第14話 魔法披露(ゲーム内)
『プレイサグン大渓谷』。
ここは、いわゆる「狩場」のフィールドであり、薬草などの一般的な廉価収集アイテムから、若干レアな鉱石なども採取可能なほか、出現する魔物もそれなりの経験値とドロップがあるという、まさに激混みフィールドである。
そのため、オープン当初はプレイヤー同士のトラブルが相次ぎ、運営は急遽このフィールドのサーバー数を大幅に増やすという英断をした。
うん、これで経験値やドロップ絞るとかそっちの方向に調整しなかったことも、このゲームの評判を上げる一因となったんだな。
そのため、今オレ達の周辺は過疎りもせず過密もせずといった程よい感じの人の入りである。
〇友情階段:『じゃあ、敵引いてくるぞー』
さっそく、斥候職のギルマスが獲物を探しに行く。
【友情階段】さんは、『隠密』スキルで狙った敵の索敵範囲内まで近づき、『急襲』でタゲを取ってパーティーのいる所まで引いてくる。
引いてくる間も、『急襲』した得物以外の敵には『隠密』が有効になっているため、よほどのことがない限り複数の敵にタゲられることもなく、安全に狩りを続けることが出来るのだ。
引いてきた敵には【パワーボウズ】さんが一撃を入れて『挑発』をかましてタゲを引き取り、あとは【あまいじる】さんがタンクのダメージとヘイトを調整しつつ回復し、他の火力メンバーが殲滅するという流れだ。
獲物のHPが半分ほどになると、また【友情階段】さんが次の敵を引いてくるという殲滅ループ。
SPやMPが枯渇しても各々手持ちのアイテムで回復する為、この狩りが始まるとほとんど会話もなくほぼエンドレスで続いていく。
そのため、狩りの辞め時がわからなくなるという弊害があるため、事前の取り決めで誰かが回復アイテムをひと枠ストック99個使い切ったら終了という事にしている。
そして、MPバカ食い高威力魔法を連発していた【るるちゃみ☆】ちゃんが『おーわりー☆』と発言したことでいったん狩りを終了する。
〇るるちゃみ☆:『@キット:ねえねえ、ずいぶんパワーアップしてなかった?』
〇キット:『あ、わかった?』
〇あまいじる:『@キット:だね。この前より2倍くらい削ってたよね。ヘイト管理大変だったよ』
〇パワーボウズ:『@キット:ここ数日で何があった?』
〇友情階段:『@キット:まさか、ギルチャオフにして他のパーティーで稼いでいたとか?(´・ω・`)』
〇ばくれつ牛乳:『@キット:浮気か?w』
〇るるちゃみ☆:『@キット:わたしというものがありながらw』
○キット:『いやいやw。で、その件なんだけど、ちょっとみんなに見てもらいたいことがあってだな』
〇るるちゃみ☆:『@キット:なになにー?』
○キット:『えっと、ちょいと他のプレイヤーの目に触れたくないから、『エルツォイロナス平野』に移っていい?』
〇あまいじる:『りょ』
〇パワーボウズ:『おっけー』
〇友情階段:『りょうかーい』
〇ばくれつ牛乳:『うむ』
〇るるちゃみ☆:『わーい、たのしみー!(!(^^)!』
オレたちパーティーは全員そろって転移した。
◇ ◇ ◇ ◇
オレは、周りにほかのプレイヤーがいないことを確認し、魔物を一体引いてきてもらう。
ゲームのウインドウ内から『火魔法』を選択する。
魔法の威力は、えっと、検証の時どうしたっけ?
確か、イメージするだけで大丈夫だったような‥‥‥よし、派手に行ってみるか。
『火魔法(山火事)!』
山火事をイメージして、『火魔法』をタップすると――
フィールド中が業火に包まれた。
◇ ◇ ◇ ◇
〇友情階段:『@キット:説明を求める』
〇ばくれつ牛乳:『禿同』
〇るるちゃみ☆:『キットが遠くに行っちゃった‥‥‥』
やっぱこうなるよな‥‥‥。
○キット:『えっと、うまく説明できるかはわからないし、多分信じてもらえないと思うんだけど‥‥‥。あと絶対秘密厳守で。それでもいいなら説明しまふ』
オレはそう前置きしてから、これまでのことをかいつまんでパーティーメンバーに報告した。
勤務先の老人ホームの事等は、身バレ防止で伏せているし、正二さんのこともいろはちゃんのことも偽名にした。
いろはちゃんのことが話に出た時、るるちゃみ☆ちゃんがちょっと動揺してくれたのがちょっと嬉しい。いや、いろはちゃんは彼女じゃないからね!(重要)
〇あまいじる:『たしかに大規模火魔法は実際にこの目で見たが信じられん』
〇パワーボウズ:『たしかに、キットじゃなければ妄想乙で済ませたところだ』
〇友情階段:『でも、本当なんでしょう?』
〇ばくれつ牛乳:『うーん、ゲーム内の魔法は兎も角、現実で魔法使いって』
〇るるちゃみ☆:『DTこじらせたの? わたしがいるよ?』
〇友情階段:『現実の魔法も実際に見てみないことにはなー』
〇るるちゃみ☆:『よおっし! オフ会じゃー! キットの地元に集合じゃー!』
こうして、そう遠くないうちにパーティーメンバーがリアルでオレの地元に集う話が進んでいった。
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