お出かけ
目を覚ますと、眼の前にティアがいた。
僕は嬉しくなって。
「おはよ、ティア」
と笑った。
「オハヨ?」
「うん、おはよう」
「オハヨ、アンリ」
「おはよう、ティア〜」
僕は、嬉しくなったので、調子に乗って、ティアを両手で包みこんでプニプニして弄んだ。
「あ、あ、アンリ~~」
「あはははは♪ ティア〜〜」
ティアが可愛い。
寒期に入って、雪が降るのうになった。餌は収納庫にたくさん貯蓄してある。家でティアと一緒にいる時間が長くなった。
そのおかげもあって、ティアが言葉を少しづつ理解してくれるようになった。
身体も徐々に大きくなっている。もう枕くらいの大きさにはなっただろうか。
「ティア」
「なに、アンリ」
「お出かけ、しよっか!?」
「お出かけ、する!」
「よし! じゃあ、リュックを取って来よう」
「ティア、待つ!」
僕はティア用のリュックを用意すると、ティアに中に入ってもらった。
僕も防寒着を着込んで、リュックを体の前に抱えた。ティアが寒くならないように、魔法石で保温している。おかげで僕も少し温かい。
「さあ、ティア、行こう!」
「アンリ、行こう!」
僕たちは意気揚々と家を飛び出した。
何処に向かうかは秘密だ。
王国の外は一面の雪景色だ。見渡す限り真っ白で眩しいくらいだ。そして寒い。
森の街道に入るまでは、吹きっさららしの風で前に進むのも大変なくらいだった。
森に入ると風の影響もなくなり、眩しさも少し和らいだ。代わりに気温は少し低めだ。
冬眠を知らないゴブリン共がうろちょろしているが、知ったことではない。森や山に餌が減ったせいでかなりしつこいが、僕はティアが傷付かないように、リュックを守りながらズンズンと森を進んだ。
森は次第に傾斜がきつくなり、進むにつれて樹高が低くなってゆく。そうだ標高が上がっているからだ。木の代わりに雪が積もった岩肌が目立つ様になり、足元もゴツゴツとした岩場になって、雪で見えないので歩きにくい。
僕は躓かないように慎重に歩を進める。転んでティアを押し潰したくはない。
登山途中、樹齢千年はあるであろう大きな枯れ木が立っている。その大きな枯れ木の根元に大きな洞穴がある。この洞穴を知っているのは騎士団くらいで、立ち入り禁止となっている。洞穴の中は魔物の住処となっているので危険だと、立て看板を立てて警告している。
僕は構わず、雪をかきのけて洞穴の中へと足を踏み入れた。
「人間だ」
「人間が来た」
「デカいぞ」
洞穴の奥からヒソヒソと声がする。暗闇の中に彼らのものと思われる目がキラリと光に反射して、周囲をとり囲まれた。
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