第2話



夢なのかとも思うけど川の水は冷たいし

ヒヤッと吹く風は確かに本物だ…




冷たいから早く川から出たいけど

この状況が理解出来ないし

なんとなく動くのも怖くてジッとしていると

遠くから人の声が聞こえてきた





「・・・ま……さまぁー」





近づいてくるのは女性の声で

安心してその姿が見えるのを待っていると

川横の林からガサガサと姿を表した女性を見て

更に驚いた…





なに…

なんなの…

時代劇の撮影とか?






女性と言うか…

おばさんの年齢であろうその人は

時代劇でよく見る下町の人間が着ている様な服を着て

前髪が左右真っ二つに分かれていて長い髪は緩く

下の方で束ねられていた





向こうもアタシの姿を見るなり

更に高く声を上げて

川の中へと入って来た





「たま姫様、どうかおやめくださいませ」





「・・・・・」





入水じゅすいなど…どうか…どうかぁ」





たま姫ってだれ…

じゅすいってなに…

この人、何言ってるの…





「カヨは…カヨは姫様が不憫でなりませぬ…」





ここが何処なのか聞きたいけど

何を言ってるのか分からず

とりあえず「ひめ?」と自分を指差しながら

控えめに問いかけると

目を大きく見開いた後に

「姫様」とアタシの手を両手で掴んで泣き出した




「全てはあの源氏が、忌まわしき源氏がぁ」




げんじ?

なんの話よ…





誰かと勘違いしているのか思って

何気なく視線を落とした瞬間

アタシの思考もピタリと止まった



だって水面に映っているアタシの髪は

腰よりも下にあって

色も真っ黒だったから




一昨日カラーリングしたばかりなのに…

っていうか…

髪もボブなんだけど…




自分の目に映る物が信じられず

泣き続けている女の人に

「名前は?」

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小さな恋の詩〜椎葉村の伝説〜 みゅー @myu0226

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