異世界ポンコツロボ ドンキー・タンディリー(1)
紅戸ベニ
第1話 雲の高さから五人が……落ちる!
(★作者からのことば:できるだけ小学生が読めるように書いています。ここから読みはじめてもこまりません。
このすぐ前のエピソードもあります。『
※ ※ ※
「バノちゃん、お話、聞いて?」
ウインは、自分から教えることがあるということを、うれしく思っています。教えてもらうばかりではなく、少しでいいからおかえしをしたかったのです。
地球からとつぜんに
なにも知らないままやってきた異世界であっても、ウインが学んできたことが
ウインは読書好きの十一歳の少女です。
物語を読むことで、たくさんの冒険や楽しいこと、悲しいことを
それに、話したり書いたりと、言葉を使うこともできるほうです。
――バノちゃんと出会うまでも、出会ってからも、すごい
そんなふうに心のなかで思います。
乗り物の上にこしかけていると
遠くのなにもない大地はゆっくりと。近くの石や砂だらけの地面は、走りさるような速さで。ウインの乗った大きなマシンのそばを風にまき上げられた砂がうずをまいて後ろにとんでいき、
けれど、ここはウインたちのふるさとの星ではありません。異世界のダッハ荒野。人のほとんど住んでいない何千キロメートルもの
ウインのトレードマークのポニーテールが風にさらわれて、うしろにたなびきます。旅立ってきたオアシスにもどろうとよびかけるようです。
――うしろには、もどらない。
心だけ、思う気持ちだけを、前へと、遠くの空と自由な風に乗せて飛ばします。
ウインの声はとなりに座る少女にむけてつむぎだされてゆきます。
もうひとりの少女、バノが答えます。
「聞かせてくれ、ウイン。このダッハ荒野に君たちが現れた日のことを、教えてほしいよ」
バノは少女ですが、男性のように話します。
金色の
日本人ばなれした
「私は、君たちの
荒野の大地を見つめて、またウインのほうを向きました。
バノは、あとからウインたちの仲間になったので、知らないことがたくさんあったのです。
うなずき返して、ウインは、語り始めます。
わずか数日前のウインたちが体験した物語の
地球から異世界に飛ばされて来てまもなくの、命がけの
黄色い太陽が、二人の顔を照らします。
ウインは、数日前のできごとの数々を思い出しながら、少しずつ語りはじめました。
※ ※ ※
――雲の高さから落ちる人の気持ちがわかりますか。
「やだやだやだやだ、落ちる落ちる落ちる、死ぬ死ぬ死んじゃうー!」
ウインは、声をふりしぼって、雲の高さから落ちてきました。
といっても、
丸い乗り物の中に詰め込まれて、空に飛び出してしまったのです。
イメージしてみてください、
ウインを含めた五人の子どもたちは、せまい乗り物に入ったまま空高くにふき飛びました。今、何百メートルという高さから落ちようとしています。
あきらかに、命が大ピンチです。
青色にかがやく
その正体は、ベルサーム国の
人が作ったロボットのようなものに金属の板を甲冑、つまり
ウインたちが
ベルサーム国から
少し前のこと。
芝桜ウインは、甲冑ゴーレムの中で目をさましました。
「私、どこにいるの? なぜ体がふわふわしてるの?」
自分のおかれた
「やばっ、私たち、ベルサーム国から逃げてきたんだ」
まず、自分たちが悪い大人たちから追われる立場であることを思い出しました。
「しかも、
戦争の道具を
続いて、自分が空中にいることにも思いいたります。のぞき窓から見える景色は高い建物や山の上からとそっくりでした。ふわふわしているのは、ほんとうに体が
「うわっ、空中を吹っ飛んでる!」
この機械は空に浮きやすい魔法の性質を帯びています。ウインたちは知らなかったのですが、
下に広がる景色は、どこかの荒野。
「たっ、高いよ、電波タワーくらいじゃすまない高さだよ。雲の高さだよ」
考える力がもどってきました。そうなると、自分のおかれた状況がとんでもないピンチだとわかってきます。
「やばいやばいやばい、落ちて死ぬ死ぬ死んじゃう!」
お腹の下のほうがきゅうっと痛くなりました。あせる気持ちばかりがふくらんだときになる、
なんとかしなきゃ、とつぶやいてまわりをたしかめます。
ウインより一学年下の友人、
――パルミの眠っている顔もすごく美少女。この顔だけ見ていると、この子の口の悪さを
とウインはほんの
「パルミを起こさなくちゃ。ほかの子は……」
のこりの二人の男子の姿も見えました。
同級生の元気な少年、
「ねえ、トキト、起きて、ウインだよ。もしもーし!」
ウインは自分と同じ六年生のトキトを目覚めさせることにしたのです。五人の中では、ウインとトキトが最年長でしたから。
死ぬか生きるかの大ピンチを、乗りこえるために。
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