第25話 鞄についたキーホルダー
「それ、学校の鞄に付け替えたんだ。」
日曜日は別の鞄に付けていた。という事は学校鞄に付け替えたという事になる。
「常に一緒にいたいし……」
「なんて?」
聞き取り辛かった。鈍感系なんちゃらとか難聴とかってわけじゃないんだけど、四月一日さんの声がちょっとくぐもってた。
「形はどうあれ、月見里君から貰ったものだし。実際は学校は毎日あるから、こっちに付けておいた方が良いかなって思って。」
「そう。まぁ使ってくれた方が、あげた方としても嬉しいけどな。」
って何サラっと嬉しいとか抜かしてんだ俺。絶対勝手に勘違いするじゃんか。
「……出来ればサイン書いて欲しかったけど。」
「なんでやねんっ。」
漫才染みたやり取りが日課になってきてる気がする。
「そういや、足はもう大丈夫なん?」
昨日も普通に歩けているように見えたし、大丈夫には見えるけど。
「あー……」
「どうして言葉に詰まるのさ。」
「だって……完治してるって言ったら、もう送り迎えという名の一緒に登下校が出来なくなっちゃうから。」
なんだ、そんな事か。
「なんだ、そんな事か。」
「なんだでもなければ、そんな事でもないよ。私にとっては重要な……」
「別に治ったからって、迎えに行かないとか、一緒に帰らないとか言わな……ってどうした。角を曲がったらゾンビの大群に出くわしたような顔して。」
女子に言うセリフではないのは分かってるんだが、四月一日さんの驚きの表情が漫画☆太郎先生みたいになってるんだよ。
これ、絶対クラスメイトはおろか、学校の誰にも見せられないよ。
なんて思ってたら、突然背中に衝撃が走ったんだけど!?
「おっはよー。」
このヤカマしい声は……
「雅。お前どうしたん、こんな時間に。高校生になって殆ど通学路で会う事なかったのに。」
俺が避けてるのか、雅が避けてるのかは知らんけど、雅と通学路で会う事は中学のあの時以来なかった。
「四月一日さん、おはよ。あとついでに真宵もおはよ。」
俺はついでか。って雅と月見里さんの接点てあったっけ?
一応、四月一日さんが漫研に入った事で、ちょっとは接点出来てはいるだろうけど。
「おはよう、掛布さん。」
「もう四月一日さんお堅いなぁ。ってそれは私もかー。ほずみんとほっちゃんとわたほずのどれが良い?」
おいこら雅、四月一日さんが困ってるじゃないか。あだ名のつもりなんだろうけど、いきなりじゃ何を言ってるのかわからないぞ。
「……|深淵を覗きし、黒き波動と赤き血潮、黒炎の流髪と双眼、黄昏の戦乙女、虚実の
おいこら、四月一日さん。なんだその中二病的な返しは。文字的には長いけど、略してエイプリルフールって。
「なんて?もっかい言って?」
「あ、なんでもないです。」
恥ずかしそうに下向いちゃったよ。四月一日さんも恥ずかしいなら言わなきゃ良いのに。
意外な一面ではあったけどさ。
「それにしても、四月一日さんも中二的発言するんだね。漫研に入ってくるくらいだから、別に驚きはしないけど。」
「おい、漫研部員が中二病みたいな言い方はやめれ。」
「確かにそうかも知れないけど、漫研の方がそういった素質持ちはいるとは思うけどねぇ。」
所謂一般人に比べたら、確かに漫研とかの方がそういった特殊な人はいるとは思うけど。
それにしても雅のやつ、ぐいぐい来るな。積極的なパワーファイター系なのは知ってるけど。
しょーもない話を繰り返しながら、気が付けばいつの間にか目の前には校門様が。
挨拶だけして去っていく、学校の生徒達とすれ違えばそりゃ学校が近づいていた事に気付いてはいたけども。
それにしてもなんだよ。四月一日さんて嫁がいながら二股?とか側室?とか言ってきた奴ら。
雅とはそんなんじゃねぇ。幼馴染ではあるけど、それ以上でもそれ以下でもねぇ。
クラスメイトであれば、俺と雅が幼馴染だという事くらいは知ってるだろうに。
「あ、そういえばそれ。ぷちめろんのアクキーじゃん。ほずみんもファンなの?」
思いも寄らぬ巨大な大砲が俺の脇腹に直撃した。
「あ、月見里君から貰ったの。」
何を素直に告っちゃってるのよ。
「ふ~ん。真宵がねぇ。」
「大方ダブって買っちゃったから、買い物付き合ってくれたお礼にとか言ってプレゼントしたんじゃないの?」
なんでそんなピンポイントで当ててんだよ。
当てて良いのはおぱーいだけだっての。
いや、それもだめか……
あ、なんか体育祭の時の事思い出してきちゃった。
「それでも月見里君からの初めてのプレゼントだから、こうして大事に肌身離さず付けておこうって。」
「さいですか。あっついあっつい。ひゅーひゅーだよ。」
「てめっ、茶化すなよ。中学一年の男子か!」
「じゃぁ邪魔者は先に教室行ってるねー。」
そう言って雅は下駄箱へと走り出し、俺達はそれを黙って見送っていた。
「そういや、あだ名【ほずみん】に決まってたな。」
なんか雅の様子がおかしかったな……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます