第2話
目が覚めると、そこは森の中だった。
一見不親切に思えるが、むしろこの姿で街中にでも現れたのなら即処刑ものだろう。
「さて、まずはどうするべきか」
とりあえずこの体について詳しくなろう。
まず身体の構造は手が4本、足が6本、体長は3メートル程だろうか?
軽く走ってみるが感覚が違い過ぎてすぐ転んでしまった。
ただ身体能力自体は人間の頃よりもとてつもなく高い。
あと頑丈なのか石に頭をぶつけても無傷、ぶつかった木がいくつも弾け飛んでいる。
「俺、中々やるなぁ」
もしかしたら俺は強いのかもしれない。
そう思い周囲を散策しているととある生き物に出会った。
それは俺より一回り小さい猪のような生物。
生えた牙はかなり鋭利であり、あんなのに刺されたら人間じゃ絶命間違いなしだろう。
「だが今の俺は怪物。お前ごときに負けるものか」
そうして闘いを挑んだ。
結論だけ述べるのであれば勝った。
が、結構深手を負った。
まず最初に飛び出した俺の姿を見た猪は逃げ出した。
そりゃこんな見た目をした何かを見たらあらゆる生物は逃げ出すだろう。
だが俺の速度に逃げ切れないと悟ったやつは反転し突撃。
反応できなかった俺は直撃し、猪と共に崖から落っこちてしまった。
そして位置エネルギーパワーにより俺の腕はもげ、腹には幾つか穴が空いている。
「ふぅ、致命傷で済んだな」
一緒に落ちた猪は当然のように死んでいる。
ぶつかった瞬間確かに痛みがあった為、この世界の生物は思っていたよりも強そうである。
「うーん、確かに俺は強いが、このまま生きていけるだろうか」
この見た目じゃ人間社会には紛れ込めない。
かと言って会ったばかりの猪ですらこの強さ。
もっと強い存在と遭遇すれば、もしかしたら命を落とすかもしてない。
そう考えたところで邪神の言葉を思い出す。
「そうだ、供物」
俺はいつものように儀式を行う。
儀式と言っても供物の前に座り、目を閉じ1分ほど呪詛を唱えるだけである。
「価値を捧げます。どうか、世界に破滅を」
言葉を終え、目を開けるとそこには猪の姿はなかった。
どうやらちゃんと捧げられたらしい。
すると、俺の脳内に不思議な言葉が響いた。
『レベルが上がりました』
それは聞き覚えのある言葉だった。
「なるほど、そういうことか」
前より力が湧き、傷が大分マシな部類となった。
供物を与えれば力を貰える。
なるほど、あまりにも分かりやすい。
さすがは邪神……いや、邪神様である。
「暫くの目標ができたな」
こうして俺の化け物生活は幕を開けたのだった。
◇◆◇◆
暫く森の中で過ごして分かったことがある。
まず、この森には4種類の生き物のみしか生息していない。
そう、虫すらいないのだ。
まずは最初に会った猪。
集団で行動している狼みたいなやつ。
全身真っ黒の烏のような巨大な鳥。
それとドラゴンである。
こいつらは森を四等分するかのように縄張りを持っている。
猪は基本縄張りの中でそこいらのキノコやらを食っている。
猪は個体としては力が強いが、集団行動をする知恵がないのかよく一匹でウロウロしている。
そんな猪を他の三種類が虎視眈々と狙っているという、猪君は食物連鎖の一番下にいる悲しき生物だったのだ。
と言っても猪君もよく頑張る。
狼の群れを返り討ちにすることもあるし、襲ってきた鳥を返り討ちにし食ったりもしてる。
雑食だったと知った時は俺も「食うんかい!!」と叫び襲われた記憶は新しい。
あ、ちなみにドラゴンはヤバいです。
猪君も他の連中も絶対に遭遇しないよう気を遣ってる。
ドラゴン自身も知恵があるのか積極的に縄張りから出ず、腹が減った時のみ移動している。
あれは飛ぶ災害だ。
戦おうという選択肢すら烏滸がましい存在である。
そんなわけで俺は日々みんなと和気藹々と仲良く過ごしていた。
「お、遂にレベル100になったぞ」
今日のノルマをこなした俺は遂に目標のレベルへと達した。
何故目標ニスていたかはさて置き、レベルが上がったことで得られた新たな力を説明しよう。
まず強くなった。
シンプルに身体能力や体の頑丈さが上がった。
今の俺なら例の崖に飛び込んだところでノーダメだし、ジャンプすれば100メートルは飛べる。
それから謎パワー、俺は勝手に魔術と呼ぶ力が使えるようになった。
魔術は呪詛の一部を唱えると発動できる。
使える魔術は当たれば相手を眠らせる魔術、精神に多大なストレスを与える魔術、それと敵の謎パワーを弱体化させる魔術である。
謎パワーとは何か。
それは鳥が使う謎の力のことだ。
あいつらは時々鳴き声をあげると周囲に衝撃波を放ってくる。
最初は近付くことが出来ず悩んでいた時、レベルが60になりこの魔術が使えるようになった。
レベル90になり相手のレベルが分かるようになって知ったことだが、謎パワーの鳥は軒並み他の鳥よりもレベルが高かった。
それとレベルについても色々分かった。
邪神様は俺に分かりやすいようにレベルという指標をくれたようだが、レベルが高い方が強いというわけではないらしい。
種族によってレベルの強さが違うのだ。
レベル20の猪君がレベル30の狼を倒すことなんて当たり前。
逆に同じ種族だとレベルが高い方が基本強い。
だがメスの取り合いでレベル50の鳥をレベル40の鳥が謎パワーを使って勝っていたシーンを見た。
あくまでレベルは経験値。
そういうものだと考えたわけだ。
さて、以上が俺がこれまでに学習した数々なわけだが、改めて話を戻そう。
何故俺がレベル100を目指したのか。
「同じレベルであれば種族差が決定打になる。なら試させてもらえないか?」
俺の目の前には10メートルを超える巨躯。
改めて目の前の存在が災害の一種だと確信できる出立だ。
ドラゴンはゆっくりと目を開け、俺を睨み付ける。
それは獲物を見る目とは違った。
奴らと同じ目だ。
だが逃げない、臆さない。
さすがは頂点。
「だからこそ価値がある」
化け物に転生した俺は異世界勇者の使い魔になる @NEET0Tk
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。化け物に転生した俺は異世界勇者の使い魔になるの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます