第38話 登校日の吐露2
「あの時、赤星がいなかったら、俺は女性不振にすらなってたかもな。」
「確かに。」
俺の告白は見事に砕かれ、それを複数の女子に見られ聞かれ。
他の人に言いふらされるんじゃないかとか。
笑われるんじゃないかとか。
そして俺は雅とはもう終わりなんだとか。
色々な感情がごっちゃになって。
「堂々と最初から言われていてもショックだったろうけどさ。」
俺はそれでもきつかったろうけど。
「女子はこえーよ、女子だけが集まるとああいう会話も出るだろうな。大人の女性はもっとえげつないかも知れないな。」
赤星の言う事も尤もだ。大人にもなれば身体の関係、将来の事なんかもあるんだから、もっと複雑だろう。
年収がどうとか、包容力がどうとか、お洒落がどうとか、アレがどうとか……
「そいや、俺はお前のどの言葉で立ち直ったんだっけ。」
「ん?俺だけのおかげじゃないけどな。」
「そうだっけ?」
「お前、ある時急にさっぱりとした表情になってたじゃん。」
「そうだっけ?」
「それこそが、お前が思い出さなければならない事なんじゃ。」
最後の赤星の呟きは、風に掻き消えて良く聞き取れなかった。
「でも勿体ないよな。秋の新人戦で転んだ事といい、あの|血涙のバレンタインで気抜けしてしまった事といい。陸上部辞めちまったもんな。」
「まぁ、俺が体育祭でリレー出たの、一番驚いたのは実は赤星が一番だったりしてな。」
「実際そうだろ。授業以外で月見里が走ってるの見た事ないし。」
「雅との事があって、暫く女子との会話も全然出来なくなってたし、アレ以降女子との触れ合い自体無理だったし。」
「体育祭のフォークダンスすら不参加だったもんな。堂々と女子と密着出来る機会で、男子は狂喜乱舞ものなのに。」
「とにかく、あの時程の嫌悪感とか喪失感は今はないけど、それでもやっぱり陰で女子に何を言われてるかって考えてしまう事はある。」
「まぁ、あんなことがあったから仕方ないけど、それでも人間の心の内ってのは誰にもわからないからなぁ。多かれ少なかれああいうもんだとも思うよ。良くも悪くもそれが人間ってもんだろうしな。」
「赤星は俺の味方なのか敵なのか煽ってるだけなのかわからん事を言うな。」
「お前寄りの中立だ。」
それは中立とは言わないんじゃ。割合的な話なだけで。
「それで、話は戻ってもう一回聞くけど……」
「四月一日さんが怖いのか?」
その質問に、俺はさっき「まぁ、そうだろうな。」と答えたっけ。
「……」
「少なくとも俺には裏表を使い分けてるようには見えないけどな。色々伝える方法が普通じゃないだけで。空回りしてるだけで。」
「それ、あんまり四月一日さんの事を褒めてはないよね。貶してもないだろうけど。」
「それでどうなん?まだ怖いか?」
「……本当に怖かったら、多分海なんて行ってないだろうな。少なくとも宿泊は断固拒否してただろうな。」
「善処はしてたんだな。」
四月一日さんの事、嫌なら……
「嫌なら、あの送り迎えとか、その後の一緒に登下校とか、夏休み一緒に過ごしたりとか……してないよな。」
「まぁ、そうだろうよ。」
「健気だし、可愛いのは認めてるよ。」
そこは偽りのない本心だ。素っ気ない俺にめげずにアプローチしてる姿は、正直申し訳ないと思いながらも、悪い心地はしていない。
バタンっと扉の閉まる音が耳に入ってくる。
誰かに聞かれてた?
「風が吹いたからな、そのせいじゃね?屋上の扉建て付け悪いのか、自分で閉めきらないと最後まで閉まらないし。」
赤星の言う事も尤もだな、建て付けが悪い事は俺も知ってるし、風で閉まり切るという事もあるだろう。
「それはそうと、赤星。海の時は聞きそびれたけど。お前いつから五月七日さんと付き合ってたんだ?」
「うわっ。ヤブヘビだった。」
「……話せる時に話してくれよな。」
「お前が四月一日さんと付き合ったらな。」
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