第6話 そういうわけで2年生もよろしくね。

 納得のいっていない表情の四月一日さん。


 でも正論を突きつけてやった。


 そういう事セックスをしていないのに、デキるはずがないと。


 あれはゲームだから、子供もプレイするゲームだから、そういうのを省いただけだと。




「確かに保健体育の授業でやったわ。」


 今思い出したかのように、手をポンと叩く委員長キャラの四月一日さん。


 その仕草は確かに可愛いんだけど、可愛いんだけどそうじゃない。


 そりゃ好きか嫌いかの二択なら好きに分類されるけど。

 

 可愛いか可愛くないの二択なら当然可愛いんだけど。


 四月一日さんには悪いけど、俺にはその隣接ユニットが勝手に好感度あがって、気が付けば恋人になって子供が出来るルートにはないんだ。


 絡みの少ないクラスメイトよりは、話しやすいし委員長副委員長の関係もあって、仲が良いとはいえるだろうけれど。





「月見里君。これから親密になりましょう。具体的には子供が出来る行為をするくらいには。」


 椅子を一歩横にずらして身体を真横につけてきた。



「もう何言っちゃってんの?本当に委員長と同一人物?成績トップから数えた方が早い四月一日さん?」



「穂寿美って呼んで。私も真宵君って呼ぶから。」


「いや、話聞かねーなオイ。」



「あははー、諦めな。穂寿美のこの性格というかキャラ。わかってなかったのは月見里君だけだよ。」


 肩に手を置いて、諭すように言ってきたのは四月一日さんの親友、同じ中学出身おなちゅう五月七日つゆり佐祐理。


 委員長の表向きな姿とは反対で、明るすぎる陽キャだ。ただしギャルではない。


 髪の毛も別に染めてるわけでもないし、JK故に多少なりともメイクしたり爪を綺麗にしたりはしているけれど。




「穂寿美は普段は真面目で優等生だけど、良くも悪くも真っすぐ一直線。穂寿美が月見里君一直線なのは……クラスの人は知ってるよ。」


 何その好感度マックスだから俺がOKすれば、完結みたいな状況。


 え?俺以外は知ってるって……どういうこと?



「おっと、これ以上は内緒。じゃないと恋愛は盛り上がらないからね。あ、そうそう。それでも穂寿美を好きな、良いなと思ってる男子は多いから。この意味わかるよね?」



 そういや、四月一日さんが男子からの告白を断ってるというのは何度も聞いた事があるけど。


 誰か好きな人がいるのか、恋愛に現を抜かしている暇はないとか、そういうのだと勝手に思ってたけど。




「おまえら席につけー。始業式の前のホームルームだぞー。」


 クラスメイトに変動はないといっても、席が初期にリセットされたとはいっても、学年の始めだからか教室内はわいわいと賑わっていた。


 だからこそ、俺達の会話も少し離れたクラスメイトには届いてないし、ただの雑踏と化していたはずだ。



 その多くの雑踏をかき分けるように、今年も担任となる葛西稔かさいみのり(27歳)が教室に入ってくる。


 後ろ側の入り口からは、副担任の遠山奬子(27歳)先生も入って来た。


 うん、この遠山先生はあれだ。


 一部の間ではゴジラキラーと呼ばれている先生だ。


 うちのクラスにも背が高くゴリマッチョで、ちょっとヤンチャな松井秀季まついひできという生徒がいるのだが、1年生の時真人間に戻されている。


 いや、ヤンチャは変わらないが、他人に迷惑をかける事はしなくなった。


 

「流石に新委員長とかを決める時間はないので、始業式のまとめは前委員長と副委員長に任せる。始業式後に新たにその時間を設けるからなー。」


 良くも悪くも生徒に近しい葛西先生。


 生徒に媚びるわけでもなく、上司に媚びるわけでもなく。


 そのせいか口調がこんな感じだ。


 頭ごなしに命じるわけでもないし、フレンドリーすぎるわけでもなく。


 何が言いたいかというと、生徒としてはやりやすい良い先生という事だ。



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