フレデリカ
先日の女性騎士は意識を取り戻し、無事に回復しているとの知らせが来る──。
──のだと、思っていた。
──コンコン! ドアノッカーの音。
「はいどうぞ、開いてますよ?」
「ご、ごめんください……ここは、アンリ様のお宅でしょうか?」
「え? あ、はい、僕がアンリです」
入口に目を遣ると、若い女性が立っている。そんな知り合いは、いない筈だと思いたかったが、そうか、先日の……フレデリカとか言ったか。
「はじめまして王国騎士団名誉副団長・アンリ様、お初にお目にかかります!」
ビシッ、と最敬礼の姿勢をとり、声を張り上げる。
「王国騎士団第二師団第三小隊隊長フレデリカ=ヴァーミリオンと言います。先日は助けていただき、ありがとうございました! 気を失っていた為、お礼もままならず、申し訳ありませんでした!!」
「ああ、いいからいいから、僕は騎士団をずいぶん前に引退した身。今はしがない冒険者さ。そんな
「はっ!」
「……はぁ」
僕は少し遅めの朝食の準備をしていたので、同席を促してみる。
「まだ腕が本調子ではないので、有り合わせのものだが朝飯でも一緒にどうだ? 最近の騎士団の話でも少し聞かせてくれないだろうか」
「いっ!? いえ、そそそ、そんな厚かましいことは──」
──ぐううぅぅ……フレデリカの腹が鳴る。
「ははは、お腹は正直だな。すぐに出来るから座って待っていてくれ」
「き、き、恐縮であります!!」
フレデリカはそう言うと、ギクシャクとしながら部屋に入り、キョドキョドと部屋を見回し、席についた。
僕はもう一枚皿を取り出すと、オーブンにパンと厚切りのベーコンを入れた。
先に焼いておいたパンを取り出し、たっぷりのバターを塗ると、カリッと焦げ目のついたベーコンを乗せて、火にかけておいたチーズをドロッとかけ流した。
コトッ。
「サラダとコレだけだ、遠慮なく食べてくれ?」
うつむいて恥ずかしそうにしている彼女の顔を、覗き込むように言った。
「はっ、はい!」
うん、さすが騎士団、良い返事だね。さて、僕の方もそろそろ……?
「あ、待たなくて良いから、先に食べておいて? 熱々が美味しいんだから!」
「へ? いや、そんなわけには……」
──ぐううぅぅ……フレデリカの腹が再び鳴る。
「ほらほら、お腹は正直だぞ?」
「ひいっ!? す、すみません!」
とか言っている間に自分の分も用意出来た。
「じゃあ、一緒に食べようか!」
「はい、いただきます♪」
カリッ……彼女がパンにかじりつく。動きが止まった。
「おいひい……」
「はははは、そりゃ良かった。まだあるから、たくさんお食べ?」
「アンリ様、これ、めちゃくちゃ美味しいです!」
目をキラキラ輝かせてパンを頬張る彼女をみていると、少し目頭が熱くなる。
そうだ、在りし日のアリシアの事を思い出していた。
「アンリ?」
──!?
しまった! 完全に失念していた!! ミルクを出したままだった!!
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