第42話 これ、どうしたら良いの?

「なぁ、コレ。どうしたら良いの?」


 花火大会も終わり、四月一日さんに過去を話して、関係性はともかく自分の人生としては一歩進もうかと決意した。


 俺の話を聞いても誰を悪く言う事もなかった。


 俺が己惚れていたとも、雅が悪い事を言ったとも。


 今の俺なら思春期故にしたのかも知れないという、選択肢もある。


 本当に好きでも何でもなかったのかは、俺にはわからんし。


 これでもしあの時本当は両想いだった……となれば、ある意味では俺の方が悪者といえなくもないし。


 でも、雅の告白拒否が俺から「好き」という感情が暴虐したのは事実。


 本人は軽い気持ちでも、受け取った方は重大だったりする。

 

 ハラスメントと同じようなモノだと思う。


 ってこんな事何度も思ってる時点で俺は女々しいのか。



 それで……話したのは良いんだけど。


 ちょっとこのままで……と、肩を貸して寄りかかって来たのは良いんだけど。


 どうしてそのままうつらうつらとして、段々ズレていって、俺の股間部分で居眠りをこくかな。


 7つ集めると願いが叶う漫画も、きんたまくら状態だ。


 四月一日さんは気付いてるのか?夢の世界に行ってるからわからないか。


 言い方を変えれば膝枕……なんだけど。


 実際は太腿なわけじゃん?腿枕って言うのが正確だと思うんだ。


「随分ハードなマニアックプレイだな。」


「穂寿美が汚され……」


「いや、むしろ俺がされてるって感じなんだけど。」


「月見里……R18にはならないようにな。」


「意識させんじゃねーよ。」


 実際頬が乗っかってるんだよ、なんでだよ。


 もし反応しちゃったら、お口の友達状態になっちゃうじゃねーか。


 浴衣からポロリ……はしねーよ。パンツ穿いてるし。


「実際コレ、どうしろって。四月一日さんが起きるのを待てって?」



「俺達邪魔みたいだし帰ろうか?」


「ヲイ。四月一日さんが起きた時に言い訳に困るだろうが。」


「まぁ、どうとでもなるだろう?」


「今日を楽しみにしてたからね、穂寿美は。一緒に屋台を回って、一緒に花火見て、ロマンチックな会話してって。」


 ロマンチックな会話はなかったような気はするけど。


「まぁ、俺も楽しかったけどな。屋台も花火も、ここでの出来事も。昨年はヤローだけで屋台巡って、適当に花火見て帰っただけだったし。」


「だぞ。俺のようなマブダチをもう少し有難がって良いんだぞ。」


「どんな時でも付き合ってくれる赤星は、本当に良いマブダチだよ。お前もその……五月七日さんとこれからは色々あるんだろうし、俺が邪魔になるんじゃないか?」


「そんなこたねーよ。」


「そんな事はないわよ。」

 

 二人同時に同じような言葉がハモった。仲は良いようだな。


「ん?だって付き合ってるならデートとかデートとかその先とかあるだろ。」


「それがまだ、清い交際なんだよ。」


「あなた達の関係よりは進んでるだけで、カップルとしてはまだまだほやほやのぴよこちゃんよ。」


 確かに俺達は恋人というスタートラインには立ってないからな。


 穴場なのか、第三者がいないのが救いだけど、今のこの場はとてつもなく恥ずかしい。


「月見里君。さっきの楽しいとかの言葉は、起きてる時直接穂寿美に言ってあげなよ。寝不足になるくらい楽しみにしてたんだから。」


「それにね、多分そういう時はダブルデートとかそういうのにはなるんじゃないかなって思ってるよ。」


 なんだ、五月七日さんは四月一日さんの保護者か何かか?


 デートに付いてくる母親か?



 花火も終わって当たりは虫の鳴き声……正確には蝉が殆どだけど、人の声は俺達だけだ。


 遠くに見える祭りの参加者達が、ぞろぞろと帰っていっている。


 あの集団がここに来る事はないけど、四月一日さんが起きてくれないと、静寂を迎える事になってしまう。


 蝉の四重奏とかでは、風物詩ではあってもロマンチックとは言えないだろ。



「それと、さっき穂寿美が囁いてた言葉だけど……私もナニもミニツケテナイヨ。」


「マジかっ。」


 五月七日さんの横で赤星は大袈裟に反応してんな。


「それを俺に言ってどうするのさ。」


「月見里君が反応して面白い事にならないかな~って思って。」


 せっかく違う事考えて意識しないようにしてたのに、このアマ……


「21時になっても起きなかったら、起こしてあげるよ。帰らないといけないしね。」


 帰るという単語が引き金となって、現実に引き戻される。


 実際楽しかったんだ、この2時間程度の時間が。


 四月一日さんが居眠りしちゃって動きは止まってしまったけど、この時間が終わらなければ良いのにと思う俺も確かに存在する。


 そんな思いが思念で繋がったのか、なんだか下の方から声が聞こえた気がする。


「帰りたく……ない。」


 うおっ。


 ぼそっと俺の股間から声が……


 って俺の股間部分に吐息が……起きてたんかーい。

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