第30話 海だ!プールだ!温泉だ!
「何で日帰りで熱海なのに、電車で乗り換え一本なのに、態々池袋で特急に乗り換えなけりゃならないんだ?」
確かに鈍行だと3時間は掛からない程度の乗車時間で、退屈だけどさ。
踊り子って池袋からも出てたんだってのも驚き、東京駅からだけかと思ってたけどさ。
検索すると、新幹線てのも出てくるけどな。
そういや熱海は箱根も近いんだっけ、観光客はどちらかといえば箱根に流れそうだな。
くじ引きで決まったのは熱海だった。
九十九里や湘南にも温泉はあるだろうけれど、熱海はどちらかと言えば温泉の方がイメージが強い。
というか、メインは海なんだから、温泉はあまり関係ないように思えるんだけど、日帰り温泉とかもあるし気にするなと赤星と五月七日さんに一刀両断にされた。
こいつら……絶対になにか企んでるよな。妙に二人の距離が急に近くなった気がする。
最初の頃は遠慮がちに接してたけど、最近では五月七日さんへの応対も近しい友達の感覚のモノへと変わってきていた。
「熱海サンビーチか。駅からバスだっけ。」
「歩いても行けるらしいぞ。」
「せっかくだから、現地の様々なものに触れたいじゃない。」
などと会話しながら電車に揺られている。
在来線から踊り子に乗り換え、ボックス席を向かい合わせにして、俺と四月一日さんが隣同士、赤星と五月七日さんが隣同士、もはや定番となりつつあるコンビ同士だった。
「そういや、なんでお前らそんな荷物多いんだ?まぁ濡れるから下着を持ってくるのはわかるし、女子は若干荷物多くなるのはわかるけど。」
「まぁ、備えあれば憂いなしって言うだろ?」
なんだかうまく躱された感があるのは気のせいだろうか。
そいえば水着の件……
あれは大変だった。
あの図書館からの帰り道、どこにそんな余裕があった?と言いたくなるけど、図書館を出たら赤星と五月七日さんが待ち構えていやがった。
そして宿題を持ったまま、俺達は近くのショップへと向かい……
「これはどうかな?」
「こっちはどう?」
着替える度に俺に見せてくる。まぁそれが一緒に買い物するって事でもあるんだろうけど。
服と違い水着なんだよ、目のやり場に困るんだよ。ぼんっきゅっぼんじゃないから、可愛い系ばかりなんだよ。
正直違いがわからん。俺が悪いのか、体形にあった衣装云々の問題なのか。
「や、これは私が流石に恥ずかしい。」
そう言いながらも見せてくるけど、それは確かに紐みたいだし恥ずかしいだろうな。
結局無難に決めてたけど、四月一日さんの隣の試着室では五月七日さんも赤星相手にファッションショーをしていた。
二人してへそ出しとか……
くそう。二人とも可愛いのは認めるよ。
「そんなこんなで着いちゃった。」
収入の少ない高校生だと言うのに、特急・指定席・歩いても行けるのにバス……
一応両親からは念のためにとお金を少し貰ってはいるけれど、出来ればあまり使いたくはない。
パラソルを立ててシートを敷いて、拠点を製作し終わる。
拠点いう言い方は少しゲーム脳というか、漫画脳というか。俺達らしい表現だ。
「日焼け止めオイル塗って欲しいな。」
「赤星は塗ってくれるよ。」
「五月七日の背中すべすべして気持ちいいぞ。」
お前らいつの間にそこまで仲良く?それに微妙にえろげの世界の住人になってるぞ。
確かに満遍なく塗るには、ブラ紐外して背中オープンしないと無理かもしれんが。
これがエロゲーの世界なら変なオイルを塗りたくるんだろうけど……俺は健全だからな。
「ひゃんっ。」
「んんっ。」
「あっ……」
俺の手が背中を滑る度に何か声を発する四月一日さん。
別にいやらしい事は一切していない。してないったらしていない。
結局は四月一日さんに日焼け止めオイルを塗る事に。
さっき赤星がやってる時、五月七日はそんな声とか表情とか出してなかったぞ。
そりゃ人によって感性とか、感覚とか違うけどさ。
お返しとばかりに、四月一日さんが俺の背中や胸やお腹や足にも塗ってくる。
変な声こそ出さなかったものの、反応したらやばいところがもう少しで元気になってしまうところだったとだけ伝えておく。
浜辺でちょっと4人できゃっきゃうふふした後、海の中へと進出した。
足がちょうどつくくらいで、とんとんしながらボールを突いてビーチバレーならぬ海中バレーを楽しんでいる。
「ぶふぉぉっ」
立ち上がって海面から出てきた四月一日さん、ちょうどへそから上だけだけど……
水着が脱げたのか、お胸がそのままこんにちはしていたのだ。幸か不幸か、正面の画像は俺にしか見えないけども!
そりゃ驚いて吹いてしまうだろぉ!
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