第8話 漫研
「今年も席はおける事になってよかった。」
部活に変更がなければそのまま継続のため、初日はとりあえず顔出しという名目で部室に顔を出してみた。
数人の3年生の先輩がいて、既に軽くなにやら活動をしているようだった。
漫画を描いてる人、漫画を読んでる人、ただくっちゃべってる人……
まぁ運動部と違い、大会があるわけでも……いや、あるんだけどさ。
運動部程熱血にというわけではないというのが正確か。
何でも甲子園とつけるのはどうかと思うけど、一応漫画甲子園ってのもあるし。
一部の部員はサークルを持っていて、コミケに限らず即売会とかに漫画を出したりしている。
小遣いだけじゃ足りないからと、バイトをしてる人もいるし、勉強も当然してるのに、よく漫画を描く時間があるなと思ってるくらいだ。
「入部届出してきました。今年からの入部となりますがよろしくお願いします。」
部室の扉が開いたと思うと、開口一番挨拶をしてくる四月一日さんが背後から聞こえてきた。
俺は部室に入った時、扉を閉めていた。
つまりは部室内を見渡していた少しの時間の間にやってきたという事だ。
「おぉ、女子の入部大歓迎。」
「よろしくねー。」
「R18はないから安心してね。隠してどこかにあるかもしれないけど。」
先輩達が新たな部員に歓迎の様子だった。
ゲームだかアプリだかをやっている先輩は、一瞬顔を向けただけで再び画面に戻っていった。
「あ、これ。ファントムーエターナル魔戦の系譜のリメイクじゃないですかー。」
なに?
例の隣接ユニットがくっついて二部で子供が活躍するあのゲームじゃないか。
正確には昔家庭用ゲーム機であったやつのリメイク版みたいだが。
「あ、先輩はその組み合わせなんですね。やっぱり二部で縛りプレイするなら王道じゃつまらないですよね。」
あれ?四月一日さん。思っていたよりヲタクなのか?
そりゃそうか。あんなのを真に受けて子供が出来るとか思い込んでるくらいだし。
「なんだ後輩。意外と沼にハマってる系?」
両親のスキルを継承する二部のキャラ達は、その両親の組み合わせによって様々な使い道がある。
四月一日さんと先輩が言ってる組み合わせは、主人公達ではないけれど、二部で主人公と戦争を共にする仲間の一人になるキャラの事だ。
素早いユニット、移動範囲の多いユニット、攻撃力の高いユニット、魔法が高いユニット……それらは当然様々な場面で使い勝手が良い。
だが、この先輩が今隣接させてるユニット達の子は、移動距離少ない、鈍重、攻撃魔法0とメンドクサイキャラになるのだ。
しかし、その反面、最後まで成長させれば、カウンターほぼ100%、クリティカルほぼ100%という浪漫キャラなのだ。それもなぜか直接攻撃・魔法攻撃問わずという不思議。
ラスボスである、NTRによって生まれた敵王子のやべぇ魔法すらカウンターしてしまう、ある意味ぶっ壊れぷり。
もっとも、相手が自分のところまで来なければならないという条件がある。
大抵はその前に、プレイヤー側が攻めていくために、敵がそのキャラの元に辿りつく事はない。
最後まで成長させられれば……な。
移動距離は1歩、攻撃魔法はない、そんなキャラをどうやって最後まで成長させろと?
だからこそのカウンターとクリティカルによる一撃死なわけだけど。だからこその浪漫キャラなんだけど。
「多分私はこの二人の子みたいなもんなんだろうな。」
何となく呟いた四月一日さんの声が聞こえてきたぞ。
「え?なになにー。何か青春してる?」
ゲームをプレイしながら、四月一日さんの方を見向きもしないで先輩が答えていた。
「スタートラインにすら立ってなかったみたいですけどね。」
もしかして、こういう何気ない言葉を振りまいて外堀を埋めてきていたのだろうか。
「じゃぁこの後女子会するかー。」
ゲームをプレイしていた先輩が他の女子の部員を誘っていた。
「それじゃぁ俺達は男子会するか。部員の親交を深める意味でも。」
こうしてカラオケに連れていかれる事になった。
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