第9話 懇親会

「そこそこ上手いな。」


 俺、月見里真宵の先輩達からの評価である。


 漫研だからアニソン大会になるのは仕方がない。


 有名どころからマニアなものまで。


 


「そういえば、1年の時にはあまり目立った事してなかったけど、お前も漫画描いてるんだろ?」


 歌い終わった俺に先輩が声を掛けてくる。


 サークルも持っている先輩で、結構エロい漫画を描いている。


 勿論、R18にはならないギリギリのライン、ようするにR15な漫画だけど。


 知らないけど若しかするとR18も描いてるかもしれないけど。


 

「まぁ、一応漫研部員ですし。」



「それと、これは聞いた話なんだけど、コスプレ衣装も作ってるんだって?」



「いやなんでそんな大きな話に?そりゃ裁縫は得意な部類でしょうけど。」


 確かに作った事はある。昨年の文化祭の衣装とか……


 あ、それ以外にもあるんだけどさ。


 まさかアレが流出してるのか?



 緘口令出したのあいつの癖に。



「いや、冬コミでな。ちょっとコスプレブースいったんよ。そしたらたまたま部員に会ってさ。」


 その部員……掛布雅かけふみやびは俺の幼馴染だ。


 高校ではヲタ仲間と思われるのは嫌だから、必要以上にコンタクトは取らないでと言われている。


 そのくせ、結果的に同じ漫研に入っていたりはするのはどういう事だという話ではあるけど。


 何故か中学の頃からあいつの衣装は俺が作ってる。


 そして何故かちょっと際どい衣装でも、文句言わずに着ている。


 そりゃ自分がこのキャラやりたいと、制作要求してくるのだから、文句など言わせないが。


 既製品ではないのは、見る人が見ればわかっちゃう事だけど、上手い事誤魔化しているという話だったが……


「問い詰めた俺も悪いんだけどさ、お前が作ってるって話だったからさ。」



「あ、いや。まぁ確かに俺が作りましたけども。」


「いやー、すげぇな月見里。ヤホオクに出てるやつより良い出来だよ。エロ可愛いかったもん。」


 もんって……高3の男児が。


「あまり他言はしないで欲しいですが、一応雅は幼馴染なんで。あいつから口止めされてますけど。」



「その辺はお前らの問題だからツッコミはしないけど。そういや、2年からの新部員の四月一日とはどういう関係?なんか超ラブコメ臭がしてくるんだけど。」




「なんのこっちゃですか。ぐいぐい来る委員長と、素直になれない幼馴染って事ですか?


「いや、何もそこまで言ってない。ナニ、あの四月一日って委員長でぐいぐい来る系なん?」


 あ、しまった。四月一日さんが委員長なのは、学年が違えば知らない事だっけか。


 それにグイグイ来るとか知ったのも俺は今日の事だし……


「まぁ、それもそっちの問題だから良いか。部室はヤリ部屋じゃないからな。そこは気を付けるように。」



「そんな事しませんよ。これでも俺まだまだ魔法使いになる素質は持ってますんで。」


「あ、30歳まで童貞魔法使いね。それは俺達もだな。」



「漫研て良くも悪くも漫画やゲーム、ヲタクコンテンツに沼った奴らの集まりだからな。色恋沙汰よりは推しに注ぐタイプが多いけど、興味がないというわけじゃないからな。」



「まぁそうでしょうね。」




「月見里がコスプレ衣装を作れる貴重な戦力、という事がわかっただけでも儲けもんだ。」


 何か恐ろしい言葉を先輩が言っていたような気がした。


「何か言いました?」


「別に。」 


 すっとぼけているけど、確かに言った。戦力と。




 そして最後に俺達男子部員達は全員で「絶唱」した。


「お前のファルセット凄いな。」


 最後に先輩からそう言われた。

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