔物、ゲート、などなど…


 魔力に触れると人は進化する。

 体力、力、耐久力、などなど…


 冒険者ギルド、魔法者組合、とたくさんの組織が作られる。



 これぐらいかな?

 てか、空港ないみたい。


【ゲート】ってやつを代わりに使ってるらしい。

 ゲートは各国に1つはあるらしく、一瞬で移動できるため、移動手段の最先端らしいね。


 ゲートには2種類あって、1つがさっきの移動手段。

 2つ目が、異界からの召喚。

 ゲートの中では異世界に繋がっているゲートも珍しくはなく、何度かこっちが攻められたこともあったらしい。

 怖いね。


 ともかく、日本に行く手段は分かったから、密入の準備をしますか。

 いい子は真似しちゃ駄目だよ。


 ♪


「…っすぅー。はぁっー。」


 いい空気だ。

 本当に美味しい空気。

 僕は、日本に帰ってきたぞぉー!!

 黒里、見守っててくれ、僕は楽しむぞ!


 足がふらつく。

 あ、まずい。

 そういえば、何も食ってないし睡眠とってないしで、体調やばいんだった。

 目の、前に、ガ◯トが、あるっ!

 くそっ、!

 足が、もう、動かない。



「ちょ、ちょっと、大丈夫、?」


 同い年っぽい子から声をかけられる。

 赤髪のボブ…

 ボブちゃんって呼ぼう。

 てか可愛いな。

 天使、か。

 僕にもお迎えが…


「ぁ゙っ、!」


 やべ、声出ねぇや。


「とりあえずこれあげるから!食べて!水もあげるから!」


 そう言って、おにぎりと水を渡してくれる。

 僕はかぶりつく。

 うめぇ、うめぇよぉ…

 米なんて、いつぶりか…


「…親とかって何処かにいる?」


「……わからない。」


 というか、思い出せない。

 実験の副作用なのか、黒里の身体を貰って実験を受けていたときから記憶が薄れて、今はもう残ってないんだ。


「…ッ。ごめんね…」


「?謝らなくていいよ、ありがとう、美味しかった。」


 貰った食べ物を完食して、ご馳走様をする。

 これさ、僕のこと年下って思ってない?

 もしかしたら同い年か僕の方が年上の可能性があるけど…


「お粗末様。私が作ったわけじゃないけどね。ねぇ、君。髪は、染めてるの?」


「ううん、気づいたら白かった。多分前は綺麗な黒色だったよ。」


 多分、多分、黒髪のはずだ。

 どっちも可愛いからいいんだけどね。


 突如、ボブちゃんの服から声が聞こえる。


『神楽、魔物の気配がするよ。気を付けて。』


「うん、分かった。」


「その子だれ?」


「この子はね、私の相棒。私が敵と戦ううえで欠かせない子だよ。」


「?よくわからないや。」


 嘘である。

 めっちゃ知ってるである。

 確か魔力を吸収して進化した人間は、魔力霊っていう幽霊みたいなのと喋れるようになって、魔力を使って戦ううえで必要不可欠な存在。

 人間が魔力を使うには、魔力の衣を着る必要がある。


 それは、人によって形が違う。

 鎧であったり、修道服であったりとね。

 個人的に修道服は見てみたい。


 魔力の衣を作ってくれるのが魔力霊である。

 魔力霊か…僕にもいるのかな?

 いないと、僕戦えなくね?


『来るよっ!神楽、準備してっ!』


「うん!【魔力解放】。」


 ボブちゃんが魔力解放と言った瞬間、衣服が変わる。

 これは、魔女みたいな…

 これはこれでいいっ…!


 魔物が見えた。

 狼型の魔物。

 いや、これじゃあ魔獣って言ったほうが似合うと思うけど。 


『ごめん、神楽!訂正するっ!あれは魔物じゃなくて、魔獣だっ!!』


 ふふーん。

 合ってたみたい。

 でも、大丈夫かな?

 勝てるといいんだけど。


『神楽!撤退だよ!』


「駄目っ、だよ!だって、後ろには女の子がいるんだからっ!」


『でもそれだと、!神楽が死んじゃう!』


「ミルっ!応援は呼んだっ!?」


『呼んだよっ!呼んだ、けど、後3分後だって、』


「そんな短い時間ぐらいっ、耐えてみせるわっ!!」


 おぉ、すごい粘ってる。

 数字でランクづけするならボブちゃんが2。

 魔獣が4ってところだね。

 差が大きいのにすごいね。


 手伝わないのかって?

 いや無理無理。

 僕どうやって戦うのか分かんないし、手足上手く動かないし、立ち向かったところで死ぬのがオチだよ。


『…っあ!神楽!右っ!』


「っくあぁっ!!」


『神楽っ!!』


 目を離している隙にボブちゃんが攻撃を食らったみたいだ。

 まずい。

 非常にまずい。

 ボブちゃんがやられたら僕なんてけちょんけちょんだよ…


「…ごめんねぇ、みんな…約束、果たせなくて…」


「ボブちゃん、それはだめだよ。約束は果たさなきゃ。」


「……っえ?」


 やばい。

 非常にやばい。

 聞き逃がせない単語が出てきて、勢いに任せて飛び出したら、取り返しのつかないことになっていた件。

 え、どうやって戦う?


 ええい、どうにでもなれ!


「…っ、【魔力解放】!」


 僕の体が発光する。

 これは…えと、死神、?

 骸骨の被り物に、武器は両手鎌?

 汚れて、ところどころ切れている服。

 えぇ…明るい色がないよ…

 マックロクロスケだよ…


 と、とりあえず攻撃しよう。

 僕は鎌を振りかざす。

 やべ、距離足りねぇや。

 …あえ?…え?もしかして、死んだ?


 目の前の魔獣は血を流さないで事切れていた。


「…え?何、したの?」


 いや、それな?

 何したの僕。

 ノリでいけるもんだね魔力解放って。


「大丈夫?」


 手を差し出す。


「…ち、近寄らない、でっ、!」


 あぁ、拒絶されちまったぜ…

 心に凄いダメージが…


「…あっ!えっと、違うの!ごめんなさい!」


「…そう、だよね。ごめん、近寄っちゃって。」


 そうだよね…今の僕、泥水に入浴したみたいな格好してるもんね…

 誰も近寄りたくないよね…


「あ、いやっ、ち、違うのっ!」


 この子、優しいな。


「別に、隠さなくてもいいよ。みんな、そうだから。」


「………………!!!」


 ん?なんだ?

 すごい音が聞こえたような、?


「神楽ぁぁっっーー!!!!大丈夫かぁぁっー!!!!」


「神楽さぁん、無事ですかぁー!」


 2人の、魔女、?

 魔力解放のやつか。

 どっちも可愛いなぁ…

 これ、僕の姿が黒里じゃなかったら変態発言だったね。

 危ない危ない。


「あっ、胡桃と日羅。私は無事だよ。」


「よかったぁぁぁあ!!」


「良かったです!」


 とても微笑ましい。

 さて、ここらで邪魔者は退散。

 これにより、食べた物の代金を支払わないという高等テクニック。


「ところで、貴方は、?」


 まぁ、こんなところで高等テクニックを使ったら可哀想だからね。

 いや、負け惜しみとかじゃないから!

 決して、見つかってあとに引けなくなったとかじゃないから!!


「私は、」


 ……僕は、なんなのだろうか?

 幽霊だったころの僕は白里だ。

 でもこの体の名前は黒里だ。

 じゃあ、僕は、私は、何なのだろうか?

 自分は…

『今日から君の名前は、白里はくり、だ!』

 うん、そうだった。

 僕のこの名前は、黒里から貰ったものだ。


「私の名前は、白里。」


「いい名前だね!」


「ありがと。」


「白里は何処のギルドに所属しているのですか?」


「ギルド?何それ?」


 僕は知らんぷりを突き通すぞ!

 知ったかぶりは恥をかいちゃうからね。


「…えっ?ちょ、今なんて?」


「?ギルドなにそれ」


「えっ?え?えっ?」


「落ち着きなよ、日羅。まだ小さい子よ?ギルドに所属しているわけないじゃない。」


「そう、なのですか。」


 僕は首をかしげる。

 え、いや僕に聞かれても、ねぇ。

 てかそれって、僕のこと遠回りにチビって言った?


「じゃあ、私は帰るね。ボブちゃん、食べるものくれてありがとう。」


「え、さっき親いないって、」


 ボブちゃんが慌てて口を両手で塞ぐ。

 ボブちゃん、それはもう手遅れだよ…


「いいよ、気にしてないから。それに、分からないだけ。記憶がないんだ。」


「……どうゆうこと?」


 みんな悲痛な顔をしている。

 あっ、良いこと思いついたぜ。

 ここで、厨二病的なこと言ったら、悲痛な顔も変わるかもしれない。


「……そんな顔、しないでよ。そんな目で、見ないでよ。」


 僕は優しく微笑みながら言う。


 そうするとみんなは僕の考えとは裏腹にもっと深刻な顔をする。

 もう僕には分からん!

 眠いし、一回寝床見つけて、寝よう!


「…ごめんね、そろそろ時間だ。帰らなきゃ。」


「どこにっ!?時間ってなにっ、!?」


 質問攻めパーリナイだぜ。

 ごめんな、ボフちゃん。

 今の僕にはその質問に答えられるほどの気力はないぜ…

 眠いんだぜ…


「…それは、答えられない。」


「…っ!…分かった。じゃあ、白里ちゃん明日とか暇なとき会わない?お願いっ!」


 いやー、そんな事言われても…

 モテる人間は困っちゃうぜ。

 でも、僕にはやらないといけないことがあるから。


「…ごめんなさい。もう、貴方とは会えない。」


「……っっ、そんなっ、」


 ……ん?

 あっ、まずい!

 さっきの無理矢理魔力解放の反動がくるっ!


「ゴフッ、!ケホッ、!」


「「「!?大丈夫?白里ちゃん!?」」」


「ごめんね、本当に、時間がないんだ。」


 久々にぐっすり寝たいからごめんね。


「…バイバイ、」


 喉が限界を迎えていたみたいだ。

 余計な心配をしてなかったらいいけど…


 ♪


「君に決めたっ!」


 寝床は近くにあった廃虚にした。

 デコレーションして、自分の部屋にしてしまおう。

 でも、とりあえずは、


「…おやすみ、」


 眠ろう。

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闇深守護霊の成り代わり人生 @midori822

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