第21話 座学
VRMMOという仮想現実空間。
そこは、現実とは似て非なる世界。
そこでは、魔法を使うこともできる。
鍛えた腕力で、岩を砕くこともできる。
およそ、人間が想像できる事柄のほぼすべてがその空間では実現化する。
人間の想像力。
それは無限。
そのチカラが現実で反映されないのは、この3次元という
肉体という軛に囚われた、人間という存在の限界。
逆に言うならば。
物質世界という3次元から、
肉体に囚われた、人間という存在を越えられれば。
人間は、想像力で生み出される無限の能力を持つことが出来る。
ならば、越えてみればいいではないか。
さすれば、魔物の脅威からも世界を守ることが出来る。
その能力を身に着けるには。
実際に体験してみることが何より望ましい。
それに最適なシミュレーションシステム。
それが、VRMMO『ブリルリアルの栄枯衰退』である。
◇ ◇ ◇ ◇
オレの指導教官? である横山2等陸尉から受けた座学教練。
はい、いろいろとぶっ飛んでおりますな。
つまりはこの世界では魔物とずっと戦っていたと。
そして不利な戦況を打開するために、VRMMOというシミュレーションシステムを導入したと。
で、オレといろはちゃんがそのシステムに適合して覚醒、イメージのチカラというか、現実世界でも魔法を使えるようになって、イマココという事らしい。
んー、でも、なんか納得いかないんだよな。
だって、オレたちのやっていたゲーム、プレイヤーは全世界で5億越えてるんだよ?
それなのに、【覚醒】したのが同じ日本の市町村に住んでいた二人だけっておかしくね?
いや、【覚醒】はしなくとも、【適応】した人は結構いたらしいんだ。
覚醒と適合って何が違うんだって話しをすると、【覚醒】はオレやいろはちゃんのように、3次元世界の肉体の制約を超えるチカラを発揮できるようになった段階。
つまりはイメージ次第で魔法も使える存在という事。
それに対して【適応】は、仮想現実空間での能力を、肉体に適応させ同じような挙動を行えるようになった存在とでもいえばよいだろうか。
わかりやすく言うと、ゲーム内での「スラッシュ」とか「旋風脚」みたいな技を現実でも使えちゃうってことらしい。
それってどっちも同じじゃねえの? って最初聞いた時は思ってしまったが、どうも根本的に違うらしく、オレやいろはちゃんはイメージ次第で山火事を起こせるほどの火魔法を使えるのだが、適応の人たちは【火魔法Lv1】とか、仮想現実空間内での能力によって縛りがあり、また、肉体系のスキルも、例えば「百裂拳」なんかを発動させるには肉体の「硬化」や「俊敏」、「体力増強」なんかも合わせて取得していないと腕の筋肉繊維がブチッと切れたりとか、殴った拳が破壊されてしまうとか、いろいろままならないらしい。
まあ、オレはリアルでコンクリートの壁をデコピン一発で破壊できたわけだが。
そしてさらにもうひと段階、【熟練】という段階もあるらしい。
この熟練は、仮想現実世界内で、兵器とかの扱いに熟練した人のことを指していうとのこと。
まあ、戦車とか、戦闘機とかのシミュレーター操作が抜群に上手いといった感じだな。
そういえば、確かに『ブリルリアルの栄枯衰退』では錬金で現代兵器を作れたり、それを扱う搭乗スキルみたいなのも実装されていた。
まあ、ゲーム内では戦車に乗って戦うより同レベルの徒手空拳の武闘家の方が強かったりとかだったのであまり普及はしていなかったのだが、中には現代兵器ビルドで突っ走る骨太プレイヤーも少数派ながら存在していたからな。
ゲーム内でオレの拠点をB29で爆撃していった『鍵っ子たかし』はオレの敵だ。
で、いろいろ説明が長くなってしまったが、この【覚醒】と【適応】、【熟練】にはそれぞれの役割があるらしい。
その役割を説明する前に、さらにぶっ飛んだ話を聞かされたんだが聞きたいか?
そう、それは実際の戦場の話。
なんと、月の裏側で宇宙人? の侵略者と戦ってるんだってよ! 既出だけどな!
で、【熟練】の人たちは、月の裏側に持ち込んだ戦車やら戦闘ヘリなんかを地球から遠隔操作して戦っていて、それを『トランスミッション』と呼んでいるとのこと。
【適応】の人たちは、実際に月の裏側に行くらしい。
仮想現実空間での能力を生身で発揮できる彼らは、実際に自分の肉体を駆使して戦い、それは『スペースミッション』と呼ばれている。
そして、【覚醒】したオレといろはちゃんが就くことになりそうなのが『アセンドミッション』と呼ばれるもの。
存在としての次元を上昇させ、アストラル体として月に乗り込むらしい。
アストラル体って精神体の事ですよね?
幽体離脱するのかな?
そのまま戻ってこれないとかないですよね?
ということで、32歳での座学の内容は不安要素しかなかったのであった。
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