第27話 埋められた予定

「ファッ!?」


「あ、驚いた。」


 そりゃ驚くだろう。高校生が彼女にして貰って喜ぶリストの一つだぞ。


 膝枕、コスプレ、手作り弁当、手作りバレンタインチョコ、自分の制服の上着を掛けて照れる、相合傘、浴衣で花火、ウォータースライダーで一緒に滑る、パフパ……あ、これは四月一日さんでは無理だわ。


「むっ、今よからぬ事を想像したね。いいんちょセンサーが感知したよ。」


「なんだよそのいいんちょセンサーって。まぁ変な想像をしたのは謝るよ。ごめん。」


 一応お胸に向かって頭を下げる。

 

 そして残念ながらラッキースケベは発動せず、お胸に顔が埋まるなんてハプニングもなく。


「というか、月見里。お前全部さっきの声に出てたぞ。」


「さいてー」


 赤星に指摘され、五月七日さんからはジト目で避難される。


 それなのに、何故か四月一日さんは頬を赤らめ目を輝かせている。マジで何故だ。


「心のメモリーに保存したよ。」


 

「明日今年のバレンタインチョコも作ってくるね。」


 いや、今年のって……半年前にバレンタインは過ぎてますが?


 今年度とは言っていないから、きっと半年前の分を指してるはず。


「穂寿美、流石にそれは重い。せめて半年後に普通に今年度分として渡しなさい。本当に月見里君の事になるとポンコツなんだから。」



「じゃぁ、月見里君の今後を予約して良いかしら?夏のプールと花火と。流石にパフパ……は無理だけど。」


 1年隣にいて子供が出来ないのはおかしいとか言っていた、おかしい人の発言とは思えない。


 子供云々のための行為をするならパフパ……もするだろう。挟むのが顔なのかアレなのかは別にして。


 エロい想像は控えるけど、ビッグマックなのかホットドックなのかって話だろ。


「う~ん。夏コミに影響がなければ?俺バイトしてないからあまりお金ないし。」


 一応ウチは小遣い制だ。昨日アニメイ党で買い物もしてしまったし、一応夏冬の祭典のためにお金は貯めてはいるけど。



「月見里、バイトすれば?来年は受験か就職試験で忙しくなるし、今年くらいしかバイトする余裕ないぞ?」


「ラノベ読んだり漫研に出る余裕がなくなる。後はい……」


 おっといけない。雅の衣装作りは一応内緒だった。バレてる可能性もないわけではないけど。


「確かにバイト料があれば、もう少し色々買えるようにはなるけどな。」


 そこまでの必要性というか切羽詰まっていないというか。


 あまり帰りが遅いと、妹を家に一人でいさせる時間が増えてしまう。


 まぁ、妹も高1だし、昨年までのように過保護でいる必要もないのかも知れないけど。


「あぁ、妹ちゃんに、お兄ちゃんはそんなことしなくていいの、私が養ってあげるとか言われそうではあるな。」


「よくご存知で。」



「それで、月見里君は好きな食材や具材ってあるかな。後は嫌いなものとかアレルギーとか。」


 どうやら四月一日さんの頭の中は、俺への弁当でいっぱいのようだった。


 ナニコレ、明日からの昼食は四月一日さんお手製弁当で決まりなの?って感じで赤星と五月七日さんの方を見たけど、「諦めろ」という視線で返された。


 そんなアイコンタクトはいらんっ。


 それから、夏祭りを浴衣で一緒に花火大会とか、夏コミとか、プールとか勝手に埋められてるんだけど。


 あれ?そこまでは埋められてなかったっけ、俺も四月一日さんの思考に当てられてるな。



「プールの件だけど考えさせて。それと花火だけど、この4人でなら良いよ。他にあと数人増えても。どうせ宿題と夏コミ以外は、家で甲子園見てるかゴロゴロしてるかだろうし。」


 両親が普通の会社のように休みを取れるなら、田舎のじいちゃんちに行くとかもあったかもしれないけど。


「やたっ。」


 そうやって両手の拳を握って喜ぶ姿は、素直に可愛いと思うよ。



「それじゃぁまずは期末テストで赤点取らないようにする事だな。」


「一番怪しいのはお前だろ、赤星。」


「いや、俺も別に危ないわけではないぞ。確かに学力という意味ではこの4人では一番下だけど、平均以上は毎回取ってるからな。」


「だってほら、ラノベではこういう時主人公の男か、ヒロインの女のどっちがが赤点スレスレとかって定番じゃん。」


 送り迎えの際に連絡先を交換していたので、俺は好きな食べ物と嫌いな食べ物を書いて、四月一日さんへ送信する。


『わかった。任せて(はぁと)』という返事がきた。


 俺達、付き合ってないよな?


 俺達、男女の枠を超えたマブダチってやつではないよな?

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