第20話 仮想シミュレーション空間
そして始まりました、32歳への座学教練。
まさか、この歳で学校みたいな机と椅子に座ることになろうとは。
そして、座学で明かされる、これまでの訓練の目的。
やはりというか、予想通りとでもいうか、ゲーム内能力を現実世界でいつでも同期できるようにするためのイメージ・トレーニング実践だったとのこと。
いや、それって通常のイメージトレーニングと全然意味違いますよね?
さらにわかりやすく説明すると、いつでもどこでもゲーム内の能力を自然に発揮できるよう深層意識にまで馴染ませることが最終目標なのだとか。
スポーツ選手でいえば、最高のパフォーマンスを思考を介さぬ反射運動で実現できる、いわゆるゾーン状態に常に入れるようにしておけとのこと。
そう言われてみると少しは納得できる。
最初からそう説明してくれませんかね?
で、何故そのイメージ力が必要なのかと言えば。
命の危険から逃れるためにとのこと。
なぜオレに命の危険が訪れるのだろう?
元介護士ですよ?
で、何故に、そんなこのオレに命の危険が発生するのかと言えば。
どうやら、この能力をもって魔物と戦うことになるらしい。
魔物ですか?
ここ現実世界ですよね?
なんかのドッキリですかね?
こんな常識から外れた回答をぶっこまれてそんな疑問を抱いたオレは正常なはずだと思いたい。
でも、常識から外れると言えば、すでにこの現実世界で魔法を使えるオレこそが常識外れである。
でも、まさか魔物と戦えと言われるとは寝耳に水。
で、簡単に言うと、オレが魔法を使えるように、魔物も存在していると。
そして戦う能力があるなら戦えと。
オレはそんな雇用契約を結んだ記憶はないぞ?
まあ、その辺もなんらかの超法規的ななんちゃらで理論武装されているのでしょうから、文句付けても仕方ないんだろうな。
なんせ、今目の前にいるのはバリバリ国家公務員の自衛官さんですし。
自衛官はウソつかないと思うんだ。
で、魔物のことについて詳しく聞いてみた。
なんでも、この日本、というか世界というか地球というか。
この世界は、100年以上も前から謎の勢力に侵攻されて脅かされているのだとか。
その謎の勢力は、我々人間とは見た目も異なる異形であり、その戦闘要員を『魔物』と呼んでいるらしい。
オレの感覚からすれば宇宙人というイメージなのだが。
で、これまでも、その魔物と世界の軍とは激しい戦いを繰り広げていたらしい。
これまで歴史で語られてきた世界大戦や各種紛争は虚構であり、『真の戦争』を覆い隠すためのフェイクであった。
地球の各国は『世界連合軍』を組織し、その日本支部が自衛隊である。
そんな一進一退の戦闘が繰り広げられる中、自衛隊にある英雄たちが誕生した。
約80年前、突如現れたその『4英傑』たちは、圧倒的なチカラで魔物を駆逐し、敵の侵攻拠点のポータルをも奪取した。
そして魔物の本拠地に逆侵攻をかけたのだが、敵の強大なる戦力に返り討ちになり、命からがら帰還した。
それ以降、戦線はじわじわと押し込まれ、今は最終防衛ラインで何とかしのいでいる危機的状況なんだとか。
世界連合軍は窮地に追い込まれている。
それでも、世界連合軍に接触してきたのは敵だけではなかった。
魔物たちも正体不明ではあるが、その友好的な存在もまた正体不明であるとのこと。
連合軍は、友好的存在から様々な技術提供を受ける。
その技術のおかげで、魔物が地球上に直接侵攻してくることはほぼなくなり、その戦闘は『戦地フィールド』にて行われることになる。
その『戦地フィールド』は、なんと月の裏に在るのだとか。
それは『戦地ブリルリアル』と命名され、シミュレーターとして全世界に配布されたVRMMOゲームの名称の元となっている。
侵攻してくる魔物は、友好的存在の技術により強制的に月の裏側にある『戦地ブリルリアル』に転送される。
だが、そのフィールドにも維持するための装置が必要で、地球連合軍はその装置を魔物の侵攻から守らねばならない。
もし、その装置が破壊されてしまえば地上は魔物であふれてしまう。
そのため、フィールド上の装置を絶対防御対象と定め、いまはその防衛戦が突破されそうなギリギリのところで行われている危険な状況。
そんな状況を打破すべく、友好的存在はさらなる技術提供をもたらす。
それは、脆弱な人間が『戦地フィールドブリルリアル』で最大の戦力を発揮できるようにするためのシュミレーションシステム。
そのシステムは、より多くの人間がアクセスできるよう、「ゲーム」という形態をとって世に広められた。
3次元という世界において、脆弱な肉体をもち、それに囚われてしまう『人間』という存在。
「ゲーム」による
それは、VRMMO『ブリルリアルの栄枯衰退』という仮想シミュレーション空間であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます