第45話 お嬢様と水着
ギャルこと心亜の発言で突如として始まった水着お披露目大会。
美少女たちが揃っているだけに、色々な意味でただでは済まされないと覚悟していた。だが――
「どうだった、二人とも~? はい、まずは勇生斗」
「みんな本当に良く似合ってる」
「じゃあ覚士っち」
「そうだな……みんな普通に素敵だと思う」
本当にそれしか良い言葉が思いつかない。
郡山さんと滝さんは布面積多めのワンピース型の水着で、それぞれベージュと薄桃色と若干デザインに違いはあれど、至って健全。
ビキニ勢の他三人は、凪咲は暖色を基調としたハイネックビキニ、潤さんは青紫のコルセット型、心亜は白のバンドゥビキニ。ただ、いずれもフリルやレースなどで布面積は多く、こちらも至って健全。
結論として、皆さん普通に節度ある素敵な水着でした。
さすがは守備力高めの女子というべきか。
少しでもやましいことを予感していた自分が恥ずかしい。
「それじゃ、水着お披露目が終わったところで、早速遊びに~と行きたいところだけど……」
心亜が周囲の様子を見たところで発言を中断する。
「これは順番を決めた方がいいだろ、絶対」
本当は全員で遊べれば一番いいのだが、生憎とそんな余分なスペースは存在していない。
俺の発言に全員が頷いたところで、イケメンが続ける。
「4と3に分かれるとして、各グループ一人は男子がいた方がいいよな?」
「だな」
この賑わいだ。
うちの魅力的な女の子たちに声をかけてくる輩がいないとも限らない。
イケメンの案にも異論は出ることなく、話題はどうグループ分けするかに向かう。
とりあえず、イケメンと滝さんは絶対一緒にさせないとな。そのためには。
「イケメンよ。女子3人を頼めるか?」
まずはイケメングループの枠を増やす。
それに、有事の際に俺では女子3人を守り切ることは難しい。
先輩グッジョブと、そんな感じで滝さんが見てきたので、軽く笑みを浮かべる。普通に引かれた。くそっ……!
「どうだ?」
「俺は構わないよ」
「じゃあ、それぞれのグループの定員が決まったところで……」
メンバーを決めようと言おうとした矢先、潤さんが最初に手を挙げる。
「私は当然、覚士さんとですわ!」
おい後輩よ。
潤さんを信じられないものを見るような目で見るな。
「おっ、さすが! じゃあ潤さんは覚士のグループな。あとは……」
イケメンの進行に合わせて、今度は凪咲が続く。
「それだったら、私と郡山さんは勇生斗の方に行くね」
「いいのか、凪咲?」
「ん、何言ってるの勇生斗?」
「――いいえ、何でもありません」
助けてください、先輩……
後輩からそんな声が聞こえる。本当良く態度が変わるな。
これくらいは勇気を出してもらいたいところだが、俺は心亜の方に視線を向ける。
すると、すぐに俺の意図を察知したのか、心亜はいたずらっぽい笑みを浮かべ、俺の横に来る。
「勇生斗と一緒に遊ぶのもアレだし、じゃあ私は覚士っちの方に行くね」
「ってことは、滝さんがイケメンのグループな」
心亜さんありがとう……っ!
そんな眩しい視線が後輩からギャルへと向けられる。
アシストしたの全部俺なんだが……まあいいか。
「グループ分けも終わったことだし。まずはイケメングループからな」
時間が経つにつれて混む一方なので、先に人数の多いグループを先に行かせる。そして――
「さて、俺たちは荷物番だなって――っ」
「覚士さん」
「あの、何をしていらっしゃるんですか……?」
「何をって、定番のあれですわよ?」
振り返ると、そこにはうつ伏せになった潤さんの姿があった。
※※※
定番のあれとは言うまでもなくサンオイル。
ここに来て、健全ではないイベントがやって来てしまった。
いや、まだだ……っ!
「心亜様、よかったら潤さんにこれを――」
「覚士っち、私、飲み物買ってくるよ~」
「はっ、いやちょっと――っ!?」
俺を置いて、ギャルは颯爽とどこかへ行ってしまう。
「覚士さん、早く」
そう言って、潤さんは水着の肩ひもを外そうとする。
これはマズい……っ。
「ちょ、ちょっと待った!」
「ひゃ……っ」
咄嗟に潤さんの手を掴み、俺は続ける。
「その、せめて、自分でできるところは自分で」
「い、嫌ですわ……っ」
くそっ、何かいい案は……そうだ。
「ざ、残念だな。せっかく潤さんと共同作業ができると思ったのに」
「――っ、共同作業?」
よしかかった。
「俺が自分では塗れない後ろ。潤さんは前側をそれぞれ塗っていくんだ」
「そ、それが共同作業……わ、悪くありませんわね」
「よし、じゃあとりあえず起き上がろうか」
頬を赤らめながら潤井さんは起き上がると、俺の前に足を延ばして座る。
これで潤さんの生身に極力触れずに済む。コルセット型の水着で背中が露わになる部分は殆どないからな。
「まずは首の後ろから塗っていくから、潤井さんはその間に両腕を」
「わ、わかりましたわ」
潤さんが言われた通り腕にサンオイルをつけ始めると、俺も覚悟を決めて両手にサンオイルをつける。
初めて触ったが、想像以上にヌルヌルしている。
果たしてこんなものをつけていいのかと、そう思いながら潤さんの首元へと手を伸ばし――
「ひゃ……っ」
「――っ」
潤さんの嫌らしい声に、反射的に後ろへ下がる。
「覚士さん……?」
「……」
ヤバい、今すぐやめたい。
潤さんの身体が震えた瞬間、背中越しでも豊かに実った果実が大きく揺れるのがはっきりと伝わった。
背中越しなら何とかなると思ったが、これは無理だ。
「ごめん、潤さん。俺にはやっぱりできない」
「――っ」
申し訳ない気持ちでいっぱいになりながらそう言うと、潤さんは怒りなのか羞恥なのか、頬をさらに赤くする。
「でしたら、せめてちゃんと感想を聞かせてください」
「か、感想?」
「水着のです!」
そう言って潤さんは、迫ってくる。
感想、感想か……
「その、すごく魅力的です」
「もっとちゃんと見て、具体的に!」
「――っ」
仕方なく俺は潤さんの水着を注視し、そしてある違和感に気づく。
おかしい、何か見れば見るほど嫌らしく見えるんだが……
最初見たときは布面積が多く普通に健全だと思った。
だがよくよく見ると、多い布に身体が引き締められるせいか、ボンキュッボンが
はっきりして――
「悪い、潤さん」
俺は両手で目を覆い、今伝えられる精一杯の感想を伝える。
「扇情的過ぎて、これ以上は耐えられない」
「――っ!?」
潤さんが咄嗟にラッシュガードを着て前を締める音が聞こえる。
これでようやく一安心といったところか。
顔から両手を離すと、耳を赤くして潤さんが俺に背を向けている。
「その、覚士さん」
「な、何だ?」
「少し一人になりたいので、早坂妹を探しにでも行ってください」
「わ、わかった……」
それから「感想、嬉しかったです」と小さく潤さんが呟やいたのを聞いてから、俺をこの場に見捨てた友人を探しに向かう。
そして、2人組の大学生に絡まれていると思われるギャルを見つけるのだった。
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