第5話 まだまだ回想させられる

「う~ん。蔵王に行った1年生のスキー旅行な。林間学校みたいなやつ。」


 バスの席は確かに隣だった。


 でもそれは委員長と副委員長だから、という理由だったような。


 でも別に四月一日さんがバス酔いして、エチケット袋を差し出したとか、背中をさすったりしたというイベントはなかった。






「高い所が怖い私に手を差し伸べてくれたじゃない。」


 そう言われて思い出す。


 確かにリフトは四月一日さんと一緒に座った。


 先生の要らんお世話のせいで、男女ペアで乗る事が義務付けられていたからだ。


 バスの席同様に、委員長・副委員長を除きくじ引きで決められたペアで。


 確かに震える四月一日さんの手を握ってリフトに乗ったさ。


 怖いというから勇気付ける意味でも。


「そんなんで好感度あがるの?」


「あがる。」


 そうですか。


 そういや、雪の塊に突っ込んで抜けなくなって、救出した事はあったっけ。


 あの時も変なとこ触ってごめんとか言った気がする。


「ちゃんとラッキースケベもあったじゃない。」


 いや、それは思い出させないでくれ。


 他の女子からもケロヨンボンバーという反撃を受けてるんだから。


 先生からは正座させられるし、他の男子からは自分だけ羨ましがられて、暫くポカポカ叩かれたりプロレス技かけられたりしたんだから。


「決して覗きではないからな。先生に頼まれて呼びに行ったら不幸な偶然がたくさん絡み合っただけだからな。」


 キャーという大きな声が複数上がったら、何かあったと思うじゃない。


 大丈夫か!とちょっと脱衣所に顔出しただけじゃない。


 なんで態々大浴場に戻ってケロヨン持って投げてくるのよ。


 それに誰一人裸はいなかったじゃん……ってそういう問題ではないか。


 あぁ、そういえば四月一日さんだけは裸にタオル一枚で隠してるだけだったか。


「なんか虫がいて女子がパニックになっちゃったから、あれは仕方ないし。ラッキースケベ枠だと思うよ。」



 もう四月一日さんの性格が分からなくなってきた。好感度が低かったら袋叩きだったのか?


 

「私からすれば、あのスキー旅行は月見里君の良い所ばかりだったよ。便りになるというか、ヒーローというか。」


 だとしても、自分にはそんな意志、微塵もなかったんだけどなぁ。


 そりゃ、知らぬ所でヘイトを貯めて嫌われるよりは良いけど。


 3年間一緒のクラスメイト達なんだ。嫌われるよりは好かれる方が良い。


 例え目立たずいたいと思っていたとしてもだ。



「そういや、回想にそれぞれ友人が全然登場しないな。」


「テンポ良く思い出して欲しいからね。」


 俺にも四月一日さんにも、仲の良い友人はいる。


 それこそ、昼食を一緒に食べたり、放課後一緒に遊んだり、恋愛相談したり……



「それで、最初に戻るけど。これだけずっと隣にいて、(私の)好感度も高いのに。なんで子供が出来ないの!」


 先程生理の話をした時には流石だなと思ったんだけど……


「生理についてあれだけの事が説明できるのに、子供の事になるとなんで急におこちゃまになるんだ?」


 

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