フレデリカ②
「これ、スライム……ですか? 白いって珍しいですね? それに今何か喋ったような?」
「いやっ! そんなわけ無いだろう!? スライムだぞ!?
ま、まあ、これは僕の趣味なんだ。悪い、食事中のテーブルなんかに置いておくなんて無粋だったね! 向こうに置いてくるよ!!」
と、言い捨てて僕はミルクの入ったガラス容器を隣の部屋へと運んだ。本当はミルクに申し訳ない気分でいっぱいだったのだが。
「ミルク、ごめんね? 少しここにいて?」
「ごめん? アンリ、悪い?」
「……そうだな、僕が悪い。君に淋しい思いをさせてしまう。だから、ごめん」
「さみ、しい? ミルク、さみしい……わかった、ミルク、だいじょぶ」
「ありがとう!」
僕はミルクをフワっと撫でると、少し笑いかけて戻った。
「ごめん、お待たせ」
「い、いえ! そんなとんでもないです!」
フレデリカはそう言うと、柔らかく笑った。……少し落ち着いてきたかな?
「そう言えば、怪我はどう? 何処か骨とか──」
「──あ、アンリ様のお陰で、切り傷くらいでしたが、あ、あわあわ、アンリ様の腕が折れていたとお聴きしましたが、だだだ、大丈夫でしょうか?」
「ん? ほれ、大丈夫だ」
僕は腕をプラプラさせて、治った事をアピールする。
「良かったですぅ〜」
何だこの娘?
「ところで、団長は元気か? こないだは逃げるように去ってしまったからな……挨拶もなしに愛想無しだったと思ってる」
「団長はアンリ様が見えたと聴いて大急ぎで城門まで駆けつけたのに、会えなかったものだから、五体投地の格好でうなだれたそうですよっ!?」
「五体投地……そうか、悪いことをしたな?」
「いえっ! そのうち家に会いに行くと仰ってました! あ、そうそう! これ、私と騎士団の皆さんからの差し入れです!!」
と、フレデリカさんが、何かしらの小包をくれた。
「え……ああ、ありがとう。団長は来ていらないかな……」
「……へ?」
「いや、何でもない」
「あ、あの……不躾なことをお聴きしますが、あ、アンリ様は、こんな広い邸宅に一人住まいなんですか?」
本当に不躾だな?
「まあ、そうだが?」
「あのお……そのお……」
何かものすごくモジモジしてやがる。
「何かお困りな事はありませんか!?」
こいつ……今度はワクワクしてねえか?
「何も困ってないが?」
……おいおい、今度はすっげえ落ち込んでんじゃねえか……。なんだコイツ?
「フレデリカさんだったっけ?」
「はっ、はい! フレデリカです!」
「うん、フレデリカさんはあの日、どうして渓谷を落ちたのさ?」
「あの日、私は鉱山周辺の魔物討伐部隊に所属していて、周辺を小隊ごとに討伐して回っていたのです。そうしたら、渓谷の下に魔物がたくさん集まっていたんですよ。私、スタンピードの前触れか何かだと思ってジッと見ていたら、足元を踏み外しまして……あとはご存知の通りです」
「……なんかスマン」
「えっ!? 何でアンリ様が謝られるのです!?」
「そのスタンピードもどき、僕なんだ……」
「へっ!? またまた〜! そんな冗談通じませんよ!? あはははは〜」
そう言ってフレデリカさんは、屈託のない笑顔を向けくる。
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