"友達"「友達」
白川津 中々
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別にその人が嫌いというわけではないけれど、どうにも繋がりが煩わしく、苦しくなる時があるのです。
スマートフォンを手にしてメッセージアプリを見ますと、"友達"などと軽薄に表示されます。私はともかく、お相手がどう思っていようがもれなく"友達"となってしまうこのシステムは窮屈で息苦しく、また申し訳なくなってしまいます。私などが誰かと「友達」になれるわけもなく、覗く度に後ろめたさと罪悪感でいっぱいになるのです。
それでもこの世は私一人で生きるには辛すぎる。弱い私は心細さに耐えきれず、つい、"友達"を増やしては後悔の年に囚われるのでした。そうして、窒息しそうな自己への嫌悪に耐えられずに、表示される"友達"を一覧から全員消してしまうのです。
メッセージアプリから綺麗さっぱり"友達"の名前がなくなると大きな荷物を置いたような気になります。同時に大きな不安が胸を締め、途端に「誰かに会いたい」と、シクシク泣いてしまうのでした。
私はきっと、この先誰とも「友達」にはなれないでしょう。代わりにメッセージアプリの"友達"を増やしては消し、増やしては消し、そうしてまた同じように愚にもつかない涙を流すのです。
"友達"のいない今。「友達」のいない私。永遠に満たされないと知っているのに、私は友達を求めてしまう。寂しい。その一言が、ただ一つ胸に残っています。
私は、哀れな人間です。
"友達"「友達」 白川津 中々 @taka1212384
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