化け物に転生した俺は異世界勇者の使い魔になる

@NEET0Tk

プロローグ

俺の生まれは少し変わっているんだと思う。


俗に言う宗教と呼ぶべきものだろうか。


あるものを信仰し、儀式やら決まりが存在するよくあるものの一つだ。


だが他とはちょっとばかし違うこともあったりする。


俺は家以外の事情はよく知らないが、うちの場合はお布施としてお金などではなく、血や生きた動物が贈られてくるのだ。


「いい、奏多。命はとても大切なものなの」


それは母さんの口癖だった。


「いいか、奏多。人とは素晴らしい生き物だ」


それは父さんの口癖だった。


「「だから」」


そして二人はいつも同じことを口にした。


そんな生活を続けた人間がどうなったか、それは言うまでもないだろう。


「ふわぁ、眠」


俺の心を表すように大きな欠伸が出る。


平凡な日々。


そんな1日が始まったのだから仕方のないことだろう。


どうやら環境が特殊だからと言って、本人も特別になるわけではないらしい。


ちょっと悲しくもそれで良かったのだろうとも思う。


俺は案外この平和とやらが嫌いじゃない。


退屈でつまんなくてやるせない。


そんな世界を受け入れて初めて、人は幸せを感じることが


「できるのか?本当に?」


ッ!!


「本当に出来るのかそんなこと?」

「はい、ですので自慢ではないですが私大吉しか引いたことないんです」

「すごー。ねぇ宗介、私達も今日から神様にお祈りしよっか」

「そうだな。天奈の家にお参りに行けば更に効果がアップしそうだ」

「いつでも大歓迎ですよ」


顔を上げると、そこには男女3人がいた。


揃いも揃って美男美女。


きっと彼らの生活は俺とは違って彩られた毎日を送っているのだろう。


「眩しいな」


ここまでくれば目の保養を超えて目の毒だ。


直視してしまえば自分の愚かさに失望し、失明してしまいそうだ。


そんなどうしようもない自分に酔っていると、どうやら目の前の3人が突然慌て出していることに気付いた。


「何これ!!」

「どどどどうなってんだ!!」

「わ、分かりません!!分かりませんが、この力はまるで」


原因は直ぐに分かった。


どうやら眩しい眩しいとは思っていたが、犯人はどうやら目の錯覚ではなくあの魔法陣のようなものらしい。


パッと頭に浮かんだのは異世界転移という言葉だった。


あまりのテンプレ具合に苦笑いが浮かぶ。


もしここが物語ならばあまりにも駄作と言えるだろう。


即ページを閉じ、ゲームでレベル上げでもしてた方がまだ有意義だ。


だが現実で起きたとなれば話が変わってくるというものだ。


『平凡な日々を送りたかったのではないのか?』


心の中で何かが呟く。


あーなんかそんなことも言ってたっけな。


「ごめん、あれは嘘だ」


駆け出す。


魔法陣はまるで今にも発動しますとばかりに強く輝いている。


あの中に入れば、俺はきっと


「楽しい日々を過ごせ」

「危険です!!来ないで下さい!!」

「え?」


突然体が弾かれた。


見えない壁とでも言うべきだろうか。


何が起きたのか、それを解明するよりも優先すべきことがある。


「待て!!俺も連れて……行……」


そこにはもう3人の姿は無かった。


まるで最初からいなかったように、あれは夢だったと言わんばかりに。


「は、はは。そりゃ……そうか」


よく考えれば当然だった。


俺みたいな奴に夢くらいは見せてくれたのだ。


その夢を掴める人間というのは結局一握り。


あぁ、きっと彼らの物語は酷く美しいものなのだろうな。


だから……だから……


「壊したくなっちまった」


その瞬間、俺は両親の言葉を思い出した。


供物とは価値あるものだからこそ力があるのだと。


「ありがとう、父さん母さん」


俺は一本のナイフを取り出した。


そして


「捧げます」


俺は自身の心臓を突き刺した。























「転生、というやつだな」


邪神は無表情にそう答えた。


「あーまさかと思うが、人間だとかに生まれ変われるとは思うなよ。そういうのは別のに頼むんだな」


別の?


「お前らで言うところの神ってやつだな。アイツのせいで不自由続きだ全く」


邪神は腹立たしそうに答えた後、それ以上の回答は控えた。


「ま、とにかくお前は最も大切なもの、自分自身を捧げた。ならそれ相応のものを返すのが道理だ」


そう言って邪神は俺に新たな体を与えた。


それはあまりに醜悪で、それでいてなんとも甘美なものだった。


「気に入ったようだな。さすが我が信徒だ」


邪神が何かを呟くと、徐々に俺がこの化け物へと成っていくことが分かった。


「行く前にいくつか言っておくことがある。まずは今まで通り供物を捧げよ」


ここまでやってもらったのだ、俺も恩返しをしたい気持ちがある。


「ふっ、愚問だったな。なに、供物によってはそれなりの褒美を与える。特にあの女ならば極上だ」


あの女?


「最後、お前を突き飛ばした奴だ。あの女はアレの寵愛を受けてやがる。中々に面倒だが、もしあの力が手に入れば」


邪神は不敵な笑みを浮かべる。


「まぁ頭の片隅にでも止めておけ。あとは好き壊せ」


その言葉を最後に、俺の意識は失われたのだった。




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