第15話 一緒に
「最終的に俺達奇数組が勝利か。」
奇数クラスが紅組、偶数クラスが白組に分かれていた。
クラス順位と共に、紅白別対抗もあったのだ。
クラス全体では5位だったけれど、2年の中では1番。
充分凄く良い結果だった。
2年1位という事で、担任からハーゲンダッツという御褒美も貰えた。
「現金だな、俺達。俗物だな、俺達。でも美味いから良いか。」
そんな意見が飛び交っていたけれど、無償の名誉などより、優勝したらご褒美の方がやる気が出るのだ。
高校生だから仕方がない。
「流石に1/7フィギュアは無理だったけどな。」
「お前はたかだか体育祭の賄賂に何を求めてるんだよ。」
教師達の中でも査定に近いものがあるらしく、優勝など好成績を収めた担任副担任にはプラスがあるらしい。
そのための賄賂、活力源がハーゲンダッツで吊るという手段だったわけだ。
所謂ウィンウィンの関係なので、何の問題もない……ないはずだのだが。
何故俺は肩を貸しながら委員長……四月一日さんと一緒に帰っているのだろうか。
「痛くて歩くのきつい~。」
なんて誰が聞いても罠だと分かる言葉に、クラスの連中が「月見里、お前が送ってやれ。」と言うのだ。
仲の良い女子と帰るとか、誰かが荷物を持ってやるとか、他にも色々あるだろうに。
これ、絶対四月一日さんの狡猾さをクラスメイトも既に知ってるだろ。
何人かの男子からは血涙が見えた気はするけど。
だから俺達、そういう関係じゃないってば。
だが反対しても四面楚歌になるだけだし。
担任からも、委員長同士で仲良く助け合ってくれると良い、などと言われてしまえば断る事は出来ない。
俺達が学校に迷惑をかける行動を起こす事はないと、妙な信頼もあるのだろうか。
とにかく、わざとらしく足を引きずりながら歩く四月一日さんへ肩を貸し、帰路に着いている。
良いのか?家を教えて、なんて疑問もある。
これまでの積極性に反して、四月一日さんとは帰路の最中はあまり話していない。
流石に恥ずかしいのか、なんて思ったりもしていた。
俺の方も何を話して良いのかわからなかった。
「ここで良いよ。」
四月一日さんがそう言うと、俺は顔を上げて目の前の表札が目に入る。
四月一日と表札には書かれているので、目の前が四月一日さんの自宅だと認識した。
四月一日さんが肩から身体を離すと、耳元で何かを囁いた。
「今日着てた体操服一式あげようか?」
何を言ってるのかなこの委員長は。
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