第40話 一学期の終わりと夏の始まり


 郡山さんとスイーツビュッフェに行ってから数日後。


 ついに、一学期の終わりとなる終業式の日を迎えた。


 終業式では校長からのありがたい長話や生活指導の先生からのこれまたありがたい話に加えて、重大なイベントがある。


「こんにちは、現生徒会長の八百三椿です。この度はこのような機会を設けていただき誠にありがとうございます」


 まずは、現生徒会役員の引退式。

 今日を境にして、東謳学園の生徒会は代替わりを行うことになる。


 現生徒会を代表して、八百三先輩が生徒会での思い出の数々と、支えてくれた人たちに対する感謝を述べていく。

 八百三先輩の言葉の一つひとつに、彼女と同じくステージ上に並んだ柴崎先輩を始めとする現生徒会メンバーたちは、すごく感慨深そうな面持ちだ。


 きっと一年後は、俺たちも同じようになるのだろうと、そう思いながら八百三先輩の話を聞き終わると、今度は新生徒会の代表として藤川がステージ上に登壇する。


「改めまして、この度新生徒会の会長となりました。藤川絢瀬です」


 自己紹介の通り、新生徒会の会長は既定路線通り藤川が担当することになった。


 そして、副会長には潤さんが選ばれ、俺と郡山さんは庶務となった。

 役職の分担を決めるにあたって、得票数の多い順に決めるという方針に従った結果で、全員納得の人事である。


「それでは最後に、至らない点も多々あると思いますが、まずは新生徒会役員一同、夏休みのオープンキャンパスに向けて全力で頑張っていきますので、よろしくお願いいたします」


 最後に、藤川らしく目の前のことに全力で取り組んでいく所存を述べ、彼女は会長としての最初の職務を終える。

 

 今彼女が言ったように、俺たち新生徒会の最初の仕事は夏休み中にあるオープンキャンパスになる。

 例年2000人以上の中学生が訪れるということもあり、事前準備はかなり大変なのだとか。

 実際、今日の放課後に早速最初の打ち合わせが控えている。


 藤川の挨拶を最後に現生徒会の引退式および新生徒会の発足式は終了。

 その後、教師陣からの諸連絡があり、全校集会は終わりを告げるのだった。


         ※※※


 終業式の後、各クラスでのホームルームを終え、長いようで短かった一学期が終りを迎えた。そして、放課後――


「それではオープンキャンパスに向けた一回目の打ち合わせを始めます」


 生徒会室に集結した新生徒会役員一同に対して、藤川がそう告げると今日の会議のアジェンダを配布する。

 中身を確認したところ、どうやら今日は今後のスケジュールおよび各自の役割分担についての確認のようだ。それにしても――


「なかなかのハードスケジュールだな……」

「そうだね……」


 スケジュールを見た俺の小言に、隣に座る郡山さんが小さく反応する。


 オープンキャンパスはお盆明けにあるのだが、それまでの間に5回ほど打ち合わせがあり、頻度としては4、5日に一回は学校に来ることになる。


 とはいえ、庶務である俺と郡山さんに与えられた仕事は、会場の設営や当日の運営といったものだけで、オープンキャンパスの計画などを行う藤川を始めとする前生徒会からの続投組に比べれば大したことはない。


「以上で一回目の打ち合わせを終わります。それでは解散」


 藤川が打ち合わせを締めくくると、役員たちは続々と帰り支度をし始める。


 その中で、俺はタイミングを見計らって郡山さんに尋ねる。


「郡山さん。この後、凪咲たちと一学期のお疲れ様会をするんだが、よかったら参加しないか?」


 参加するのは俺、凪咲、潤さんに早坂兄妹を加えた5人。

 早坂兄妹に前々から郡山さんを紹介してほしいと頼まれていたので、今回はそのいい機会だろうと思って誘った次第だ。


 郡山さんは少し考えて答える。


「お邪魔でなければ……」

「よし、決まりだな」


 5人のグループチャットに早速そのことを伝えると、早坂兄妹がテンション高めの反応を示す。

 ごめん郡山さん、二人からの期待度が上がってしまった。


 それから帰り支度を終え、潤さんと合流してから三人で生徒会室を後にする。


 これで、本当の意味で俺の高校二年生一学期は終わりを迎えた。


 明日からは、いよいよ夏休みが始まる。


 去年は美少女に好かれるための自分磨きにすべてを捧げてきたわけだが、今年はあの頃とは違う。

 本当に一体どんな夏休みになるのやら。


 まあ、そんな未来の話より、とりあえず今は――


「それでは皆さん、一学期お疲れさまでした。乾杯!」

「「「「「乾杯……っ!」」」」」


 学校近郊のファミレスの一角にて。

 俺の音頭に合わせて全員でグラスを合わせて傾け合い、俺たちは盛大に一学期の終わりと夏の始まりを祝うのだった。




【あとがき】

ここまでお付き合いいただきありがとうございました。作者の9bumi(くぶみ)です。以上で、第一部完結になります! 正直なところ、覚士くんや美少女たちが暴走するせいで本当に完結させられるのか不安になりながらの執筆(第7話くらいからプロット完全崩壊)だったのですが、皆さんの応援のおかげで何とか書き切ることができました! 本当にありがとうございます! さて第二部ですが、夏休み編になります。恐らく難航することになるとは思いますが、頑張って更新するので引き続き応援よろしくお願いします!









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