なんなのこいつ

J・バウアー

ウザイ女…

片桐愛悧

私の宿敵だ。

私が気になる男の子、一ノ瀬佑斗君に付きまとっている、チャラチャラした女。

薄く髪の毛を染めて、ほのかに化粧もしている。ギリギリ先生に指摘されない線を突いているところも憎らしい。制服のスカートも短めにして自分の足の美しさをアピールしているみたいだが、私の方がスタイルは上だっつうの。みっともないわ。

なぜ宿敵かというと、

「あんた、まだそんな筆箱使ってんの?ハズカシー」

とか言って、パッフィーというリスのキャラクターが描かれた私の大事な持ち物をバカにしてくる。しかも、

「休みになったら何してんの?」

とか、ズケズケと聞いてくる。図書館で本を読むのが好きと答えたら、

「うっわ~、陰キャだ~」

と人の趣味をバカにしてくる。頭にくるから無視しても、しつこく絡んできてはバカにしてくる。なんなのこいつ。

こいつのつきまといが高2の新学期から始まって、はや3ヶ月。一学期の終業式が終わって家に帰ろうとした時、何とあの憧れの一ノ瀬君が私に声をかけてきた。

「あ、あのさ。このあと、俺と一緒に図書館に寄らない?」

えっ、私、帰りに図書館に寄るつもりだったんだけど。なんていう偶然?!もちろん断る理由なんかないわ。

家に帰ると弟がうるさくて宿題が進まないから、図書館で夏休みの宿題をするらしい。これから毎日一緒に図書館で宿題しないかと誘われてしまった。キャー!

図書館に着いて席に座ると、一ノ瀬君は鞄の中から、パッフィーの筆箱を出した。わあ、私も小学生の頃に使っていたなあ。今見てもかわいい。なつかしー。

「小さいときに母親が買ってきたんだけと、愛着がわいてしまって、なかなか新しいのに変えれないんだよ」

モノを大事にする一ノ瀬君って、素敵だわ。しかもパッフィーだなんて、趣味良すぎでしょ。


素敵な夏休みを過ごして二学期になった。

あー。またあの片桐愛悧と顔を会わすのか。嫌だなあ。そう思って教室に入ると、真っ先に片桐と目が合ってしまった。夏休みの素敵な思い出が色褪せてしまいそう…

「よう。ユートとうまくいっているようだな。よかったな」

は?こいつ今、何言ったの?

「ユートのヤツ、お前のことをあたしに色々聞いてきやがんの。あたしだってよく分からないのに、ホント面倒なヤツ。幼なじみじゃなかったらケリ入れてるところよ。あんなヤツだけど、仲良くしてやってな」

そう言って私の肩を叩くと、片桐は教室から出ていった。ひょっとしてアイツ、私のキューピットだったの??

「ちょっと片桐、待って!!」

私は彼女のあとを追いかけた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

なんなのこいつ J・バウアー @hamza_woodin

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画